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ギタリストはいじりの対象にされやすい

そして、本番まで後1日…..明日には、俺たちはフェスに出て演奏することになる….誰かもう時間戻してくれ。スタジオに入ると、ふと俺はギターをケースから取り出してみる。

張り替えられたばかりの弦は、どれも綺麗に揃っていた。……やけに丁寧に。


けど、どうにも1弦と2弦のペグに、微妙な違和感がある。

……これも、浅野が直してくれたんだろうか。


弦だけじゃなく、ペグまで手を入れるなんて。

どこまで親切なんだ、あいつは。

……いや、むしろ過保護すぎるだろ。


でもまあ……ありがたいってのは、否定できないけどな。


そしてすぐにスマホから連絡が来た。

浅野からのメッセージだった。「明日フェスだね!お互い気合い入れて頑張ろう!」——なんか、こうやって女子とメッセージのやり取りするの、いつ以来だっけか。奉仕部以外だと、特にな。

すると、そのメールの内容を気づいたら藤沢がのぞいてた。


藤沢:「あれれぇ!?比企谷くんが別の女の子と連絡取ってるな〜!2股の次はついに3股か〜?」


比企谷:「お前!?勝手にみるなよ!あと、なんで俺が奉仕部の奴らと付き合っている前提で話進んでんだよ!」


葉山:「あれれ、比企谷くん!浮気は感心しないな〜」


比企谷:「おい葉山お前まで!」


藤沢:「これはもう、事情聴取不可避だな〜。さあ比企谷くん、正直に吐いてもらおうか〜?」


比企谷:「いや、お前こそ姫華って女とデートできるだろ!? 俺問い詰める暇あったらそっち行けよ!」


藤沢:「それとこれとは別問題だわ。仲間の恋愛事情を把握するのもバンドメンバーとしての務めだ!」


葉山:「そうだそうだ〜。誤魔化したらダメだよ? 俺たち仲良しバンドだろ?」


この時、二人の顔にはまるで悪魔のような笑みが浮かんでいた。葉山の言う「仲良し」は、普段とはまったく違うニュアンスだった。


比企谷:「戸塚ぁ〜〜! 材木座でもいい!誰か助けてくれぇーーー!!」


そして、俺は恋愛事情とやらを自白する羽目に….本番前になにやってくれてんだよ!


材木座:「ふむ……これは、まさしくハーレムアニメにおける典型的主人公の立ち位置ではないか!八幡よ、リアルでその道を極めるとは……貴様、只者ではないな!」


比企谷:「いやいや! 俺まったくそういうキャラじゃねーから!」


藤沢:「なるほどな〜。奉仕部にあんな可愛い彼女がいるのに、他校の女子とイチャイチャとは…罪深いぞ!比企谷八幡!」


比企谷:「だからなんで彼女いる前提で話が進むんだよ!」


葉山:「良くないぞ、比企谷。大事な彼女さんを忘れるなんて…雪ノ下さん、悲しむんじゃないか?」


比企谷:「ちょっと待て!?何でよりにもよってあいつなんだよ!」


藤沢:「よろしくないな〜比企谷くん!あんな美人な彼女をないがしろにするとは!」


比企谷:「もう勘弁してくれぇーーー!戸塚ぁあああ!!」


戸塚:「ごめんね、八幡……僕にはどうすることもできないよ……」


そして、俺はしばらくの間、“恋愛尋問”を受け続ける羽目になった……マジでやめろぉーーー!もう掘り下げないでくれーーー!


藤沢:「てかさ、比企谷の女って、『Astral Youth』のメンバーだったってマジ!? 運命かよ!」


比企谷:「だからなんで“俺の女”になってるんだよ!おかしいだろ!」


葉山:「でもその“比企谷の女”、ギター数分で直したんだろ? 演奏もかなりできるんじゃないの?」


比企谷:「お前まで“俺の女”っていう前提で話すなよぉおお!!」


もうこの場から今すぐ消えたい……。一番知られたくないやつにメッセージ見られるとほんとろくなことねぇ。


そんなこんなで本番前なので、朝方から夕方までスタジオを借りていた。スタジオ代は目ん玉飛び出るくらい高かったが、明日の本番のためだ……くっ、俺の財布よ、成仏してくれ。


戸塚:「ねぇ!また隣から演奏聞こえてくる。しかもすごい演奏上手だよ!」


藤沢:「おっ!ほんとだ!この演奏…プロじゃね?なぁ比企谷、隣に“お前の彼女”来てんじゃねーの?」


比企谷:「だから俺の女っていう前提で話進めるなっての!」


葉山:「え?なにそれ。比企谷の彼女、わざわざ隣でプレ演奏とかしてんの?すごいなぁ、愛されてるね〜」


比企谷:「もういつまで続けんだよ!この不毛なやり取り!」


友達にいじられるってこういうことか……今まで経験なかったが、正直キツすぎる。頼むから誰か、俺の人格を保護してくれ……。



その頃、隣のスタジオでは!某ガールズバンドが演奏を….


