114 Side.ギルベルト 2
「これでとりあえずは問題無しかな…」
目の前に並ぶ10の箱の中を確認し、安堵する。
箱の中身は、ぎっしりと詰められた宝石の山だ。
蝙蝠型の使い魔達の助けもあり、不足分の宝石の採集は終わった。
これで暫くは大丈夫…のはず…。
ここで採れる宝石は、その全てが潤沢な魔力を内包している。
宝石の種類によって異なるが、それぞれが様々な魔動機械の燃料になる。
「これだけあれば、次の期日までは持つはず……といいなぁ……」
魔動機械の数が多いせいで、燃料となる宝石の消費は早い…。
それでも一般の品々に比べればとても長持ちだ。
一番稼動時間が短いものでも、燃料の宝石一つで1年は動いてくれる。
一番長いもので、燃料を入れ替えた記録すらないものがある…。
まぁここでは下界の常識を放り捨てたほうが賢明だ…。
ここに来た時から、僕が今迄下界で培ってきた常識は崩壊し続けている…。
初めて見るものや異なる世界…、異なる様式に異なる常識…。
ここでは何もかもが未知だった…。
あれから大分時が経過したおかげか…、今では大体の事には驚かなくなった。
昔は事ある毎に驚愕し、悲鳴を上げ、右往左往していたものだ…。
随分神経が図太くなったと、自分でも思う。
「それにしても、皆何処いったんだ…?」
辺りを見渡しても蝙蝠型の使い魔達が見当たらない…。
箱を並べ終えたあたりから姿が見えないけれど、何処へいったのやら……。
「ギルッチギルッチ~!」
あ、1匹だけ戻ってきた。
何やら慌てている…。
「他の皆はどうしたんだい?」
「侵入者ガ来タカラ戦闘チゥ~」
「………本当かい…?」
それは…、不味いな…。
自慢にもならないけれど僕は眷属達の中でも戦闘力が低い方だ…。
666の眷属達だけでなく、数多存在する眷属達の中でも最弱と言っていい…。
「これは急いで戻ったほうがよさそうかな…」
「急ゲ急ゲ~、ギルッチ虚弱ナンダカラ~」
「虚弱って程じゃないってば…」
精々貧弱程度だ…。
……自分で言ってて悲しくなってきた……。