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第七話 善悪なんて関係ない




_____________________火村邸玄関前




既に日も暮れ、辺りは闇に包まれていた。

空には星屑が散りばめられ、その全てが輝きを見せていた。

こんな夜に俺は玄関前に座っていた。夏の夜とは言え、少し肌寒い。

少しばかり待ち惚けをくらっていると集団の人影が見えた。


「全員でくるとか、俺は仲間はずれか?」


やれやれ、とオーバーなアクションをつけて先頭の賢人に問うた。

勿論、後ろには不動、祐太、小次郎がいる。(下の名前で呼んでみた)


「丁度、門の前で会ったのでな、一々別れる必要もあるまい。」


左手に日本刀を握り、切羽と鯉口をチャキッと打ち鳴らして俺を真っ直ぐに見た。

不動は何も持っていなかったが少し懐が膨らんでいた、なんなのかは分からないが、それなりに想像は出来た。

小次郎はそこらの刀とは一線を画す物を持っていた、まず、肉厚すぎる。

………俺のその奇異の視線に気付いたのか、小次郎が説明を始めた。


「刀身には高速振動する物を仕込めと新道に頼んだものが漸く完成したわけだ。喜べ新道、俺の目に適ったぞ。」


そう言って祐太を褒めた。コイツ相変わらずだな、今日の敗戦は気にしていないのか。

そう思ってると祐太が小次郎に切れてた。


「佐々木さん、説明足りていませんよ!僕の最高傑作を!しっかり説明よろおおおおおおっっ!!!」


「ぬ!新道!俺に掴みかかるとは!」


ぎゃーすかうるさいやつらめ、まぁいい、新道はこれからメカニックと呼ぼう。

とりあえずこいつらを放って行くことにする。


「賢人!不動!行くぞ!」


「火村さん!待って下さい!このカタナは最高技術の塊ですよ!超高速振動に加え、カタナから1mmの所まで超高圧力で圧縮された水が切れ味をあげ、尚且つ血を洗い流すという世紀の武器ですよ!」


「色んな意味で意味分からん。」


熱心に説明を続ける祐太を無視する、というか無視しないと駄目だと思う。


さて、観察再開だ。祐太は………おい、


説明してる時もちょっと気付いたが、


主装備はSVDのようだが、少し雰囲気というか、なんか違う。

銃には詳しくないが、既存のSVDとは違うようだ。

副装備も色々と駄目だった。

ハンドガンだったが、弾が違う。


グレネードをハンドガンで撃つ、そうゆう馬鹿な事を考えついた野郎の末路が腰のホルスターに入っていた。

新道曰く、なんかあったように普通のグレネードが三発、閃光グレネードが二発、一発は改造グレネードを持ってるそうだ、なんて恐ろしい。


…ん?俺か?俺は護身用の短刀一本だけだ。こいつらがおかしいんだ、そう銃や日本刀を持っていて溜まるか!


心のなかで祐太になんか作ってもらおうかな、なんて考えていると俺の右後ろに不動が立っていた、相変わらず巨体の割によく気配を隠す。


「…死鬼をどうやって見つける。」


ゴゴゴゴゴゴッッッ!!

