後編
前話と一緒に更新しています
オリーフィアも最初から自分がもうガザンス家の娘ではなく、平民の使用人だなんて思っていた訳ではなかった。
六歳までとは言え、彼女は母親に守られながら伯爵家のご令嬢らしい生活をしていた。急にそれを否定されても、すぐに納得するはずもなかった。
しかし、オリーフィアは毎日のように大人から自分が伯爵家の娘であることを否定され、使用人の仕事を押し付けられた。母が亡くなり、唯一彼女がすがり付ける存在であったはずの実父にまで否定をされた。
オリーフィアがせめて十歳を越えていれば、多少は社会のことにも理解があり、それがおかしいことだとはっきり分かっただろう。しかし、あの頃のオリーフィアはそうなるには幼すぎた。六歳のオリーフィアは、大人の言葉を否定する術を持っていなかった。
後はオリーフィア自身も自覚していなかったが、信じていたものに裏切られた悲しみから、彼女は無意識に周囲の嘘を信じ込むことを選んだ。
『本当の娘であるのに否定される自分』より、『実は伯爵家の娘ではなかった自分』の方を、幼い柔らかな心は選んだのだった。
しかし時が過ぎ、さすがに十代も半ばにさしかかると、オリーフィアも伯爵家に縁もない母娘が伯爵夫人と令嬢に簡単になりすませる訳ではないと気づいてきた。ではなぜ伯爵令嬢のはずの私がこうして手肌を荒らして働いているのかとオリーフィアが疑問に思い続けていると、ある話が彼女の耳に入ってきた。
その頃、王家の継承権争いに負けた第二王子が、王都からはるか遠い、辺境の侯爵家に養子に出されるという出来事があった。名目は跡継ぎに恵まれなかった侯爵家にその貢献に応えるため王子を養子に出すとのことだったが、誰の目から見ても跡目争いに負けた王子が遠くに追いやられたのは明らかだった。
「第二王子も優秀だと言うじゃないか。臣下としてお城で働くのじゃダメだったのかね」
「そりゃあ寝首をかかれる心配とかあるんじゃないか?せっかく手にした継承権を確かにするために、追い出したんだろ」
「王族やお貴族様は身内にも容赦がないのねぇ」
「パン屋とかの跡継ぎとは話が違うんだろ。兄弟で跡目争いをして、殺しちまうこともあるらしいぜ」
「ひえー、おっかない」
下っ端の使用人たちが、あーだこーだと話をするのを偶然耳にして、オリーフィアはずっと抱いていた疑問に一つの答えを見いだした。
それまでは伯爵令嬢であった自分と、使用人として働く自分は矛盾をすると思っていた。しかし、母を亡くし知らぬ間にアマンナとの跡目争いに敗れた自分は、既に伯爵家の一員から追い出された平民の身なのだとすれば、矛盾はなくなる。オリーフィアはそう考えた。
なるほど、皆が揃って私をこの家の娘ではなく使用人だと言った理由はこれかと、彼女は事実ではない考えに納得をしてしまったのだった。
実際のオリーフィアは、貴族籍を剥奪などされていなかった。貴族が籍を抜くには届け出が必要となる。いくら『オリーフィア・ガザンス』が出来損ないだろうが、父親である伯爵はそれだけで貴族の地位を奪うことはしなかった。実の娘をそのように追い出せば、前妻を亡くしたころのような批判が向けられるのは明らかだった。
だから、伯爵はあれこれ手を回して後継者は庶子であったアマンナにするが、オリーフィアを貴族でなくす気などなかった。むしろ、貴族の娘という付加価値を付けたまま、若い娘だというだけで喜んで嫁に迎える好色家の貴族にでも嫁がせようと考えていた。そちらなら、能力が低すぎて他に貰い手がなかったのだと、多少なりと言い訳が立つからだった。
しかし、そんな伯爵の考えも社交界の常識も知らないオリーフィアは自分の中で結論を出し、自分はもう平民の使用人だと思うようになっていた。
