152 Side.シメール 6
「と、止めなくていいんですか…? シメール殿…」
目の前で展開される修羅場に、引き気味のレイアちゃん。
そういえばレイアちゃんは見るの初めてだったねぇ…。
「問題無いよ~、毎度の事だし~」
「……そ、そうですか…」
あの二人はどうしようもないほどに反りが合わないからねぇ…。
アグニルは造物主様を信奉している…。
それに対してチルブリアは造物主様に心酔している…。
アグニルは造物主様絶対主義であり…、チルブリアは造物主様至上主義なのだ…。
お互いに造物主様を第一とするところは変わらないが、それに伴う行動は異なるものだ…。
アグニルは造物主様の命令を絶対とし、その通りに行動する…。
一方チルブリアは造物主様を唯一の存在と定め、それ以外の有象無象を認めていない…。
666の眷属達は造物主様の手足であり同胞であると認めているためあのような態度ではあるけれど…、そうでない者は視界に入れることすら拒絶する有り様だ…。
あの時はやってきた使者を一瞥した途端に氷漬けにし、造物主様の命令も聞かずに即座に粉々に砕いた…。
その後のチルブリアの台詞は───
「主様と言葉を交えるなど…、驕るにもほどがあります…。 主様、会話の必要等ありません……、主様に黙して従うことこそが彼ら下々の輩に許された唯一の権利…。 それ以外のことを彼らにお許しになる必要はありません。 あぁ…、安心してください…。 此度の不埒者は私が直接裁きを下します故に…、主様が動かれる必要はありません…」
あの時は造物主様が言い含めることで何とか留められたが…、そうでなければあの大陸は凍土になっていたかもしれないねぇ…。
「シ、シメール殿……」
「な~に~?」
「何やら険悪な空気が…」
「………ん?」
二人の方を見遣れば…、巨大な氷像を多数展開しているチルブリアと、千の炎拳を構えているアグニルが目に入った…。
「………」
「ど、どうすれば…」
「………もうどうにでもな~れ♪」
「えぇー!?」