143 始まりへと続く道程
1回目は燃やされて死んだ。
2回目も燃やされて死んだ。
3回目も4回目も5回目も6回目も燃やされて死んだ。
7回目は矢に射られて死んだ。
8回目と9回目も矢に射られて死んだ。
10回目は獣に喰われて死んだ。
11回目は精霊に切り刻まれて死んだ。
12回目は食い物を見つけられずに飢えて死んだ。
13回目は獣の群れに爪で嬲られて死んだ。
15回目は滑落して死んだ。
20回目は海竜に喰われて死んだ。
25回目は過労で死んだ。
30回目は森の主に喰われて死んだ。
35回目は疲労していた時に足を滑らせて頭を打って死んだ。
38回目は闇に呑まれて死んだ。
40回目も闇に呑まれて死んだ。
50回目も100回目も500回目も1000回目も2000回目も5000回目も10000回目も闇に呑まれて死んだ。
10万回1億回100兆回1000京回………。
人が知る数字を超越する回数死んだ。
死ぬまでにも様々なことを経験した。
両親を殺した。
友人を死なせた。
親友を殺された。
師匠が代わりに死んだ。
同族を滅ぼした。
国を救えなかった。
そして…、好いた人を助けられなかった…。
数え切れぬ経験と死は、もう一つの人格を生み出すのには十分だった。
理性の私、感情の俺。
感情に流されない私と、理性に囚われない俺…。
今までの道程を寸分違わず繰り返す私と、身に降りかかるストレスを集約して発散する俺…。
互いが存在したからここまでこれた。
互いが存在したからここまでやれた。
終わりへと至る道筋は見えないまま…。
終わりへ至ると信じる道を歩くのみ…。
私は…、俺は…。
課せられた役目を全うする…。