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121 Side.亡国跡地
広大な範囲を覆うように聳え立つ…、堅牢な壁が在った…。
あらゆるものが死して塵となる世界において…、その壁はおよそ形を保っていた…。
崩れている部分も存在するが…、概ね原形を保った状態でその壁は在った…。
そして壁に囲まれたその中には…、嘗ては都市であったと思わせる廃墟が存在した…。
遍く構造物は崩壊し…、あたりに骨や塵が散乱し…、生者の気配が欠片も感じられない…。
そんな場所に…、影が三つ…。
蒼の影と黒の影…、そして金紅の影……。
三つの影は…、廃墟と化した中心地に円を描き始めた…。
周囲に他の人影は無く…、他の生命も存在しない以上…、三つの影が行っていることを知るものはいない…。
やがて完成した魔法陣と思しき円から…、光が溢れ出す…。
溢れ出すように出で始めた光は…、やがて強烈な閃光となって周囲を覆いつくす…。
やがて閃光が収まり…、その魔法陣の中心部には…、紫の小さな影が存在していた…。