そのため、社交界に出れば浮かない顔をしていたが、それは出来損ないと呼ばれることを悩んでいたのではなく、平民の自分がそこにいることを咎められないかと気が気ではなかったからだった。
ロデリックとのお茶会で辛そうな顔をしていたのも、アマンナとの仲を見せつけられることを気にしていたのではなく、侯爵令息を騙すだなんて罪に問われないかと心配していただけだった。
既に自分を平民だと思っているオリーフィアに、ロデリックはお前の罪を全て聞いたと言ってしまった。皆も既に知っていると言ってしまった。
もちろんアマンナを虐めてなどいないオリーフィアは、ロデリックが指す『罪』を平民の自分が貴族のふりをしていることだと思ってしまった。
あのときのオリーフィアにはアマンナの悪行を暴露する気など全くなかった。なぜなら彼女にとって伯爵令嬢のアマンナが平民の自分を使用人扱いすることは、普通のことだったからだ。だから、彼女はただ自分の自覚していた『罪』を告白しただけだった。
しかしその結果、華々しく散るはずだった悪役令嬢はトンチンカンな答えを返し、焦ったアマンナはボロを出した。そして、オリーフィアを出来損ないの悪女だが貴族令嬢だと思っていたロデリックとの言い争いになったのだった。
アマンナとロデリックが醜く言い争う声が落ち着いたのを見計らって、オリーフィアはおずおずとロデリックに声をかけた。
「あの、ロデリック様。伯爵様は私を見限ったと聞きましたが、それは首だという意味でございますよね?次の仕事に就くには紹介状とやらが必要だと他の使用人が言っていたのですが、私ももらえるのでしょうか?」
「いや、オリーフィア、首も何も君はそもそも雇われてはいない」
オリーフィアがまだ正真正銘の貴族の令嬢であると理解しているロデリックは、この数分で色々ありすぎて疲れた声にはなったが、それを明確に否定した。
しかし、それをオリーフィアは自分が貴族の令嬢であるという意味には取らなかった。
「そうだったのですか。皆が貰っているというお給金もお休みもいただけなかったのは、そういう理由だったのですね。私は使用人ですらなかったのですね」
オリーフィアが諦めたようにポツリと呟いた言葉を、ロデリックはもう聞きたくないと思いつつも、念の為確認した。
「オリーフィア、き、君は給金もなしで休みなく働いていたのか?」
「はい。あ、でもその代わりに食事は少なくとも二食は出していただいておりました。料理の下ごしらえや掃除など毎日ある仕事を担当していましたので、休みはありませんでした」
「毎日?まさか、皆が休む女神生誕の祝祭の日もか?」
「もちろんです。祝祭の日は他の皆様がお休みだったので特に仕事が多かったです」
オリーフィアの言葉に、ロデリックは項垂れるように視線を下げた。そして、まだ近くでアマンナが「誤解ですわ」「お姉様がおかしいのです」「あんな嘘よりこのアマンナを信じてくださいませ」と叫んでいたが、ロデリックは周囲に力なくこう告げた。
「今宵の夜会はここで中止とします。皆様、申し訳ございませんが、今晩はここでお帰りください。そして、私の婚約については後日正式に発表します。今夜の発表はなかったことにします」
その発言に、アマンナは先ほどより甲高い声を出してロデリックに詰め寄った。そんな彼らに好奇の目を向けつつも、人々はパラパラと家路についていった。
アマンナとロデリックが終わりのない言い合いをし、段々と人が減っていく中、土下座をしたときからずっと床に座り込んでいたオリーフィアにある紳士が声をかけてきた。
「お嬢さん、貴女が何者であれ女性がこのような床に座っていては身体を冷やします。彼らの話し合いは長引きそうだ。君はこちらに来なさい」
「お気遣いありがとうございます。しかし、アマンナお嬢様に許可をいただいておりませんので、私はここを離れる訳には参りません」
