137 Side.アグニル 6
「♪~~♪~♪~~~」
やはりお風呂が無ければな…。
最近はドタバタしてたし…、久々にゆっくりできそうだ…。
「♪~~…おや?」
扉の向こうから気配を感じる…。
その扉が開けた者は…。
「……」
「グーロ…、どうしたんだ?」
「……ゆっくり休めって…」
「そういえばグーロが世界間移動をしたのは初めてだったな…」
グーロは今まで、この世界から出たことが無かった…。
今まではグーロが出るまでもない案件ばかりであり…、今回のように世界全体に対象が拡散していることの方が稀だ…。
元々が欠片であるが故に、それ以上分散すれば修正力で消滅してしまうことが殆どだ…。
まぁ今回は分散しても消滅するものではなく…、放置していれば他の世界にも拡散していただろうから、その前に対処できたのは僥倖というほかない…。
「まぁ何か異常が起きてもおかしくはない、ゆっくり休むといい」
「……ん…」
小さく返事をしたグーロは、数ある鏡台の一つの前に座り、身体を洗い始める…。
相変わらず無口というか…、会話が続かない…。
思えばグーロとはあまり話をしたことが無いな…。
自身の力に振り回され…、我が主によって己を律する力量を得るに至った…。
似通った境遇同士ではあるが…、この時まで対話をしたことなど両手で足りる程度でしかない…。
他の誰かと会話の輪にいることはあれど…、お互いに向かい合っての話し合いなど…。
フィロンのように共に任務に携わるわけでもない以上、仕方のないこととも言えるが…。
常に側に侍るか、我が主の代わりに任務を果たすかの違いとでも言うべきなのか…。
私自身、用もなく我が主に拝謁することも無いし、グーロも基本的に我が主の側を離れることは無い…。
だがまぁ…、お互い会話は無くとも…、お互いの覚悟は理解しているつもりだ…。
私は我が主の目的を完遂させるために…。
グーロは我が主の願いを成就させるために…。