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異常者  作者: 音無砂月
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第一章 異常者の微笑み

グロテスクな表現を使用しているので苦手な方、読んでいて気分が悪くなった方は無理をしないでください。

 殺すぞ!と云えば どうぞと微笑みぬ

  其の時フツと殺す気になりぬ

                 夢野久作




 高校に入り、私は自殺願望があることを隠すのを止めた。

 手に持っている愛読書はレクター博士やジェイソンなどの殺人系

 おかげで友達はゼロ。別に構わない。受け入れられるような趣味じゃないことぐらい分かっているから。

 クラスの子は私をこう呼んだ「異常者」

 結局何処に行っても此の名前で呼ばれる。いい加減、芸がないと思った矢先、私は三年生の女子に呼び出される。

 しかも、面倒だと思いながらもわざわざ付き合ってやったらお決まりの体育館裏。

 後輩虐めるのに体育館裏でないといけないというルールでもあるのだろうか。自分達を背正常とし、私を異常と差別する彼女達は本当に芸がないと私は思った。

 「おい、お前異常者なんだってな」

 どうやら私の噂を聞いて呼び出したらしい。だからって一年生相手にこんな五~六人で囲むかな。彼女達は随分と臆病者のようだ。

 「おい、此奴本持ってるぞ」

 本ぐらい誰でも持つだろうと私は心の中で突っ込んだ。

 「取り上げろよ」

 みんな似たような恰好とメイクをしているので見分けがつかないが、誰かがそう命じた。私の近くにいた女子が其の命令に従い私から本を取り上げた。

 「キモッ。何だよ此れ」

 私の愛読書を取り上げた先輩は其の表紙を見て笑った。本気で「キモッ」と思っているよりよく分からないが何か面白いようだ。

 「おい、何だよ其の眼はよぉ」

 今度は私の眼付が気に入らないといちゃもんを付けて来た。

 本当に王道しか行けない芸のない奴らだ。嗚呼、つまらない。

 普通の生徒なら此処はビクビク怯えるところなんだろうけど私には其処ら辺の感情が欠落しているので彼女達にはそんな感想ぐらいしか思い浮かばなかった。

 そんな私の態度が気に入らなかったのか今度は暴力を振るってきた。だけど、私は無反応だった。寧ろ此れ以上彼女達に付き合うのがかったるかった。

 「おい、何か言えよぉ」

 ボロボロになる私の体を彼女達は満足げに見ていた。

 同じじゃないか?殺人願望のある私と彼女達は同じ生き物じゃないか?

 だって人間の中には破壊衝動がある。こうやって人を見下して、一人の人間を寄って集って虐めて、其れを楽しんでいる。みんな同じだ。ただ隠しているだけで。自分は違うのだと、正常なのだと皮を被っているだけじゃないか。

 なんだ、みんな結局異常者なんだ。

 「おい、死んだか?」

 誰かが言った。

 「いや、まだ生きている」

 「どうせなら殺しちゃえよ」

 「あたしらテレビに出れるじゃん」

 「一躍有名人」

 「馬鹿か、お前」

 そんな冗談を言いながら彼女達は笑っていた。だから私も笑った。すると、彼女達は笑うのを止めて、土まみれで地面に転がっている私を見下ろした。

 「テメェ、何笑ってんだよ!」

 「てか、マジでキモイんですけど」

 「マジ、殺すぞ!」



 『殺すぞ!と云えば どうぞと微笑みぬ 其時フツと殺す気になりぬ』



 「ぎゃあ!」

 悲鳴を上げたのは時代遅れのガングロギャルだ。

 何で悲鳴を上げたかって?

 そんなの決まっている。私が趣味で隠し持っていたナイフで彼女の眼を刺したからだ。

 今まで己を強者と思い込んでいた彼女達を取り巻く空気が一瞬で凍り付いた。

 私からしたら何て単純な頭なんだろうと思う。人数が勝れば勝てるとでも?そんな単純な問題ではないのだ。

 「此奴、マジでヤバくねぇ」

 「おい、行こうぜ」

 背を向ける彼女達に私は心の中で思った。もう、遅いと。

 誰も逃がさない。私は逃げる彼女達の背にナイフを刺し、足を切り離した。

 皮膚を剥がした場所から筋肉が見えたので。私は其の筋肉を魚でも捌くかのようにナイフで斬りつけた。

 「綺麗」

 美しい鮮血は夕日と重なり、其の色を更に増徴させた。

 こうして殺人鬼が生まれた。

 此の時を境に様々な異常者と呼ばれる人間達の運命が激しく脈打ちだした。


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