「しかし君は彼女の家に雇われている訳ではないのだろう?なに、私にもロデリック君と対等に話ができるぐらいの地位がある。私に命じられたことにしてついて来なさい」
「でも」とオリーフィアが言い切る前に、その紳士はロデリックに声をかけた。
「彼女の身は一旦私が預かるよ、ロデリック君」
ロデリックは何かを言おうとしたが、その前に紳士が「問題はないね?」と彼に畳み掛けた。ロデリックは「うちのお姉様に何を勝手に」と騒ぐアマンナの口を慌てて塞いで、紳士の言葉に何度も首を縦に振った。
「と、言うことだ。行こうか、オリーフィア」
ロデリックの反応からして間違いなく高位の貴族であろう紳士の言葉にオリーフィアが逆らうはずもなく、彼女は促されるままに自分で立ち上がった。黒髪に白髪の混ざったグレーの髪色の紳士はオリーフィアが自分の後ろに付いて来るのを確認すると、もうこの場所に用はないとばかりに彼女を連れてそこから立ち去った。
夜会の翌日から、社交界はガザンス姉妹の話で持ちきりだった。あの心優しき才女だと思われていたアマンナは、実は異母姉を下女のように扱う悪女であったという話が瞬く間に広がったのだった。
噂の発端は夜会でオリーフィアたちのやり取りを見ていた貴族たちだったが、いつの間にかガザンス家にいた使用人がリークした話もそこに加わり、噂はどんどん具体性を増していった。貴族の娘を下女扱いするという前代未聞の事件は、日に日にその酷い扱いが明らかになっていった。
最初はアマンナの言い分を信じていた貴族たちも、詳細が明らかになるにつれ一人、また一人とアマンナから離れていった。アマンナはあんなに見下していたオリーフィア以上に社交界から疎まれる存在となった。
もちろん、そんな状況でロデリックとアマンナの婚約が整うことはなかった。ロデリックはそれまでの蜜月が嘘であったようにアマンナを切り捨て、自身は騙された側なんだと釈明するのに必死になっていた。しかし全てを知っていた訳ではないが、ロデリックもアマンナと共に周囲にはばかることなくオリーフィアをバカにしていた。言い訳を重ねたところで、彼に向けられる視線の厳しさは緩むことはなかった。
オリーフィアの父親である伯爵も、実の娘を幼い頃からこき使っていたことがばれて、針のむしろ状態だった。それまで親しく付き合っていた貴族からも距離をおかれ、事業でも窮地に立たされていた。
政略結婚ではなく心から愛した妻と愛らしい娘、まもなく整う格上の侯爵家との縁談、望む全てを手に入れ彼の人生は順調に進むはずだった。しかしその夢は、あの夜会以降全てが崩れ去った。
夜会での断罪劇も、ロデリックが伯爵にも話を通していると宣言していたので、自分は関与していないと言い逃れることもできなかった。アマンナや義母にも厳しい目は向けられていたが、唯一の肉親である伯爵に対しては更に厳しいものが向けられた。
そうして貴族たちはオリーフィアを搾取した人たちを批判したが、その一方で誰一人彼女に救いの手を差しのべる人はいなかった。彼女は出来損ないではなかったが、まともな教育をうけていないのもまた事実だった。ガザンス家との繋がりを求める家など皆無だし、下級メイドの仕事はできても侍女の仕事はできない彼女を雇う家も、引き取る家もなかった。
口々に「おかわいそう」「オリーフィア様は被害者だったのね」「私は彼女は悪い娘ではないと思ってたわ」など好きなことを言いつつ、彼女のために動く人はいなかった。
そんな世間を騒がせた噂も、一ヶ月も経てばそれなりに落ち着きを見せていた。人々の関心がそれぞれに移ろう中、当人のオリーフィアは遥か大海原の上にいた。
「オリーフィア、君は飽きずに海を見ているね」
あの夜会の夜出会った紳士、今はオリーフィアの主人になった侯爵が彼女にそう声をかけた。
