140 13回目
───…またここからか……。
「もうすぐかしら…」
「また動いたのかい?」
「えぇ…、蹴る回数も増えてきたわ…」
───…自覚してから今回で7度目の生誕か……。
「僕にも聞かせておくれ…」
「いいわよ」
───…とりあえず動いておかないと…、な…。
「…あ、蹴ったね…」
「早く抱いてあげたいわ…」
「楽しみだね…」
───…今度こそ…、父上と母上を…、助けなくては…。
「ところであなた…、名前は決まったかしら…?」
「あぁ…、女の子ならアリス、男の子ならクレスにしようと思うんだ…」
「じゃあこの子はクレスね…」
「…? 何故そう思うんだい?」
「なんとなくかしら…、この子は男の子な気がするのよ…」
───…やはり前回よりも母上への影響が強くなっている…。
「ふふ…、なら僕も期待しようかな」
「早く生まれてきてちょうだい…、私たちの可愛い赤ちゃん…」
───…今度こそ…、生き延びなければ…。
※ ※ ※
「見つかったか!?」
「いや…、見当たらない…」
「遠くへは行けるはずもない…、赤ん坊を連れているのだからな…」
「草の根を分けても探し出し、必ず殺すのだ!!」
「あの黒髪の忌み子と、それを産み落とした邪悪な母体…、何としても探し出して殺せ!!!」
※ ※ ※
「は……は……は……!」
───…母上は何とか私を逃がそうとしている……。
───…未だ喋ることすらできない身では…、激励も感謝も…伝えることさえ叶わない……。
「はぁ……はぁ……はぁ……!」
───…赤子のままで逃げるには…、力の練度と強度が足りていない……。
───…既に父上は殺されてしまった…、母上だけでも助けなくては……。
───…! 母上の背後から何かが…!
「あぐぅ!」
───母上!!
「ぐっ…、はぁ…はぁ…」
───…恐らく母上の肩か背中に矢が突き刺さったのだろう…、僅かだが血の匂いがする……。
───…痛む身体を耐え…、母上は私を抱えたまま走り出す……。
───…せめてこの力の全容を把握できれば…、対処する方策も思いつくものを…!
「大丈夫だから…、クレスちゃん…」
───…母上…。
「絶対に助けるから…、絶対に助けるからね…」
───………。
───…何としても力を把握する必要がある……。
───…赤子のままこの繰り返しから脱するには…、力の全てを把握し、行使できるようにならなければならない……。
───…何の意図があって私の生を繰り返させているのかも…、何れは知らねばならない……。
───…だが今は……!また飛来物…、母上!!
「あっ───」
───………母上の頭部が…、首から千切れ飛ぶ……。
───…千切れた頭部が地面に転がり…、頭部を失った首からは真紅の噴水が溢れ出す……。
───……またなのか……。
───…また最初から……。
───…私は何度…、この惨劇を目撃すればいい……。
───…私は何時……、次に進める……。
───……今度は私に、か…。
───…私は一体…、後何度……。