119 Side.人類復興拠点
丘の上に聳え立つ…、崩れかけの壁…。
かつてそこに存在したであろう砦の姿は無く…、壁の中は瓦礫と砂が散らばるのみ…。
そのところどころが崩壊した壁の中の彼方此方で、作業をしている人が見える…。
木材を担いで運ぶ人…、板を木槌で打ち付けている人…、荷車を牽いている人…、様々な人が作業をしている…。
ここはとある亡国の城塞跡地…。
城塞を構成していたものは死に崩れ…、辺りは瓦礫と砂が転がるだけの死に絶えた土地だった…。
死の濁流が治まり生き延びた人々がこの地に集まるのも…、あるいは必然であったのだろうか…。
災厄が過ぎ去り、復興を目指す生き延びた者達…。
だが現実の何と理不尽なことか…。
濁流が過ぎ去った後…、世界にはかつて存在しなかった者達が出現し始めた…。
それは魔性…。
死の濁流が治まった後に滴り始める死の一滴…。
抗うことのできない死の洪水が過ぎ去った後にやってくるのは…、岩の隙間から滴り堕ちる死の雫…。
戦える者が殆ど死に絶え…、それでもなお滴り続ける死の雫…。
だが所詮は雫…。
力は強大なれどその数は圧倒的に少ない…。
故に人々は…、無駄と解りながらも身を寄せあって生活する…。
どうか魔性に見つかりませんように…、と……。