129 Side.ディサイエン帝国初代皇帝 4
「………」
部屋に入ってまず最初に感じたものは…、気を抜けば押し潰されてしまいそうな気配だった……。
私の全身を床へ押し付けようとするかのような…、とてつもない重圧……。
それを何とか堪え、部屋の中へと歩を進める……。
何とか上げた視界の中に入ってきたのは…、途方もない力の気配を放つ存在……。
玉座らしきものの左右に控える金と銀の少女…。
玉座の前で座って此方を見遣る猫目の少女…。
何よりも強大な気配を持つのは…、玉座に座る大男の膝に座る紫の少女…。
私を案内してきた少女も並々ならぬ力を持っているようだったが…、ここにいる者達はそれを軽く凌駕する者達ばかり……。
だが何よりも恐ろしいのは…、それらの者達を従えながらも…まるで気配が感じ取れない玉座の大男だ……。
恐らくあの大男が彼女らの主様なのだろう…。
猫目の少女は警戒している気配を隠そうともしておらず…、左右の金と銀の少女も私から視線を外そうとしない……。
紫の少女は此方を気にもしていないが…、大男に何かしようとすれば真っ先に反応するだろう……。
彼らはいつからここにいるのだろうか…。
これほどの力を持つ者達が、何故今まで誰にも知られていないのか……。
以前帝都で聞いた考古学者達の言葉では…、過去に何度も文明が崩壊し、そしていつの間にかまた文明が興っているという……。
どのように人類が復興したのか…、どのように文明が崩壊したのか…、詳細は然程伝わっていないという……。
だが彼らの介入があったというならば納得もできる……。
唯一判明している前文明が滅んだ原因は…、人類同士の世界大戦による自滅だという…。
嘗ての記録を見る限りでも…、とても自力で復興ができるほど文明が形を残していたとは思えない…。
そもそも…、あのような記録が残っていることすらおかしいほどの事態だったらしいのだ……。
人類文明の裏で…、恐らくずっと暗躍を続けているであろう者達が…、彼らなのだとしたら……。
私がとるべき行動は……。
「……お初にお目にかかります……」
私は膝を付き、頭を垂れ、目の前の者達に言葉を紡ぐ……。
「私はディサイエン帝国初代皇帝……ネロ・クラウディアと申します……」
私は彼らに対して…、慈悲を乞う以外に道は無いと悟った……。