婚約者が可愛すぎる【私はヤンデレ素質のある幼なじみのことを愛している。ネイサside】
私はヤンデレ素質のある幼なじみのことを愛している。のネイサside
設定間違えたため上げ直してます
「おはよう、ネイサ」
俺、ネイサ・キーフォンに向かって、愛しい婚約者であるリエートアが微笑む。
朝からなんて可愛いのだろうと、つい引き寄せて口づけを落とす。
――俺はこれまで、リエートアとそういう関係じゃなかった。俺はリエートアに欲情していたけれどそれを拒絶されたら耐えられないと思ったから。
俺の世界で、ただ唯一の存在がリエートアだから。……きっと俺はリエートアに要らないと言われたら、拒絶されていたらすぐに自害していたかもしれない。
だってリエートアが隣に居ない世界なんて、生きている意味がない。
「ネイサは口づけが好きね」
そう言いながら嬉しそうに、その無表情な顔が緩む。
リエートアは基本的にはあまり表情を変えない。無という言葉がよく似合う。だけど俺のことになると、その表情が変わる。俺はその瞬間を見るのも好きだ。だってそれは彼女にとって俺が特別だという証だから。
その手入れのされた水色の髪に触れる。さらさらで、いつまでも触れていたくなる。リエートアは男爵令嬢で、本来なら侍女などにお世話をされる立場である。ただ俺が彼女に他の誰かが触れるのは嫌なので、大体俺が彼女の髪を整えたりしている。それはリエートアも一緒のようで、いつも俺の身だしなみを整えてくれる。
誰にも執着しないように見えるのに、確かにリエートアは俺に執着している。その綺麗な海のような青い瞳が、俺だけをずっと映している。その事実に、いつも歓喜にゾクゾクしてしまう。
恋人のように触れ合うようになったのは、王弟の落とし子だという少女がやらかした一件があったからだ。俺とリエートアは互いに望んでこういう関係なのに、勝手に勘違いして、俺から彼女を奪おうとした邪魔な女。
俺は元々独占欲が強い方だというのは自覚している。子供の頃は俺のそういう性格で、人が離れて行ったり色々あった。――昔の、リエートアに出会う前の俺は他のものにもそういう気持ちを抱いて、問題を起こしていた。
そんな俺から離れていく人も多かった。だけどリエートアは俺のそういう性格も、俺の全てを受け入れた上で傍にいてくれた。
彼女が傍に居てくれるようになってから、俺は他の人や物が全てどうでもよくなった。
――だって俺にとって彼女は唯一で、リエートアさえいれば満足してしまったのだ。幼いころからリエートアは達観しているというか、普通なら怯えるところを笑顔で受け入れる女の子だった。
――俺以外と文通なんてしないで。
――その声は俺にだけ聞かせて。
そんな本来なら聞くことが難しいような、お願い。彼女は嫌がる素振り一つ見せずに、寧ろその瞳は喜んでいるようにさえ見えた。そのお願いを叶えるために本当に彼女はこれまで交友があった人たちと関わらないことになり、俺以外とは必要最低限しか喋らなくなった。
俺はリエートアが俺のためにそこまでしてくれることが嬉しかった。
彼女はとても可愛い。見た目も本当に妖精か何かのように愛らしい。とても小さくて、すっぽりと俺の腕の中に収まる。それでいて華奢で、驚くほどに細い。
一時期、「太ってしまう」なんて心配していたけれどリエートアは少しぐらい太っても可愛いと思う。
小さくて、可愛くて……それでいてその瞳が俺だけを見てる。声も可愛い。愛らしい声を聞いてしまったら、男が近寄ってくるのではないかと心配になる。だから喋らないでほしいと頼んだ。
俺のお願いをなんでも聞いて、ただ俺の傍に居るリエートア。本当に何もかも可愛い。
「ん……」
だから朝から幾らでも口づけを落としてしまう。
想いが通じ合ってから本当に我慢が出来ない。婚前交渉するなと言われていたのに手を出したことは両親に怒られたけど、彼女が嫌がってないからと許してもらえた。
本当にリエートアが俺のことを受け入れてくれてよかった。他の男が彼女に触れることを想像しただけで殺したくなる。それに王弟の落とし子の起こした騒動で、リエートアの可愛い声が、その思いが自白剤によって多くの者達に聞かれてしまった。
俺を愛していると、そう懇願する彼女の言葉を俺ではなくその他大勢が聞いていたなんて……今思い返しても全員消し去りたくなる。
記憶削除の魔法が使われなかったら、俺は何と言われても全員消しただろう。普段からこんなに可愛いリエートアの、泣き顔まで見られたのだ! 彼女のそんな普段見せない姿は俺だけが見るべきなのに……。
「ネイサ……、学園行かなきゃ」
「うん。起きようか」
あれからずっと寝室も一緒だ。寮の部屋は隣同士だけど、大体どちらかの部屋に入り浸っている。
制服に着替えて、リエートアの手を引いて学園に向かう。
制服姿のリエートアも可愛い。何を着ても似合うのだ。他の生徒たちも同じものを着ているはずなのに彼女が身に纏っているだけで特別なものに感じられる。
小さな手も、ずっと繋いでいたいと思う。
学園だけは卒業してほしいと、親に言われなきゃずっと引きこもっていたのに。でも卒業したら役目をきちんとこなせばリエートアとずっと一緒で構わないと言われているのでそれまでの我慢だ。
俺達が歩いていると視線が向けられる。
それは俺にもリエートアにも。……俺達が婚約者同士だと知っているから変に近づいてくる人はいない。それにあの王弟の落とし子の件で、手を出さない方がいいと思ってもらえたらしい。それは本当に良いことだ。