みたいな擬音が似合いそうな言葉だった、というか少し切れてるな。おい、カルシウムとれよ。まぁ、口にしたらペシャンコになるから言わんが。

だが、確かに不動の疑問も確かだ、此処らで少しハッキリさせておくべきだな。


「俺の知り合いが死鬼の事を教えてくれた、そいつは死鬼の気配が俺の近くにいると言っていた。」


此処で一旦区切る、すると賢人が静かになり、祐太も空気を読んだ。

小次郎は祐太が銃を突き付けてた。


「奴らは生き物だ。だが、奴らは本能しか無い。理性があるなら、賢人に喰ってかかっては行かない。」


俺の言葉に疑問を抱いたのは祐太であった。


「え!?賢人さん、襲われていたんですか!?」


そういえば、こいつらと話をつけた時も賢人の話を出していなかったような…、まぁいい。

賢人は無言でそれを肯定しつつ俺の言葉に繋げた。


「成程。奴らは実力差も分からぬ、だが奴らは本能で生きて行くしか無いと……なれば、小次郎、お前はどうする?力も相手が圧倒的、実力は未知数の相手にどう相手取る?」


賢人の問いに対し、すこし考えてから、小次郎は答えた。


「まずは情報収集だな。姑息だが、その後集団での殲滅を開始する。」


小次郎の回答に満足したのは俺だった、おそらく、俺の予想が正しいはずだ。


「そうだ、つまり最初の一匹は偵察、戦闘による力も少し測れた、ならば、本能で動く野生の動物はどう動く?」


祐太が、それに答えた。


「情報に満足し、集団での殲滅を開始する…………ッ!?」


俺もゾッとする。アイツらが何匹もこの街にいて、そいつらが俺らを見て、挙句何匹もかかってくるということだ。

……身震いする俺に不動の拳が打ち込まれた。


「がっ!?」


威力は弱いが人一人を吹っ飛ばすには事足りた。

不動を呪おうとしたが、その予測は違った。


「■■■■■■■■■■■_________ッ!!!!」


死鬼だ、あれは死鬼だ。

姿形は変わっていない、人間だ、______だが死鬼だ。

さっきの不動の一撃は死鬼による強襲を防ぐため?だったら筋が通る。


「…無命、済まぬ。」


不動の短い謝罪の後、死鬼の頭が轟音と共に吹っ飛ぶ。


玄関前で射撃姿勢でSVDを構えていたのは祐太だった。

………いやいや、どんな威力だよ。死鬼は強靭な肉体じゃなかったのかよ、というか死鬼もう少し頑張れよ、銃弾避けろよ。


心の中で突っ込んでると賢人が高速で移動していく姿を横目で捉えた。

ザッ、と右足から二匹目の懐に飛び込んでいく。

右手が見えなくなった。

振り切った右手から鮮血が飛び散る…いや、死んでるから腐った血か、どっちでもいい。

胸から血を流して倒れる死鬼に追撃をかけるのは不動の拳だった。


「賢人よ、こいつらは唯の一撃では死なん…止めを躊躇いなく刺せ。」


「油断した。感謝するぞ、不動。」


がしりっと握手をする二人、友情やばいなこいつら。


「うほっ!不動さんが受け?いや、寡黙な裏での攻めですか!?」


祐太きもい、しね。

おっと、とりあえず拳を味わってもらうか。


「キモい言葉使うな。」


「ッッッッッッッ!!!!!?」


祐太が悶えているが関係ない、それは友人の絆で結ばれているからだ、多分。


そう、遠い友人が死んだようなそんな目をしていると小次郎が爆発してた。

厳密にはカタナが爆発してた。


「祐太…あれ、なんだ?」


「あれですか?良い事聞きましたね!?よーし、説明しちゃうぞー!」


「いいから説明しろ。」


「はいはい、あれは大気に含まれているごく僅かな水素を刀身に吸収して電気で発生した熱で分解、水を発生させます、そこまではおk?」


「おk。」


「でも水を発生させるだけじゃ面白く無いんで、水素を圧縮してそこに熱を加え、急激に分解をします。

すると水素と熱が反応して爆発を起こすんですよ、これが斬ったと同時に起こすとどうなると思います?」


祐太はご機嫌で笑っているがゾッとしない。

まず大気に含まれる水素、何%だと思ってるんだコイツ。

というかやっぱコイツの脳みそ駄目だ、考えつくことがどうかしてる。


………だが、小次郎は正直言って俺を抜くこのメンバーで最弱、だと思う。

それでこの戦力……十分死鬼と渡り合えるっ!


俺はついガッツポーズを小さくしてしまう。

だが、歓喜は体中をかけめぐって止まることを知らなかったのだ。

目の前で起きている、非日常。

それに真っ向から立ち向かって打ち破る快感。

俺もだ、俺も戦える。

この短刀、水琴の言葉を信じれば何かしらの効果があるはず、それさえわかれば俺らは死鬼とやらに抵抗出来るかも知れない、いや、現在出来ている。


もともと、賢人と俺で創立した死鬼抵抗戦線、僅か二日足らずで死鬼を蹂躙出来ている。

家の影から、門から、続々出てきている死鬼にも負ける気がしない。


テンションあがってきたZEEEEEEEEEEEEEEEEE☆



「うおおおおおおお!!!!」


右に賢人と不動、左に小次郎、後ろに祐太。

仲間は全員居る、俺は独りじゃない!


短刀を逆手に構え、俺は無我夢中で、門をくぐって来た死鬼の首を躊躇いなく斬り飛ばした。


………こいつも、元は人間だ。

いや、人間だった、今は違う。

水琴は死鬼を知っていた。

それに、死鬼は恐らく人を襲う、じゃないと死鬼はすぐに居なくなる。

要するに俺らは人助けをしてるんだ、善悪じゃない、俺の主観で善なのだ。


「だから…お前を殺す!」


血に塗れた短刀が、更に死鬼を殺す。






コンバットハイ……という言葉を知ってるか?

そうか、簡単にいえば、戦闘中に殺しを快楽と認め、是とする脳の誤作動のことだ、あくまで、俺の考えだが。

俺はそれになってたみたいだ。

ん?なんでみたいだって言うんだって?それはあれだ、記憶が無い。

唯さっきまでの喧騒も無くなってた。血の一滴すら残ってない。

賢人や不動、小次郎等は既に玄関前で座り込んでいる、祐太は銃の整備と小次郎の剣を弄ってるようだ。

空を見上げる。

黎明の明かりが俺を照らしていた。

いや、黄昏か?どっちでもいい。

とりあえず、太陽が顔を覗かせていた。


太陽を見た面々は漸く時間の経過に気付いたのか、家に帰ろうとしていた。


最初に立ち上がったのは小次郎だった。

短くじゃあな、と言って門をくぐって帰っていった。

不動は無言で帰宅、祐太はカタナに眼を奪われたまま門にぶつかりながら帰っていった。


そして、賢人も帰った。


だが、その時俺は気付かなかった。

賢人の左肩に血が滲んで居ることを。


どうも、プフェルです!

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