10 Side.原初の覇王
これから就寝しようというところで、あの色ボケから思念が届く。
(蒼と灰色の世界の聖女を拾ったわぁ。 そっちに連れて帰るわねぇ。)
と、簡素な報告だった。
(よりにもよってあの頭の中桃色花畑が、眷属達の中で一番最初に関わるとは……)
我が眷属達が関わると、予知が利かなくなるなるのだが…。
まだ世界消滅の危機の原因である特異点の居場所も特定し終わっていないというのに…。
居場所が明確になる前に関わるというのも、余計な面倒を我が眷属達にかけるだけなんだがなぁ…。
『とは言え…、遅かれ早かれ…、か……』
「何が~?」
「どうしたのー、お兄様?」
「…あの色ボケが…、また…、何かした…?」
同じベッドで横になっている三人が、呟きを耳聡く拾う。
そして声色から察したのか、グーロが呆れたように言う。
『あの阿呆が…、とある世界の聖女を拾ったそうだ……』
「それって私達が知ってる世界~?」
「相変わらずトラブルを呼び込むねー」
「…はぁ……」
三者三様の反応を返す。
それとグーロよ、いい加減あの馬鹿の巻き込まれ体質には慣れておけ…。
この台詞も何度目であろうか…。
『場所は蒼と灰色の世界、聖女を生贄に捧げて、勇者を呼び込んだようだ……』
「あちゃ~……」
「いつものやつねー」
「…どこの世界の奴らも…、無知で愚鈍で身の程知らずの分際で…、支配者の手を煩わせるなんて…!」
「落ち着きなよ~、グーロ~。 気持ちは解るからさ~」
「一向に無くならないしねー」
とはいえ、だ。
今の所、他に急いで対処すべき案件もない。
あの世界の件を解決するまでに、他の懸案が介入必須段階になる予定もない。
ならば…。
『元々次の任務予定地だったのだ…。 多少前倒しになるが…、明日の朝より開始するぞ……』
「は~い!」
「はーい!」
「…わかった…。」
(そうと決まれば、今は三人を休ませる必要があるな…)
『さぁ…、もう寝ろ…。 明日からまた…、お前達に頑張ってもらわねばならんのだからな……』
「おやすみなさ~い…、造物主様~……」
「おやすみなさい、お兄様……」
「…おやすみ…、支配者……」
『ゆっくり休むといい……』
(さて、脳内ピンク娘の帰りを待つとするか……)
※用語解説:原初の覇王
クレスの他称。