下手に関わってこられようとすると煩わしいから。だけど男がリエートアに見惚れていたりするのを見ると毎回腹立つ。
流石にあの自白剤をリエートアが盛られた際に、彼女を救いたかったなどと戯言を言った存在は排除した。物理的に消そうとしたら止められたから、手回しして学園から去らせた。
あの子息、ただパーティーでリエートアに言い寄っただけだったから表向きには処罰されてなかったのだ。だから俺が排除した。
「ネイサ、こっち見て」
俺がリエートアに見惚れている男を睨みつけると、彼女に声を掛けられる。彼女の方を向けば、頬に手を添えられる。
「私だけを見たらいいの」
「うん。でもあいつ、リエートアに見惚れてた」
「そういう視線は無視でいいわ。私が愛しているのはネイサだけだもの」
可愛い。にっこりと微笑んで、俺にだけ柔らかい表情を見せるのが本当可愛い。
リエートアは想いが通じ合うようになってから、こうやってすぐに愛していると口にしてくれるようになった。俺にだけ聞こえるような小さな声で、だけど確かに熱がこもっていて……、登校中なのに連れ帰りたくなった。とりあえず抱きしめたのは、こんな可愛い表情を見せたくなかったからである。
「ネイサ?」
「このまま連れてく」
そのまま抱きかかえる。俺の腕の中で、幸せそうな声をあげているリエートア。
……こんな風に身体を拘束されても彼女はいつだって楽しそうだ。世の中にはこうやってべたべたされるのを嫌がる女性もいるらしいけれど、彼女はいつだってされるがままだ。
俺がリエートアを抱きかかえたりするのはよくある光景である。
教室について、俺は自分の席に彼女を抱きかかえたまま座る。
「ネイサ」
腕の中で俺の顔を見上げるリエートア。上目遣いも可愛い。
「授業受けられないわ」
「……離したくない」
「じゃあ、一限目だけね?」
リエートアはいつだって俺に甘い。
俺の望みを最大限叶えようとする。なんだかんだ彼女は真面目なので、授業などもしっかり受けている。あととても頭が良い。他の誰かが原因で授業を休んだりはしないだろうけれど、リエートアは俺のためなら休むことも多々ある。
教師は俺達の様子に呆れていたけれど、いつものことなので気にしないことにしたらしい。
一限目の間、ずっとリエートアを抱きしめられて俺は満足した。
それ以降は真面目に授業を受けているリエートアを見ていた。ちゃんと聞いてないと、良い成績がとれないとそう言ってちゃんとしている。俺はリエートアを見ながら授業を聞くでも今のところ問題ないので、そういう風にしている。
リエートアは「ネイサは頭が良くて凄い」といってくれる。自分の記憶力の良さなんて、彼女に出会うまではどうでもいいものと思っていたけれど……リエートアがこんな風に言ってくれるなら、自分の記憶力の良さに感謝した。
昼休みは、大体寮に戻るか中庭などで食事を摂る。食堂は人が多いから嫌だ。
そもそも食事を摂っているリエートアを他に見せたいとも思わない。
お弁当は大体俺が作っている。リエートアの口に入るものだから、ちゃんと自分の手で作ったものを食べてもらっている。だって他の誰かの手が入ったものじゃなくて、俺が作ったものを食べてほしい。
彼女を構成する全てが、俺に纏わる物である方が嬉しい。
「リエートア」
俺はよくリエートアに食べさせる。
俺がフォークを突き出すと、大きく口を開ける彼女も可愛い。
「美味しい」
そして嬉しそうに笑う姿を見ているだけで、幸せを感じる。なんだろう、ずっと見ていたくなる。
俺が視界に留めるのは、リエートアだけがいい。そして彼女が見つめるのは、俺だけがいい。
昼休みの残りの時間は彼女に膝枕をしてもらったり、ただ会話を交わしたり、本を読む彼女を見ていたり……と色々である。
午後の授業中もずっと、リエートアの事を見ていた。時折こちらを見る彼女と視線が合う瞬間も好きだ。
俺が見つめていると、リエートアもよく見ているから目が合うのだ。
放課後は、一緒に寮へ籠ることが多い。あとは出かけたりもたまにする。一緒にデートをするのも楽しい。今日は寮で過ごす。
二人だけの空間が心地よくて、ずっと永遠に続けばいいと思う。
「閉じ込めてしまいたい」
彼女をじーっと見ていたら、思わず本音が漏れてしまった。
他の誰かの目に留まらないように、俺だけを見つめるように――俺のことだけを彼女が考えられるように、時折閉じ込めてしまいそうな衝動に駆られる。
「閉じ込めてもいいのよ。私はネイサの物だもの」
リエートアはいつもこうだ。
俺がどれだけこういう思いを口にしても、ただ自然と受け入れる。そんな言葉を聞くと冷静にもなって、結局なんだかんだ俺はリエートアを閉じ込めたりはしていない。
――これが彼女が俺から逃げようとしたりしたのならばきっと俺は無理やりでも閉じ込めてしまったと思う。
だけどリエートアは違う。俺の行動を何一つ咎めることなく、ただいつだってその視線も、その行動も――俺への愛に溢れている。
「今はやめとくよ」
俺がそう口にすると、「……本当に閉じ込めてくれていいのに」なんてぼそりっと呟くリエートア。
俺のためなら、血の繋がった家族もこれまで関わった人たちも、これまでの生活も――リエートアは全て捨てられるのだ。
それを理解する度に、俺の心はいつだって歓喜に満ちている。
ああ、早く結婚したい。
俺はそう思ってならなかった。