127 Side.ディサイエン帝国初代皇帝 2
「近くで見ると…、よりでかいな……」
そう言いつつ大樹を見上げる…。
海岸からでも枝葉に遮られて天辺は見えなかったが…、ここら辺はすっかり木陰の中だ…。
それでも日の光は届いているようで、木洩れ日があちこちに降り注いでいる…。
「そして問題のこれか…」
近づくにつれて見えてきた物は…、木の根元を覆うように建てられている要塞であった…。
大砲らしきものも所々から顔を覗かせており、私が知る限りでは要塞といえる代物であった。
風化している様子も無く…、壁の向こう側には人の気配も感じ取れる…。
間違いなく…、誰かがいるのだろう……。
「いかがいたしましょうか、陛下」
「……」
向こう側にいるであろう誰かに呼び掛けるか…、この扉を蹴破るか…。
後者は論外…、前者も言葉が通じるとは限らない…。
見知らぬ地で余計な波風を立てないためにも…、言葉が通じることを期待して呼び掛けてみるか…。
「スゥー…、ハァー……。 ……!」
声を上げようとしたその瞬間…、扉が音を立てながら開き始める……。
向こう側もこちらの存在を認識しているのは間違いないようだ……。
後は戦闘にならないことを祈るばかりだが…。
思案していると…、扉の向こうから従者の姿をした少女達が姿を見せた…。
背丈は皆低く、容姿もてんでバラバラだが…、服装は統一されていた…。
私が呆気に取られていると…、中央にいる他の従者とは少し異なる服装の少女が進み出てきた…。
「お待ちしておりました…。
ディサイエン帝国皇帝…、ネロ様…」
「!?」
私の名を…!?
「待て…」
「ですが陛下!」
「待てと言っている…!」
警戒態勢を取ろうとした後ろの者達を制する…。
言葉が通じ、此方の名を知っているならば話は早そうだ…。
疑念は尽きないが…、今この場で何をしても此方が不利になるだけ…。
「こちらから手を出さないように…」
「……解りました…」
後ろにいる者達も理解できたようだ…。
で、あるならば…。
「私のことを知っているならば話は早い…。 貴殿らの主と話がしたいのだが……」
「存じ上げております…。 我らの主様も、貴方様の到着を待ち望んでおりました…」
待ち望んでいた…?
私が来ることを知っていた…?
「どうぞこちらへ…。 我らの主様がおられる部屋へご案内いたします…」