103 Side.転移者リク
「しっかしまぁ…、まさか魔王軍と戦争だなんてなぁ…」
「……」
「日本にいた頃は何処其処で戦争やってても他人事だったけど…、こっちに来て大分経ったせいかなぁ…。 特に感慨も浮かばないんだよねぇ…」
「……」
「戦争のせいなのか…、ギルドの依頼も魔王軍に関する物ばっかりだしなぁ…」
「……」
「魔王軍への斥候でよかったのか…ダイチ?」
「…まずは知る必要があるからね…。 知っていればどうすればいいかも判る…。 知らないままじゃあ…、魔王軍とどう接すればいいのかも分からないままだ…」
「人族全体の敵らしいけど…」
「邪魔するなら敵…、邪魔しないなら無視…、何時も通りだよ、俺は…」
「何時も通りだねぇ…」
こっちの世界に来てからも…、ダイチは特に変わらない…。
日本にいた頃も…、誰かと親しくしたり…、感情を露わにすることは殆ど無かった…。
こっちの世界に来てからは…、少し穏やかになった気がする…。
やはり煩わしい他人が減ったからだろうか…。
ダイチは何も言わないけれど…、他人と接する時…ほんの一瞬だけ眉を顰める…。
虫が集ってきたような表情と言うべきか…、兎に角僕以外には分からないぐらい一瞬だけ、嫌そうな表情を浮かべるのだ…。
ダイチは人嫌いだ…。
僕以外と接する時は…、家族であろうと不機嫌になる…。
ダイチとは物心がつく前から友達だったけれど…、少なくとも物心がついた時には他人と接するのが嫌そうだった…。
僕以外とは親しくせず…、学校でも僕が話しかけなければ教室の隅に独りでいる…。
そしてダイチは…、独りでいる事にさして違和感を感じていない…。
寧ろそれが当然であるかのように…、文字通り他人の存在を無いように扱う…。
何度か他人に反応することもあったけれど…、その度に人嫌いは加速していったように思う…。
こっちの世界に来て…、日本での煩わしい人間関係が解消されて伸び伸びとしている…。
僕は…、凄く安心した…。
今のダイチは凄く機嫌がいい…。
新たに出来た周囲との関係は…、皆が腫物を扱うかのように接してくる…。
過度な接触をしてこないから…、ダイチは尚更こっちの世界を気に入ってしまっている…。
僕自身も…、日本に未練が無いと言えば嘘になるけれど…、ダイチと一緒ならこっちの世界に居てもいいと思っている…。
「それじゃあまぁ…、向かうとしますか…」
「あぁ……」
意を決して歩き出そうとすると…、突然視界が黒くなった…。
「!?こ…、これは…」
「……」
閉じ込められた…!?
敵意も殺意も感じなかったのに…、一体何が……!
!?!
「があああああああっ!!!」
「……!」
突然全身を高熱が包み込む…。
や、焼かれている…!?
だ、駄目だ…、もう目も見えない…。
喉も焼かれて声も出ない…。
一体…、なに…が…。