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私は精霊ではありませんよ   作者: lassh-leyline
第一章   空から墜ちてきたものは・・・・
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第九話  本当に欲しいもの

自分が考えた平和なファンタジー世界での不幸なことをいくつか網羅。


「・・・いや・・・・・いや・・・いや、いや、いやいやいや!おいていかないで、もうどこにも行かないで、おねがい、ずっとずっと一緒にいて、おねがいよ、ママぁ!!ママ、ママ・・・」



第九話  本当に欲しいもの



 すがりつく妹を抱きしめて背中を撫でてくれてるななさんが困った顔をしながらこちらを見る・・・

 だいたいの事情を察した村長の機転でこの場は解散となった。

 それでも親しいひとたちは心配して付いていてくれています。迷惑かけてすいません。

 わたしもなだめて、ななさんから離そうとしたけど話を聞いてもくれません。

「もうよくなってたと思っていたが、ただななさんに依存していただけだったか。」

「わたしも、そう思ってました。餓狼に襲われても、ななさんが来てからは本当に落ち着いていたんです。」

 そう、あのときカレンさんが止めてなかったら、そしてななさんが居なかったら、わたしもシンディもお母さんと同じ死に方をしていました。

 だからあのとき餓狼に消されたお母さんが、餓狼を消してななさんが現れたことでお母さんが帰ってきたと思ってしまったのかもしれない。

「今まで、お母さんのことを忘れることで悲しさを忘れていたんです。カレンさんにもずっと心配してもらって。」

「いやそれに関してはお互い様だし。あたしもあの頃は精神的におかしくなってた頃だったから。おかげで、生きる気力を取り戻せた。」

「まあこのことに関してはもうしばらく猶予は持てると思う。」

 え?ハンスさんどういうこと?

「ん?何の話だ?」

「今回の留学予定先は『開門都市』東都。そして、ななの最初の拠点候補地だ。前に俺の住んでいた街で情報も知識も集まってくるところだ。」

「それじゃあ、シンディとななさんは一緒に居られるんだね?!」

「ずっとってわけじゃないがな。」

 ぐずるシンディに教えてやる。

「わたしのじゃくてんもきっちりおさえてるのね。」

「あなたは目を離すとすぐ逃げ出しそうですからね。」

 みなからの励ましといたわりの中、ハンスさんがカレンさんに話しかけた。

「カレンにも行ってもらうよ。労働力の補充と特殊技能保持者の確保が仕事だ。」

「仕方ないねえ。まあ何人か連れて行くけどいいかい?」

「護衛役もかねてならかまわないよ。それからカレン。」

「まだなんかあんの?」

「おれと結婚しろ。」




 ハンスさんが宙を飛んでいます。

 わたしとななさんの目の前に墜ちてきたハンスさんをカレンさんが蹴飛ばしました。

 こんなに怒ってるカレンさんを見るのは初めてだ。いったい何したんだハンスさん?

「昔から我が儘なのは知っていた。女と思えばすぐに声をかけるのも隙あらば手を出すのもあたしがとやかく言うことじゃない。でもね、帰ってきてからはまじめに村のために働いているし、村の子にも手を出していない。だからたまってるのもわかる、さすがに誰かをあてがうわけには行かないから、ちゃんとした連れ合いができるまで、あたしでよければ好きに使わしてやっても良いぐらいにも思っていたさ。なのに結婚だあぁ!妾や愛人ならともかく、生きた子供の産めないあたしに、また死んだ子を産めって言ってるの?息をしてない我が子を抱けっていうの?唯々大きくなっていくおなかを見ながら思い描いていたものが幻になってきえていくの。何でわたしだけがって、一緒に連れて行ってって何度祈ったか。」

 座り込んで号泣しだしたカレンさん。その横によろけながら寄り添うハンスさん。

 そして、本気のげんこつが繰り出された。




 目の前を火花が飛び散った。痛みとめまいで意識が飛びかかる。

「おー痛て、久しぶりのカレンの右は効くぜ。」

 あ、ハンスとケンカしてたんだ。

「いつまで悲劇のヒロイン気取ってやがる。」

「悪かったですわ、ね。」

 立ち上がりと同時の肘鉄が決まった。

 あれ、みんながあたしを見る目が生暖かい? 

 うずくまったハンスを見て状況を思い出した。

 また頭に血が上ってきた、こんどは・・・・

 プロポーズ?え、よりによってあたし?


 


「あー、カレンとりあえず、わしの話も聞いてくれんかの。」

 まっ赤になってるカレンさんと床で痙攣しているハンスさん。

「こいつは昔っからお前に惚れとっての。街から帰ってきたら正式に話を持って行く予定になっとたんじゃ。」

「でも・・・」

「へたれが本命に話ができないくせに、他の娘に迫られていつもどうにかしてくれって泣きついてきてなあ。」

 あ、お父さん居たんだ。

「で、お前さんが向こうで結婚してからは諦めて出稼ぎ先の街の娘を娶ったんじゃが、一昨年に流行病で子供と一緒に無くしてしもうたんじゃ。」

「でもあたしは・・・」

「ななさんや、例の結果は出ておるんじゃろ?」

「カレンさんのからだにいじょうはみうけられませんでした。にくたいてきには、じつねんれいより5ねんから10ねんはわかいじょうたいです。ハンスさんはとしそうおうです。せいしょくりょくはどちらもせいじょうですので、つうじょうのせいこうでじゅうぶんにんしんができます。」

「じゃあじゃあ・・」

「カレンさんのふにんやしざんは、おもにあいてがたにげんいんがあるとおもわれます。」

 話の途中から気絶したハンスさんを抱き上げたカレンさんは引きずりながらべつの部屋にと消えていきました。

 変な笑顔の大人たちに見送られて・・・。

「なおげっけいしゅうきから、さくじつから3かかんがにんしんにさいてきとおもわれます。」

カレンさんはこのあと一年半村から出してもらえませんでしたとさ。

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