浅野:「ふぅ〜!やっぱバンドって最高だね!」


花月:「うんっ。でもごめん、私のベースちょっとチューニングずれてたかも…」


富水:「またぁ?あんたさ、そろそろ新しいベース買ったら?」


花月:「いや、他の機材にお金使いすぎちゃって、完全に金欠モードなんだよね〜」


浅野:「舞ってほんと、いつも金欠じゃん(笑)」


富水:「てか姫華、最近ドラムちょっともたついてない?この前からずっとだけど、大丈夫?」


片瀬:「あっ、ごめん!大丈夫、大丈夫。本番までにはちゃんと仕上げるから!」


浅野:「ん〜?もしかして姫華〜、好きな人でもできた?」」


花月:「あ、恋してるからテンポ崩れてるんだ〜!(笑)」


片瀬:「ち、違うよ!?そんなんじゃ…」


富水:「あーはいはい、めっちゃ顔赤くなってるー!これは黒ですわ!」


浅野:「お〜っと、これは聞かずにはいられませんな〜。誰よ、相手は?」


片瀬:「えっと…その…ここだけの話、ね?実は…総武高のドラマーの克樹くんが気になってて…」


富水:「は!?うっそ!あの金髪でタトゥー入ってる人!?」


花月:「えっ、知ってるの?」


富水:「いや、普通にスタジオで見かけるじゃん。総武高の他の男子と一緒にスティック持って歩いてたし」


浅野:「あっ、あの子か!雰囲気ちょっとワイルドな感じの」


花月:「姫華って、わりと意外なタイプ好きなんだね…」


富水:「てかさ、みんな総武高のバンド男子で彼氏にするなら誰選ぶ?」


花月:「え〜、あの金髪ギターの子めっちゃイケメンだし、正直タイプ!」


富水:「わかる!あの子ビジュアル強いよね〜」


浅野:「私はね〜、もう一人のギターの子。なんかちょっと変わってて、気になるっていうか…」


富水:「あ〜、あの目死んでる地味なやつ?」


花月:「恋愛対象って感じじゃないかもだけど、クセ強いよねあの子(笑)」


浅野:「でもさ、昨日ギター壊れてたから助けてあげたら、案外面白い子だったんだよね。ああいうの、悪くないかも?」


富水:「浅野、あんたもなかなか変わった趣味してんな…(笑)」


花月:「私、あのちっちゃい子も好きかも!なんか、可愛い!」


富水:「あー、あの女の子みたいな顔した子?確かに“守りたくなる系男子”だよね」


浅野:「で、姫華の話に戻るけどさ、進展あったりするの?」


片瀬:「えっと…この前、克樹くんが…デートに誘ってくれて…」


浅野・富水・花月:「えぇぇーーーっ!?マジで!?」


富水:「もう完全に脈アリじゃん!何それ、羨ましい!」


花月:「いいなぁ〜!私も誰かにデート誘われたいよ〜!」


浅野:「じゃあ舞も、金髪ギターの子に話しかけてみればいいじゃん?」


花月:「む、無理無理!あんなの高嶺の花すぎてムリィ〜〜!」


富水:「てかさ、なんだかんだ言っても…やっぱノア様じゃね?」


花月・浅野:「わかるーー!!」


浅野:「ノア様って、マジで大人っぽいし、あの雰囲気もビジュアルも完璧すぎない?」


花月:「あれはもう人間じゃない。尊すぎて拝みたくなるレベル…!」


富水:「てか、同い年とは思えんし。あの佇まい、もうプロのアーティストでしょ。」


浅野:「分かる〜!あの目線とか、所作とか、一つひとつが絵になるっていうか…」


花月:「ノア様のライブ、また最前で見たいなぁ〜。てか今度ファンレター出そうかな…」


隣の部屋ではガールズトークが披露されていた。



葉山:「ん? なんか隣、急に演奏止まったな。……雑談っぽい声、聞こえてくるけど?」


藤沢:「お、よかったじゃん比企谷〜!お前のこと、噂されてて」


比企谷:「うるせぇよ!放っとけ!」


葉山:「へぇ〜、比企谷、そんなにモテるとはねぇ。……いやぁ、よくないな〜。じゃあ、雪ノ下さんは俺がもらっちゃおっかな?」


比企谷:「はあ!? なんでそうなんだよ!」


藤沢:「うわ、めっちゃ動揺してるじゃん!必死やん、お前〜!」


葉山:「やっぱ本命は雪ノ下さんか〜。彼女取られるのはさすがに嫌なんだな〜?」


比企谷:「お前ら、ほんっとにいい加減にしろぉ!! 誰か!助けてくれぇぇ!!」


俺の心の叫び:(もういじられんの、マジで勘弁してくれぇ……!)


戸塚:「あのさ……盛り上がってるとこ悪いんだけど、そろそろちゃんと練習しよ? 明日本番なんだしさ」


藤沢:「あっ!? そういえば明日じゃん!やっべ!比企谷、お前責任取れよ!場所代、全部お前が払え、モテ男野郎!」


比企谷:「は? 意味わかんねぇ!理不尽すぎんだろ!つーか、お前らが勝手に俺を“モテる前提”で話すから悪化してんだろうが!」


葉山:「ダメだよ比企谷くん、そんなに謙虚になっちゃ。俺たち彼女いたことないんだから……嫉妬されちゃうよ?」


比企谷:「うるっせぇ!お前ほんと一回黙れ!」


藤沢:「よーし!気合い入れようぜ!本番前の最後の練習だ、今日は今までで一番熱くいくぞ!」


全員:「おおーーーーッ!!!」


俺の心の声:(……いや、遅ぇよ。俺いじってる暇あったら、最初から真面目にやれよ……!)


一方、スタジオの外では――


???:「ついに明日か……“音楽フェス”とやらは。」


???:「ああ……祭りの裏で、誰が生き残るかの選別が始まる。」


???:「ふん、『蒼刃 -Soujin-』が出るって話だが……所詮は派手なだけのバンド。俺たちの敵じゃない。」


???:「カバー曲だけの採点制……そのうえ、最も比重が大きいのは“演奏技術”。実力だけなら、俺たちの右に出る者はいない。」


???:「問題は……“あの学校”の奴らか。」


???:「油断は禁物だ……“あいつ”が手を引いている可能性もある。想定外は潰す。それが鉄則だ。」


???:「で、曲はどうする……マサ。」


だがその時、俺たちはまだ知らなかった。

スタジオの外で、確実に“何か”が動き出していたことを――。


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