106 グーロの役目
『アリス達を向かわせた世界で、転移者の魂が転生するのを確認した…』
「!」
良かった…。
どうやら無事に終わったみたい…。
眷属の誰かが欠けるのは…、支配者の精神衛生上とても良くない…。
『さて、では行ってくる…』
「えっ?」
「……」
…そうか…、今回から始まるんだね…、支配者…。
「…大丈夫なのですか…、創造主様…」
リースが不安そうにしている…。
『漸く始めることができるんだ…リース…。
来るべき時の第一歩を…』
「!」
『漸く彼奴の欠片を手に入れる機会が訪れた…。
彼奴を隔離してから…、準備を整えるのに幾星霜…。
そして彼奴の欠片が現れるのを待つのに幾星霜…。
漸く…、漸くだ……、漸く始まりなんだ…』
表の支配者が珍しく感情を露わにしている…。
裏の自由人なら珍しくもないけど…。
「……解りました…。
気を付けてください…」
『…何時も不安にさせてすまない…、リース…』
「いえ…、正常に稼動している証拠ですから…」
嬉しそうに微笑むリース…。
こういう時は…、少しばかりリースが羨ましく思う…。
『それじゃあグーロ、留守は頼んだ…』
「…行ってらっしゃい…、自由人…」
自由人が空間に沈むように歩いて行き、この場から消えた…。
自由人が消えてすぐに、リースが訊ねてくる…。
「…グーロちゃん…、何かあるのですか…?」
「……支配者は…、そう思ってる…」
支配者が居ないこの時に何かが起こると…、支配者は予知している…。
支配者は…、予知した未来を他の誰かに話すことは無い…。
予知した未来が変化する可能性を秘めているからだ…。
…私に話すのは…、私が支配者が不在の間の…、代理だからだ…。
稀に支配者が不在になる時には…、私が代わりに判断を下すことになっている…。
「……多分そろそろ…、リースに報告が行くと思う…」
「えっ…?」
リースが呆けたような表情をすること数秒…、突如真剣な表情に変わり、何やら念話で会話し始める…。
「何事ですか? ………以前のとは別の…? …………そうですか……解りました…。
戦闘用機械人形達を、迷宮内部以外の全ての場所で守備に就かせなさい…。 ……えぇ、全てです…」
念話が終わったのか…、空を見ていた視線がこちらに向く…。
「この前来た転移者達とは別グループの転移者達が来たそうです…」
「……そう…」
支配者から聞いていた通りだ…。
「それで…、どうします?
創造主様がこの場にいない以上、判断はグーロ様が下した方が良いかと…」
「……以前と同じ…。
……特定の対象を除いて皆殺し……。
……既にその転移者達を…、元の世界に送り返す準備は出来ているって言ってたから…」
「解りました」
「……特定の対象は…、私達が直接相手をするから…、前のようにここまで誘導して…」
「迎え撃つ方々に伝えておきますね」
「……お願い…」
早速リースが部屋から退出し…、皆に伝えにいった…。
私はここで…、待てばいい…。
支配者と自由人が直接関われない事柄を対処するのが…、私の役目……。