108 サテュロス達の帰還
「漸く帰ってこれたーっ!!!」
転送装置から出てきて早々、大声を上げて喜びを露わにする存在が一つ…。
姿形は少女のそれであり、纏っているクロークはクレスの物と似通っている…。
彼の名はサテュロス…。
666の眷属達の一人である…。
「後が詰まってるんだからさっさと退け」
「あっ、ごめーん!」
そんなサテュロスに続き、転送装置から出てくる者が二人…。
サテュロスに言葉を投げつけたのは…、針山のように逆立った髪の毛をした若い男…。
「やれやれ…、随分と長旅になりましたな…」
そう言いつつ溜息を吐くのは、紳士然とした背筋がピンと伸びた初老の男性…。
「帰還予定から大分過ぎちゃってるねー…。
全くー…、二人とものんびりしすぎなんだよー」
サテュロスが初老の男性と髪が逆立った男に苦言を呈する…。
「おーまーえーがー…、寄り道したせいだろうがっ!!!」
髪が逆立った男……666の眷属達のアポロはサテュロスのこめかみに拳を押し当て…力を籠めて抉り込む…。
「ギャーーーーーーっ!!! 痛い痛い痛い痛い痛いーーーーー!!!! 痛いよアポローーーー!!!」
「お前があっちへフラフラ、そっちへフラフラ、色んな所で寄り道しまくったせいでここまで遅れたんだろうがっ!!」
「まぁまぁアポロ君、その辺で…」
サテュロスのこめかみをグリグリするアポロを諌めるように、初老の男性……同じく666の眷属達のカルロスは言う。
「そうは言うがなカール…、こいつが寄り道をせずにいれば予定通り帰ってこれたんだぜ?」
「サテュロス君を軌道修正しなかった時点で我々も同罪ですよ」
「……わーったよ…」
そう言って、こめかみに減り込ませていた拳を解くアポロ。
「お゛お゛お゛お゛ぉぉ……」
解放されたサテュロスはまだ痛みがあるのか、呻き声を上げながらこめかみを抑えて蹲る…。
「それに恐らく…、寄り道をして遅れることは我らが主の予想の範疇でしょう…。 問題ならば予め申し渡されているはずですしね…」
「まぁ…、それもそうか…」
渋々納得した風に怒気を収めるアポロ…。
「あ゛ーー…、痛かった…。
全くぅ…酷いじゃないかアポロー」
痛みが引いたのか…、立ち上がってアポロに詰め寄るサテュロス。
「お前の寄り道癖が無くなってくれれば酷いことしなくてすむんだがな…」
そう言いつつサテュロスの頭部を右手で掴むアポロ。
「あっ待って待って、アイアンクローは待って! それ洒落にならない奴だから!!僕の可愛い顔が潰れちゃうぅぅっ!!!」
掴まれたまま悲鳴を上げるサテュロス…。
内心このまま握り潰してやろうかと考えるアポロ…。
額に手を当て、天井を仰ぎ見ながら溜息を吐くカルロス…。
そしてそんな三人を部屋の隅で眺めるエクスタシス…。
「「………!!?」」
「………♥」
「早速帰還を我らが主に報告するとしましょうか…」
顔には出ていないが、僅かに焦りを感じさせるカルロス…。
「そ、そうだなっ!遅れちまったし、早めに行って謝罪もしないとなっ!!」
顔にも雰囲気にも焦っているのが丸わかりなアポロ…。
「久しぶりに主様に会えるー♥」
エクスタシスを気にした様子も無く、久しぶりの再会に嬉しそうな声を上げるサテュロス…。
三人は揃って部屋の外に出て、早足で謁見の間に向かうのだった…。
「サテュロスちゃんも帰ってきたしぃ…、久々にやろうかしら…♥」
三人に放置されたエクスタシスは…、平常運転だった…。