104 Side.フィロン 5
「目的の二人組がいい感じに広い場所に移動したわ…」
目を細めながら、アリス姉さまが告げる…。
「じゃあ私と…」
「我の出番ですな…」
私に続きアグニルも声を上げ…、仕事に取り掛かる…。
まずは…。
「空間を…、断絶する…!」
声と共に…、剣で空を切る…。
彼奴らの周囲の空間を切断し…、この世界から隔離する…!
これで隔離した空間内で何が起ころうと…、この世界に影響は一切及ばない…!
後は…。
「アグニル!」
「分かっている…。 ……ん…!」
空間の境目に手を添え…、アグニルが力を籠める…。
私が切り離した空間の中を…、アグニルの蒼炎が満たす…。
空間内を文字通り原子一つ残らず焼き尽くし…、確実に仕留める…!
が…。
「……片方は燃え尽きたようだが…、もう片方は無傷のようだ…」
「!? アグニルの炎で燃えないっていうの…?」
それはありえない…。
アグニルの蒼炎は原初の炎に等しい…。
万物である限り燃やせぬものなど存在しない…。
対象がこの世に存在しない物でない限りは…!
(ご苦労だった…、アリス…アグニル…フィロン…)
「父上!?」
「!」
「我が主…!」
突然父上からの思念が届く…。
(どうしたのですか父上…? まだ対象が一人残って…)
(それは私がやる…)
(………え?)
今…、なんて……。
「やっぱり…、そういうことね…」
アリス姉さまが納得したように呟く…。
(任せていいのね?クレス…)
(我が主よ…!)
(大丈夫だよ…、アリス…。
アグニル…、君の力不足ではないよ…)
アリス姉さまとアグニルに、それぞれ思念を返している…。
(フィロン…、ここで私が行くのは元々の予定通りなんだよ…)
(!……分かりました…)
父上の予定通りならば…、私が口を挿むわけにはいかないわね…。
(お気をつけて…)
(あぁ…)
その思念の後に…、隔離した空間内に…父上が出現した…。