「はい、旦那様。母がよく海の話をしてくれていたのです。あの家で働いている頃には見ることは叶わないだろうなって思ってたので嬉しくて、つい時間があれば見に来てしまいます」
「そうか。君の母親は海が好きだったのだな」
「はい、海の見える丘にある屋敷で育ったと言っておりました」
楽しげに話すオリーフィアの横顔を、旦那様と呼ばれた男は少し複雑な表情で見つめた。
「君が本国に着いたらお世話になる家も海が見えるところに屋敷があるぞ。今度からは飽きるほど見れるさ」
「本当ですか!こんなよい待遇で雇ってもらえるばかりか、海まで見えるなんて。旦那様、本当にありがとうございます」
「君がこれから仕える老婦人は私の古い友人でね。彼女は君のいた国の話を聞きたがっているんだ。しばらくは侍女の仕事を学びつつ、彼女の話し相手をしてもらうよ」
「はい。大奥様のお役に立てるようがんばります」
あの夜会の後、この紳士に連れられオリーフィアは伯爵邸よりはるかに大きなお屋敷に連れて行かれた。どこか異国情緒のあるそのお屋敷で、オリーフィアは紳士から自分の下で働かないかと提案された。
「私は西国の人間でね、そろそろ本国に帰るのだが、こちらの生活をよく知る人を雇って帰りたいと思っていたのだ。しかし、国を渡るとなると家族と離ればなれになると中々了承してくれる人がいなくてね。君が付いてきてくれるとありがたいのだけど、どうだろうか?」
そこからその紳士、西国の侯爵が示した条件は、劣悪な環境で働き続けていたオリーフィアからすれば夢のような条件だった。
「お、お給金をそんなに?それにお休みもたくさんいただけて、侍女の仕事も学ばせてもらえるんですか?」
「ああ、君には生まれ故郷を離れてもらうことになるからね。これぐらいの条件は出すよ」
「旦那様、ぜひやらせてください。西国の言葉は母から密かに習っていたので、話すことも、簡単な読み書きもできます。よろしくお願いいたします」
オリーフィアがそう答えると、侯爵は彼の侍従に彼女の前にいくつか書類を並べさせた。
「これは国を出る許可や雇用契約などだ。サインをするように」
オリーフィアは学がないため難しい単語は読めなかった。文字がたくさん並んだ書類の中身を、彼女は半分も理解できなかった。そのため、彼女はそのうちの一枚がガザンス家から離籍するための書類であることに気付くことなく、サラサラと癖のある字でサインをした。
そうしてガザンス家との縁をきっぱり切ったオリーフィアは、今は西国の侯爵に雇われた身となっていたのだった。
「旦那様、そろそろ仕事の時間なので失礼いたします」
しばらく侯爵とオリーフィアは海を見ながら会話をしていたが、仕事の時間になったので彼女はそう言って自分の持ち場へと向かっていった。
オリーフィアの背を見つめる侯爵に、侍従が遠慮がちに声をかけた。
「あの方の孫娘を使用人などとして雇ってよろしかったのですか?もし必要でしたら、私の家に養女として迎え入れますが、いかがでしょうか?」
侍従の心配は当然のものであった。オリーフィアは西国の貴族の血を引く娘でもあった。西国でも簡単に使用人と扱われる身ではなかった。
「しかし飛び方を知らない鳥を空に放ってどうする?そんなことをしても、ただ落ちるのを見るだけだ。今の彼女にとって、身の丈に合わない貴族の地位が幸せをもたらすとは限らない」
侯爵は重いため息をついた。
「あのような環境にいては心も傷ついているだろうし、身体も随分痩せているようだ。まずは落ち着いた環境で心身を癒すのが先だ。その先で彼女が望めば、君の家なり、相応しい養子先を探すことになるだろう」
