小さな部屋
光射す
小さな部屋にて
ドーナツは
微熱をはらみ
四角に照る
テーブルの上
牛乳は
水平を保つ
タンパクに満ちる
室内は
静かに
変質して
もう一度
ドアを開けたら
全てが
崩れてしまう
その熟した
立方体を
ある面で
カットして
白く眩しい
縦の水面は
精密に
震えもせず
我しらず
溶けた砂糖は
ドーナツを滑る
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私はバナナと牛乳が苦手です。
それには明確な理由があり、どちらも第三保育所時代に、四年間無理やり食べさせられて、嫌いになりました。
脱脂粉乳と台湾バナナ。暖かい乳には膜が張り、生臭いそれも食べさせられました。そしてお昼寝前に切り、数時間経った台湾バナナの断面は茶色く、甘くもなく、これまた臭く……それを繰り返すうちに、すっかり嫌いになりました。
ところが最近、子どもが得意げに「父ちゃん牛乳飲めないんでしょ?」と言ってくるので「父ちゃんは嫌いなものでも飲めるぞ」と反射的に答え、おもむろに牛乳を飲んでみました。そうしたら……普通に飲めたのです。
その瞬間、スパッと四十年来のこだわりが斬られ、斬新な感覚に襲われました。目から鱗とでも申しましょうか?
そうなると今度は積年の懸案材料、ドーナツには牛乳が合う。という、牛乳嫌いでも試したくなるような魅力的な提案がムクムクと育ち、今度早速試そうと思っております。
この作品は、これから味わうであろうドーナツと牛乳の持つ、甘く乳臭い退廃感に満ちた私の頭の中を小さな部屋とし、斬新に切られた感覚を文字にしてみました。
子育てとは、こうした追体験、または気付きの連続であり、3周目の孫という存在は、2周目を見ている子を追体験する事なんですね。
それと少し離れますが、私は息子と娘のダブルチャンスがありますので、なんとか周回遅れの数学にリベンジすべく、算数から一緒に学びたいと、密かに企んでおります。




