バンドの方向性は常にバラバラである。
──藤沢との出会いをきっかけに、俺は藤沢と共に、度々スタジオを借りてセッションするようになった。
藤沢のドラムは、まるでプロのように上手かった。さすが、小6から続けているだけある。
一方の俺はというと、ぎこちない演奏ばかりで、足を引っ張ってばかりだった。
しかし、セッションの回数を重ねるごとに、少しずつではあるがギターの腕も上達していった——。
ある日、俺はいつものように藤沢と、バンド練習しにスタジオへ向かった。
藤沢:「なあ、やっぱドラムとギターだけだと、バンドとして成立しねぇな!」
比企谷:「いや、今更かよ!、前から言ってるだろ?、ベースとボーカルいなきゃ成立しねぇって!」
藤沢:「けどお前知り合いいねぇだろ!ぼっちだし笑」
比企谷:「おいおい、ぼっちが悪いみたいな言い方だけどなぁ、好んで一人でいることに楽しさを見出しているのであって…」
藤沢:「はいはい、お前の屁理屈にはもう飽きたぜ!さてそれより、決めるぜバンドメンバー!」
比企谷:「で、どうすんだ?」
藤沢:「実はだが、お前の高校の知り合いの一人に連絡とって、OKもらえたから来週から俺らと一緒に組むことになるぜ!」
比企谷:「お前それ先に言えよ!」
比企谷:「で、誰なんだよ、そいつは?」
藤沢:「そいつはな…….女子からかなりの人気者!その名も葉山隼人!」
比企谷:「はぁ!?ちょっと待て!あいつだけは入れるな!」
藤沢:「おい、なんでだよ!人気者とバンドが組めるんだぜ!」
比企谷:「いやいや、なんでよりにもよって葉山なんだよ!」
藤沢:「だって俺、あいつと同中だぜ!」
比企谷:「お前マジか……」
藤沢:「てかなんでそんな嫌がるんだよ?」
比企谷:「いや、まぁ…..あれだよ!あいついるといわゆる「バンドの方向性が違って最終的に解散!」っていうバンドマンの王道パターンに入っちまうんだよ!」
藤沢:「いや、なんでまだ合わせてもねぇのになんで解散の話になるんだよ!早ぇよ!」
比企谷:「よくあるだろ?音楽を続けるか、仕事して金に走るかで揉めて、バンドが解散するって話!葉山はサッカー部の次期キャプテンで、人気があるだろ?つまりあいつはサッカー部とバンドの両立ができずに、バンドを解散するっていうのがオチだ!よって俺は葉山を入れることを断固拒否する!」
藤沢:「いや、それ葉山が辞めるだけでバンド自体は無くならないだろ!」
比企谷:「他にもあるぞ!葉山が入ると、ファンが全部あいつに流れて、俺らはただのモブ扱いだ!」
藤沢:「バンド自体にファンがつくなら、メリットしかなくね?お前ただあいつと組むのが嫌なだけだろ笑」
(ぐ….なんも言えねぇ…)
比企谷:「ふん!お前がその気なら、俺にも考えがあるぜ!」
藤沢:「よ!、待ってました天才八幡様!」
比企谷:「いや、それはやめてくれ…..まぁ、ぼっちにも少なからず友達…ではないが知り合いはいる…正直、頼るのも不甲斐ないが……」
藤沢:「お前、知り合いいたんだな笑、八幡君の屁理屈に付き合える良き友に感謝だぜ笑」
比企谷:「おい!一言余計だぞ!」
藤沢:「で、その知り合いって?」
比企谷:「戸塚と材木座だ。」
藤沢:「……は?誰?」
「まぁ、お前は知らねぇだろうな。なぜならそいつら俺と同じく、インキャ側の人間だからな…….戸塚はちょっとちげぇけど。まぁ考えとしては、戸塚と材木座をバンドメンバーとして迎え入れる!
いいか!そいつらは俺と同じインキャ側の人間だ!つまり俺はそいつらと固まることで!葉山を気まずくさせ!葉山をやめさせる!名付けて葉山仲間はずれ作戦だ!」
藤沢:「お前、ほんと最低なこと考えるのだけは得意だな……。ま、ならこっちは葉山が気まずくならないようフォローするまでだ!」
比企谷:「ほお!その悪あがきがいつまで続くかな?」
藤沢:「てか思ったけどそいつら楽器できんの?」
比企谷:「………..できない!」
藤沢:「いや堂々とできない宣言すんなよ!なら尚更その作戦ダメだろ!」
比企谷:「あくまで葉山をやめさせるまでだ!」
藤沢:「うわぁ、ついに本性出したよこいつ…..」
比企谷:「じゃあ逆に聞くが、葉山こそ楽器やってる感じじゃねぇだろ?」
藤沢:「いや、あいつもお前と同じで、ギター高校で始めたばっかだぞ。お前文化祭で見たろ?あいつが演奏してるの….まぁ、少なくともお前よりは上手いぞ…」
(文化祭見れてねぇ……)
比企谷:「おいおい、あいつはただのイケメン運動バカじゃねぇのかよ?どんだけ最強なんだよ!俺のでる幕ないじゃねぇかよ!」
藤沢:「いや、それ褒めてんのか貶してんのかどっちだよ笑、あと安心しろ!お前の出る幕は天地がひっくり返ろうともねぇ!」
それから俺たちは、葉山、藤沢、そして俺の三人でしばらく練習を重ねることになった。
……で、なぜか俺がリードギターをやることになった。
いやいや待て。葉山の方が断然ギターうまいんだけど?
にもかかわらず、藤沢は何を血迷ったのか、やたらと俺を推してくる。
藤沢:「いや、比企谷にしか出せない音があるから。」
比企谷:「お前、音楽雑誌のインタビューか!」
もちろん、俺は最初キッパリ断った。自分がどれだけ初心者かなんて、俺自身が一番よくわかってる。
が、葉山まで「リードは厳しい」なんて言い出したせいで、結局俺が引き受ける羽目に。
比企谷:「……俺、ギター初心者だけどね☆ なに考えてんだ藤沢……」
マジで頭おかしい。いや、正気じゃないのは前から知ってたけど。
——そんなこんなでバンドのメンバーも、少しずつ固まり始めた。
戸塚は相変わらずテニス部の活動で忙しい中、音楽フェスの時期だけという条件付きで、参加を快諾してくれた。
戸塚:「少しの間だけど、僕も協力するね!」
天使か。
一方で材木座は、例によってラノベの新作を執筆中だったらしい。だが、「小説の添削を奉仕部で引き受けること」を条件に、これまた一時的にバンドに加わることに。
材木座:「ふはははは! 我の魂を震わせる旋律……お主らにも届けてやろうではないか!」
まぁ、相変わらずだ。
——こうして、俺たちのバンドが正式に結成された。
メンバーは以下の通り。
ボーカル:戸塚
ベース:材木座
ギター:葉山&俺
ドラム:藤沢
演奏する楽曲はもちろん、**「Gun’s and Sword」**から三曲。
名曲揃いだし、ファン層も厚い。責任、重すぎない?
——ちなみに。
葉山のことについては、俺は未だに納得していない。