オリーフィアの次の主人となる老婦人には、彼女のこれまでの境遇を大まかには伝えておいた。海を渡った娘が十年ほど前に儚くなってから孫娘のことは折に触れて情報を得ていたようだが、まさかこんな不遇を強いられていたとは老婦人も想像すらしていなかったようだった。
彼女はオリーフィアが自分のもとに来れば、これまでの分も埋め合わすように甘やかすのだと息巻いているという。孫娘を甘やかすのは彼女に任せるべきだろうと、侯爵は思った。
「それより我々は我々にしかできないことをしなければならないぞ。例え政略であろうと国を渡った令嬢の娘がこのような扱いをされていたことに、陛下も大変憤慨されている。今後の貿易も含めて、打ち合わせが必要になるだろう」
「かしこまりました。帰国次第、調整を致します」
オリーフィアたちを乗せた船は順調に進み、一週間後には彼女は海が見えるお屋敷の一室で、新しい主人の前に立っていた。目の前にいる自分と同じ緑の瞳の老婦人は、オリーフィアを見つめると、目元のシワを深くし、柔らかに微笑んだ。
「初めまして、オリーフィア。侯爵に話をもらってから、貴女に会えるのを楽しみにしていました。これからよろしくね」
「はい、大奥様。よろしくお願い致します」
「まずはお茶を淹れてちょうだい。私の好きな茶葉の味を覚えてほしいから、貴女も飲んでね」
「分かりました。いただきます」
そこからオリーフィアは老婦人に大層可愛がられた。彼女もそれに応えるように献身的に仕え、二人はお互いを大切にした。二人の主従関係は、オリーフィアが老婦人が懇意にしていた商会の息子と結婚するまで続いた。
「大奥様、長らくお世話になり本当にありがとうございました。今の私があるのは大奥様のおかげです。私を拾い上げてくださり、本当にありがとうございました」
西国に来てから勉強を重ね、今では立派に侍女としての仕事ができるようになったオリーフィアは、最後の出勤日に深々と老婦人に頭を下げた。ただただこき使われるばかりの生活から自分を救い上げてくれた老婦人は、オリーフィアにとっては感謝してもしきれぬほどの恩人であった。
「もう今日で最後なのね、オリーフィア。貴女の紅茶が飲めなくなると思うと寂しいわ」
「大奥様、商会の仕事で主人がこの家を訪れる際は私も同行させていただきます。そのときに、またお茶を淹れさせてください」
「まぁそうなの。そのときは貴女の幸せな姿を見せてちょうだいね」
オリーフィアの結婚のことを語るとき、老婦人は初めて会った日のように、それは嬉しそうに目を細めてくれた。その表情がとても優しくて、オリーフィアは最後だからとずっと秘めていた本心を溢した。
「大奥様に大事にしていただけて、本当に私は幸せです。内緒にしてきたのですが、私にこんなおばあ様がいたら素敵なのにってずっと思っていたのです」
オリーフィアのその言葉に、老婦人はつーっと静かに涙を流した。失礼なことを言ってしまったかと慌てるオリーフィアを制し、老婦人は彼女を手招きし、自分のすぐ近くに呼んだ。老婦人はシワの多い柔らかな手で、オリーフィアの今は滑らかになった手を包み込んだ。
「ありがとう、オリーフィア。貴女がそう思ってくれていたなんて、本当に嬉しいわ。私の晩年は貴女のおかげで幸せに満ちたものになりました」
「大奥様……」
「オリーフィア、幸せにおなりなさい。私の願いはそれだけよ」
今でも十分幸せなのにとオリーフィアは思ったが、老婦人の瞳は真剣で、そしてどこまでも優しかった。だから、彼女も同じ色の瞳で見つめ返し、その言葉に深く頷いた。
「はい、大奥様。私、必ず幸せになります」
窓に掛けられていたカーテンを、海からの風が緩やかに揺らしていた。美しい海が見える部屋で、二人はしばらく手を取り合ったままでいた。
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