第四話 村の人
第四話 村の人
「もうちょっとつめないとずれちゃうよ。」
「ええー、それあたしの10歳の時の服だよ-。どれだけ細いのよ。」
「胸もあるし、腰回りもしっかりしてるし、本当にお姫様みたい」
「ああ、こっちもお願い。あんたはもうちょっと肉をつけなさい。そろそろお年頃なんだから。」
「あたしはまだ先よ。それよりジルはそろそろじゃないの。彼、今回は帰ってくるんでしょ。」
「だ、誰のこと言ってるのよ!あたしとリックはそんなんじゃないんだからぁ!」
「やれやれ、うちのヘタレ兄はなにやってるんだか・・・。ちょうどいいから、あなたも着飾って迫ってみたら?」
「いっそみんな自分用の服を用意して好きな子にアタックしてみたら?」
カレンさんの一言で空気が変わった。
「ええと、この服ってリステアさんが隣村の村長に見初められたときの服よね?」
当時、隣村の守り役であった現村長とのロマンスは近隣では有名だった。
「あー!それ狙ってたのに-。」「早いモノ順よ、みんなも負けるな。」
煽るカレンに嬌声を上げる少女たち+元小・・・・女性たち。
壁際まで下がったカレンと訳もわからず蚊帳の外にされたななが並んでみていた。
ななの頭を撫でながら、カレンさんがぽつりとこぼした。
「幸せな時は大切にしなくちゃ駄目よ。」
結局、ななの服はカレンさんのお古の中からおとなしめのワンピースに落ち着いた。
他にも普段着ももらい、嬉そうに帰って行くななを野良仕事から帰ってく婦人たちが珍しそうに眺めていた。
「いいのかい?あんたが街に留学するときに買ってもらったやつだろう、あれ。」
「そろそろ処分しようと思ってたし、ついでに着てない服も沢山あっからちょうどよかったんだよ。」
わたしの服は相変わらず誰も手を出さずに余ってたし・・・
「踏ん切りがついたんならいいんだけどね、あんたもまだ若いんだし。」
あ、駄目だ・・・
そっと抱きしめて、ふるえる頭を撫でてくれるマールおばさんの手が温かかった。
「;*・わたぃわ、**+;:;なな*:いいまう、たべしまった。みんなのおかぎでここにいれまう。わたぃのでくることあれあてさせてくださぇ。」
ファッションショーのあと何とか自己紹介を終えたななさん。まああかわいいからいいか。
あのあとななさんが持ってきた裁縫道具やリボンなどの装飾が大好評になって作り方を教えてもらいました。
見たことのない裁縫道具とかはカレンさんが見取り図を作って街の鍛冶屋さんに注文してくれるそうです。
その後の宴は秋の収穫祭に負けないくらい賑やかでした。
出稼ぎに行っていたお父さんたちも家族のために買ってきたお土産を供出してくれて、少しだったけど有名なお菓子や果物も食べられました。
もしあのときななさんが来てくれなかったら、と思うと今でも震えが来ちゃいます。
数日後に、村の雑用をしていたわたしとななさんの元に街で鍛冶屋の弟子をしているリックと大商家の番頭見習いになったばかりのカイルがやってきた。
「あー、あのちょっといいかな?」
「はい?」
「ちょっと聞きたいことがあるんだけど、これってあんたが作ったのか、それともどっかで売ってるのか?」
カレンさんのメモを示して早口でまくし立てるリックさん。ななさんの方は聞き取りきれずにとまどってますよ。
「おいリック落ち着け、彼女怯えちゃってるだろ。」
今にも掴みかからんばかりのリックさんを引きはがしてカイルさんが進み出る。
「改めまして、オウルカ商会で雑務をやらせてもらっております、カイルと申します。」
さらに意味がわからずに不安そうにこっちを見てくるななさん。カレンさんが喜びそうな顔です。
「オウルカってお店で働いてる、カイルだよ。」
「おみせ、なに?」そういえば村にお店はありません。
「物をお金と交換してそのお金でほしい物と交換するところだよ。」
「::;、わかる。;;***ほしいなに?」
「商談に応じてくれるってことでいいのかな?」
話が長くなりそうなので先に雑用を終わらせました。
もちろん二人にも手伝ってもらいましたよ。助かった-。