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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

勇気のあり方

作者: アルミ3

生きるのに意味や理由なんて必要ありません。

理由なんて所詮は後付け、趣味のようなものです。

しかし意味や理由というのはいかなる場合であれ崇高なものです。

今日、おじ上が死んだ。


俺の心はこの降り荒ぶ雨嵐のように荒れていた。

木々がしなり、岩が転がる。

物は飛び交い、雷が鳴り響く。


まるで俺の心を映しているようだ。


それもこれも全て奴らが悪い。

そう、おじ上を殺した奴らだ。


おじ上はとても素晴らしい方だった。

聡明で皆から慕われる。

俺に一人遊びを教えてくれたのはおじ上だった。

俺に食べられる植物や、生きていく知識を与えてくれたのはおじ上だった。


いや、俺だけではない。

おじ上は面倒見のいい方だった。

近くの子供らをあやしているところを見たことがあるし、その子らに危険な虫や動物を教えてあげていた。

その行いを感謝されたことも一度や二度ではない。


皆に愛され、そして皆を愛していた。

そんなおじ上が自慢だった。


おじ上はいつも言っていた。


「私は皆んな愛しているし、お前のことも愛している。しかしお前と皆んなは違うんだよ。皆んなも大事だが、お前は特別さ。お前より大事な奴はいない。だから、命を大事にするんだよ。」


嬉しかった。

こんなにも愛されていることが、こんなにも思われていることが。


おじ上のためなら何でも出来たし、何処へでもいけた。

おじ上が褒めてくれるならどんな辛いことだって耐えられる。

おじ上が一番でおじ上が全て、だったんだ。


でもおじ上は死んだ。


その知らせが来た時、涙は出なかった。

おじ上は有名であったから、そういったイタズラもなくはなかった。

勿論、こんなイタズラ度を過ぎていて、むかっ腹が立つが、またそれかと思った。


しかし、血に濡れたおじ上を見てしまえば、そう思ってもいられない。

おじ上が道の真ん中で倒れている。


俺は思わず駆け寄った。

道を飛び出すことはおじ上から禁じられていたが、そんな事は関係ない。

急ぎおじ上の顔を覗き込む。

その顔はその生気を失っており、いくら呼びかけても決して目を開く事はなかった。


それでも呼びかける。

いくらでも呼びかける。

しかし目を開かない。


それもそうだろう。

体が半分潰れていたんだから。

もうすでに死んでいる。


それは分かっていた、分かっていたが、だからと言って認められるわけがない。

朝までは元気だったのに、それがこんな。


とっさに後ろから引かれた。

振り向くと、先ほどのおじ上の死を教えてくれた奴がいた。


「危ないから離れよう。」


危ないだと、そんな事言われなくても分かっている。

だがそれとこれとは話が違う。

こんな、バカなことが。

おじ上を置いて行くなんて。


「おじさんは子供を庇って死んだんだ。」


彼は突然そんな事を言う。

おじ上が子供を庇って死んだ?


「ああ、おじさんは道に飛び出した子供を押しのけて轢かれたんだ。君のおじさんはとても素晴らしい方だ。身を呈して子供を守る勇気ある方だ。」


そうだ、そうだろう。

おじ上はそういうお方だ。

自分の危険を顧みない勇気ある方だ。


そうか、おじ上はそんな事を。

そうか。


俺は腰を上げた。

それはココが道の真ん中で危険であるからではない。

それがおじ上の意思でもあるからだ。


おじ上は言った、命を大事にしろと。

だから俺は動くのだ。

たとえ、おじ上の体を置いていくことになろうとも、おじ上が命を大事にしろと言うのだから、おじ上に従うんだ。


「さあ、急いで離れるよ。」


俺は頷き、先を行く彼に追従する。

道を渡り終え、一度だけ振り返る。

相変わらずおじ上の体はそこにあり続ける。


俺はおじ上に誓う。

俺はおじ上に負けないぐらいの男になると。


皆に慕われ、皆を愛する。

そんな男になると。


その為にも皆を守れるだけの力をつけよう。

体も大きくなろう。

そして、皆んなを大事にしよう。


そしていずれ死ぬ時は、おじ上のように誰かを守る為に死のう。

この命は救いの為に使おう。


猫として生まれて二年。

たとえ明日死のうとも、誰かを守れるなら恐ろしくはない。


この体、この命、そして俺の未来の全てはみんなの為に使うんだ。


それが俺のおじ上に捧げる祈りなんだ。



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