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141 44回目




───……この力も漸く理解できた……。


「もうすぐね…」


───……練度と強度も問題は無い……。


「また動いたのかい?」


───……今度こそ次へ進まなくてはならない……。


「えぇ…、蹴る回数も増えてきたわ…」


───……もうこれ以上…、父上と母上の死を見るのはごめんだ……。


「僕にも聞かせておくれ…」


───……だが…、父上と母上が死ぬことが(さだ)められたことだというなら……。


「いいわよ」


───……私は繰り返すたびに…、父上と母上を死なせなければならない……。


「…あ、蹴ったね…」


───……今回で38度目だったか……。


「早く抱いてあげたいわ…」


───…私はこれから…、どれだけ父上と母上を死なせなければならないのだろう……。


「楽しみだね…」


───…私はこれから…、どれだけ繰り返すのだろう……。




   ※ ※ ※




───…既に見慣れた母上の首が飛ぶ光景…。


───…こうして今回も…、母上を見殺しにする…。


───…重力を支配し…、未だに動くこともままならない我が身をゆっくりと大地に下ろす…。


───…追跡者達が一瞬驚く気配を感じるが…、即座に私に対して矢を射かけてくる…。


───…流石は村の精鋭と言うべきか…、対応が速く迷いが無い…。


───…飛来してきた矢を斥力で防ぎ…、彼らの死角から水素で精製した極小の針を飛ばす…。


───…彼らの脳幹にそれらを突き立て、内部で水素を炸裂させて脳幹を破壊すれば…、脱力するかのように彼らが倒れ伏し、絶命する……。


───…一先ずは落ち着けるだろうか…。


───…ここまでは以前のまま…、周囲に潜む敵意や悪意のある存在も無し…。


───…とりあえず近くにいる精霊を呼び寄せ、私を運ばせよう…。


───…今はまだ、それほど長く力を行使することはできない…。


───…未だ赤子の身では体力も無いに等しい…、代替手段で何とかなるならば力を節約しなくては……。


───………そしてやはり…、一番近くにいるのは風の精霊王(シルヴァ)か……。


───…この周辺で遭遇した精霊は、シルヴァを除いて確認できていない…。


───…やはりあの村の周辺は何か特別なのだろうか……。


───……まぁ考察は安全を確保できてからでいいだろう……、今はシルヴァを呼ばなくては……。




   ※ ※ ※




───…この大森林に来てから…、つまりは村から逃げ出してから十年が経った…。


───…以前もこの時までは…、こうして大森林で力の鍛錬をしながら生活していた…。


───…ここは海や山も近く…、様々な動植物や精霊が存在し、とても過ごしやすい…。


───……とは言っても…、それは以前までの経験でそう思えるだけの話……。


───…ここに着いてすぐに大森林の主を調伏し、この森での安全を確保した……。


───…以前よりも前はこの森に逃げ込んできただけで、一切の関わりを持とうとはしなかった…。


───…そのため主からの刺客や就寝中の襲撃等、心休まる時が無かった…。


───…疲労からくる気の弛みや、物量による息切れ…、過労で何度も死んだ…。


───…一回ストレスで死んだのには、思わず母上の腹の中で笑ったものだ……。


───…そのためまず最初に主を調伏し、従えた眷属に周囲を守らせることにした……。


───…それが出来るだけの力を身に着けたのも前回からだが…。


───…以前は人を探して彷徨って…、集落にすら辿り着けずに精神的疲労で病に罹り、そのまま死んでしまった……。


───………思えば死因に毒や病気が多い気がする……、呪いはそもそも使う者に遭遇していないから判らない…。


───…闇雲に探してもどうしようも無いのは前回で理解した…、故に今回は力の鍛錬を続けることにしよう…。


───…とりあえずもっと多数の眷属を作り、森の外を探らせよう…。


───…今使えるのが支配の力だけである以上…、手足のように動かせる眷属が多数必要だ…。


───……もっと力を鍛錬すれば…、他の使い方もできるようになるだろうか……。




   ※ ※ ※




───…あれから更にどれだけ過ぎただろうか…。


───…1000年までは数えてたから…、一応まだ1万年までは行っていない…はず…。


───…森と山、それから海底に拠点を作り、それぞれを行き来しながら力の鍛錬に明け暮れた…。


───…この大陸の地形も大体把握できたし…、人のいる場所も把握できた…。


───…まぁ町や村には一切行っていないのだが……。


───…森と山と海で十分に生活するには事足りるし…、自身の強さがどれほどかも分からない以上、危険は少ないに越したことはない…。


───…嘗て暮らしていた村の精鋭達よりは、身体的にも技術的にも強くなれたはずだ…。


───…だがあの精鋭達よりも、他の村や町の者達が劣っている保証はない…。


───…どうするべきか……。


───………ん?


───…何だ…? 外の眷属達が次々と消えていく…!?


───…死ぬのではなく消える…、どういうことだ…!?


───……!? 空が…崩壊していく……!


───…森も…!


───……堰き止める……!


───…ぐぅ……、遅延にすらなっていない……!


───…ダメだ…、これ以上は……!


───…私自身だけでも……!




   ※ ※ ※




───…世界が崩壊してからどれだけ過ぎたのか…。


───…既に周囲は暗黒の空間…。


───…自身の身を護る為に力を籠め続け…、食事や睡眠、呼吸を魔力で代替し…、過ぎ去った時間を数える余裕も無い……。


───…一体何が起こったんだ……。


───……何だ…、闇が光っている…?


───…あれは…、一体…。


───…! こっちに来───





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