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濡れた手で
優しく痛む毛を
濡れた手で掴むと
塩分が多くて
あたたかく白く傷つく
後で錆びても良いから
今は濡れていたいよ
赤い棘は僕の手に
君の腸と繋がってる
錆びても良いぜ
君と濡れてるから
さっき入れたやつは
夜を浴びて
どこに消えたんだろう
空気の継ぎ目で
濡れた手と繋ぐ
体温を移した庭で
植えた野菜の下
君は眠る
日に暖められた根菜の
葉と根と歯の温度差
ハタと手を添えれば
真っ白な表皮が
日常をめくり返す
濡れた手で掴んだ
濡れた髪を埋める
微細に飽和する肉塊
力を拒み、諦める
観念に衝動を嚙み殺す
上書く
柔らかな声と瞳
抜けないから
そのまま朝を迎えて
濡れた手は
冷え切ってしまった
#######↓ZONE-50℃#######
人間窮すれば貧すというか、ささくれだった心に浮かぶ言葉は人の本質を浮き彫りにするものです。




