100 Side.魔王軍四天王”影憑き"レイヴン
「………」
中々根性ある敵であった…。
足を穿たれ、全身を穿たれ、喉を穿たれても言葉を発することができるとは…。
同じ影の身…、埋葬してやるとしよう…。
地面を影で掘り起こし、影を用いて斥候の死体を穴に抛り、再び影を用いて埋める…。
簡易的だが、こちらも時間が無い故、許せ…。
…!!
どうやらこやつの仲間二人も仕留めたようだな…。
一先ず進軍を覚られていないと見るべきか…。
…いや、侮るな…。
察知されている可能性も考えて、静かに進軍しよう…。
各方面に散らせた影分身を通じて、斥候部隊全軍に伝える…。
(このまま敵に覚られないよう、引き続き隠密で行動するのだ…)
そう伝えると…、それぞれの影分身に了承の意が返ってくる…。
一先ず私も、このまま進むとしよう…。
こやつの向かっていた方角からして…、あちらが砦か…?
まぁ思い込むのは危険…、警戒しつつ進むとしよう…。
(それはいいですけど、こっちの要件を聞く余裕はあります?)
(!…テイルか…、何かあったのか?)
思考の隙間を参謀の念話が遮ってくる…。
魔王様と共に帝都城にいるはずだが…。
(あぁ、こちらは問題ありませんよ。
ただ、別件が入ったので隠密である貴方にお願いした方がいいかと思いまして…)
(何が視えたのだ…?)
テイルは遠視と透視が出来る…。
何か不安要素が視えたのか…?
(王国の方で何やら妙な二人組がいるそうなのですよ)
(それだけならば気にするほどの事でもないだろうが…、その二人組は何かあるのか?)
(…私の遠視と透視で探知できないんですよ…)
(!!)
馬鹿な…!
テイルの遠視と透視で、この大陸全土で見抜けぬ場所など無い…。
そのテイルが探知できないとなると…。
(解った…、我が探そう…。
それらしき二人組を見つけたら知らせればよいのだな?)
(えぇ…お願いします…。
不確定要素は出来るだけ排除したいですから…)
(それは我も同じだ…。
魔王様の悲願を成就させるためにも…)
(任せました…)
念話が切れたようだ…。
急ぎ部下達に知らせ、この場を任せねば…。
そして我は…、王国に単身乗り込むとしよう…。