第六話 希望《絶望からの贈り物》
第六話 希望
塔に入ろうと入り口を探す。今まで使っていた亀裂部分は綺麗に塞がれており、外見は綺麗に治されている。
改めてその美しさに目を見張る。白銀の水滴、天かける可視の風。
なんとか入り口らしいところを見つけ中に入る。
光源の解らない薄明かりの中魔力感知を頼りにこの船の核----ナオを探す。
以前のような眩しくないのに強い光が無くなっており、触らずとも開いていた扉は行く手を阻みこの中で唯一の魔力源を覆い隠す。
ナオからはそれとなくはぐらかされていた、扉の開け方や隠し通路、がれきの部屋は殆ど把握しているが、設置している機械類はまだ確認すらしていない。
殆どが動いてない。いや塔自体が眠っているようである。或いは行く手を妨害しているのでは無く扉として機能していないだけかもしれない。
最後の扉、入力装置とか言う機械-----特定の組み合わせで開くようになっているらしいが知っている組み合わせはどれも合わなかった。
「すまない、ナオここを開けてくれんか?」
塔に入る前から気付いておろうし、聞こえているはず。
しばらくして扉が開く。
部屋の中は真っ暗で所々にぽつぽつと色とりどりの光が瞬いている。
沈黙が重くのしかかる。
『・・・・何をしにいらしたの?・・・』
壁の中央に大きな円柱がうめこまれ、魔力はそこから漏れてきている。
確かに魔力は大きいようだが、制御された物では無い。機械により魔力を魔法に返還するなら本人は制御の技能はいらないな。
円柱のそばまで近づき、百数十年ぶりに味わうこの感覚を改めて噛みしめる。心からのプロポーズ。
なめらかな曲面を撫でながら、我ながら後から想えば炎を吐くほど恥ずかしかったが、必死に訴える。
「ナオ、儂はお前のそばにいたい。お前が何に怯え、何に戸惑い、何に悲しんでいるかは解ってはおらん。じゃが儂にも出来ることはあろう?何も出来ずに苦しんでいることすら解らずにいるのは儂がつらい。儂を頼って欲しい。何を求めておるのか儂にも教えて欲しい。儂はおぬしと一緒に語る時間が一番好きなんじゃ。そのためなら何でもしよう、いや儂はおまえが、ナオが欲しい。共に生き、たとえ死に別れようとその瞬間までともに語り合いたい。たとえ直接声が聞けなくても、触れ合えずともその存在を感じていたい。たとえ壁越しであってもここにいるんだって感じていたい。儂は人として主が好きなのじゃ。儂は主の横にいたいんじゃ。他の誰にも渡したくないんじゃ。儂のものになってくれ。儂の全てを捧げてもいい、いや儂の全てを捧げるから儂の連れ合いになってくれ!」
・・・・思いの丈をぶちまけた。
しばしの沈黙。
「・・・ナオ・・・」
「聞かせてもらいましたわ。・・・情熱的なお言葉ありがとうございます。」
壁越しに声が・・・怯えて震える弱々しい声。駄目なのか?やはり儂では・・・
スライドするように円柱の一部が開く。「む?」
そこには恐怖に怯えながらも必死にこちらをにらみつけている物があった。
「あなたは何に向かってさっきの言葉を語ったか解りましたか?こんな醜女相手に滑稽な話ですわ。こんな缶詰めの肉塊にそんな価値があるはずが無いでしょう。あなたにはあなたの居るべき場所があるんですよ。」
引き攣ったような顔をさらに引き攣らせて笑うナオ。いや、この反応は・・・
「さあ、もう気が済んだでしょう早くお帰りなさい。もうここは封じます。二度と開かないように。」
視線をそらさずにまっすぐナオを見つめる。
怯えるナオこの覆いをとるのがどれほどの恐怖なのだろう。
魔法的な融合では無く外科的手段で接続してあったのだな。
中途半端に肉体があったからその姿をさらすのをあんなに恐れているんだな。
すでに引き攣った笑いが苦痛の泣き顔になっている。
「本当は抱きしめたいところじゃがそんなことをすればその身に不具合が出るのじゃろう。せめてこれを受け取って欲しい。」
懐から太陽と月を形取ったペンダントを取り出す。儂の創った最高の守護の魔法が込められている。
「これは本来妻のシグラリーデの為に創った護符じゃったんじゃ。が、あいつの遺言での、新しく妻を娶って渡してくれと言われとった物じゃ。ナオの魔力に調整して状態異常にも対応できるよう改良してある。儂の全てがこもっておるといえる物じゃ。むろんナオの全てを受け止めるつもりじゃ。今更見た目や少し変わっておるところなぞ問題では無かろう。」
そっと手をさしのべると身を引き攣らせながらも身を委ねてくれた。
管や金具に触れないように首に掛る。
零れる物をぬぐってやりながら、そっと唇を重ねる。
そうあの人形の衣装に足らない物がもう一つあったのだ。
首の装備このペンダント用の部分。
結婚相手に永遠の繋がりを象徴する物。
勢いだけで書き上げたので誤字脱字等ありましたら報告お願いします。