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魔法使いの結婚  作者: 鳥縞つぐみ


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35/50

35 スワン先生のプレゼント

 ルセルは、自分が大いに混乱していることを自覚していた。

 リース王子は、今日、十八歳になり、大人の仲間入りをした。先程会ったリース王子は、面影はあるものの、ルセルの知っているリース王子から驚くほど様変わりしていた。何しろ、自分より背が高く、声は低く、言葉遣いまで変わっていたのだ。そのリース王子が八年前からずっと自分を想っている?八年前、リース王子はまだ十歳だったというのに…。

 自分は、どうだ?

 この八年間、リース王子のことを片時も忘れたことはなかった。ずっと会いたかった。しかし、自分が使った魔法のせいで会うことが怖かった。忘却の魔法をかけておいて、忘れられたくないと願っていた。だから、自分だけはずっと覚えていようと思っていた。リース王子の分まで、リース王子との思い出を大切にしようと思っていた。

 この気持ちに、名前はあるのか?


 ルセルが大いに混乱している最中、スワン先生はルセルを置いて、壁際で学友と話すリース王子のところへ向かった。向かったと言っても、歩かずに、魔法を使ってリース王子の目の前に突然現れただけなのだが。

 

 突然、現れた男性に、リース王子の周りにいた学友はどよめいた。彼らは、王都の東にある貴族子女の通う学校の生徒だ。魔法学校と違い、十二歳で中等部に入学し、十六歳を迎える年で高等部に上がり、十八歳で卒業する。

 アゼリアのように魔法を使える貴族子女で魔法学院への入学を希望する者は、高等部に上がらず、魔法学院へと進む。貴族学校の生徒のほとんどは、魔法に関心がなく、魔法とは縁のない生活を送っているから、スワン先生のように、息を吸うように自然に魔法を使う者など、見たことがないに違いない。


 「えっ?」「何だ?」「すごい…」反応は様々だ。スワン先生も、ルセルと同様、普段は極力、人前で魔法を使わずに生活している。しかし、今日は特別な日だ。出来るだけ派手に、出来るだけ華麗に、ここにいる人々が魅了されるような美しい魔法を見せつけよう。それが、スワン先生からリース王子への誕生日プレゼントである。


「リース殿下、十八歳のお誕生日、おめでとうございます」

 リース王子に向かって掛けられたスワン先生の声は、魔法で拡張され、パーティー会場全体に響いた。


「ありがとう」

 リース王子の声もまた、魔法で拡張され、パーティー会場全体に心地よく響く。


 どこからか響く王子の声に、会場中の人々が周囲を見渡し、何が起きたのか戸惑っている。

 蝋燭の灯りに照らされていた会場は一瞬で真っ暗になり、スワン先生とリース殿下だけが光に包まれたように明るく浮かび上がり、会場の最奥中央の高さ2メートル程の空中に静止していた。


 スワン先生が美しい笑みをたたえ、会場のみんなに語りかける。

「みなさんもご存じの通り、リース殿下には魔法の才があります。偉大なる我が国ファトムルーゼが誇る大魔導師、わたくし、スワン・シェリング・ウィンズとルセル・ガーシュウィン・ルキシアに次ぐ力をリース・トレイス・ファトムルーゼ王子殿下はお持ちなのです!今日は、ここで偉大なる魔法の力を、その恩恵を、みなさんに披露させていただきたいと思います。ぜひ、楽しいひと時をお過ごしください」


 そうして、スワン先生はルセルにスポットライトを当てた。


 ルセルは、こんな派手なことに自分を巻き込まないで欲しいと思ったが、リース王子の誕生日祝いであるし、魔力量から考えても、ルセルが協力するしかないと腹を括る。


 大勢の中から、ルセルだけが明るく浮かび上がる。


 何だ、この派手派手しい演出は・・・と気後れしつつ、スワン先生の誘いに乗ってルセルも空中に立つ。    

 ぱちんというスワン先生の指の音で、水滴のような光の粒が鎖状に繋がって、スワン先生の手から、会場の反対側に浮かび立つルセルの元に伸びる。

 ルセルは、スワン先生の作った光の粒の端を受け取り、完璧にコピーして、同じように鎖状に繋げて、四方八方に伸ばし、光の粒で会場を飾った。

 暗がりだった会場は、幻想的な光の粒で淡く照らし出された。


 再びスワン先生が指をぱちんと鳴らすと、会場の人々がそれぞれ、淡い色に包まれた。

「皆さん、同じ色や似た色の人とペアになり手を繋ぐと、体が少しだけ宙にうきます。驚くほど軽やかにステップやターンができるので、ぜひパートナーを見つけて踊って下さい」

 スワン先生が楽団に合図すると、軽やかな演舞曲が流れ始めた。

 スワン先生と打ち合わせていたのか、アゼリアとサムスが二人で踊りだす。二人はよく似た明るいクリーム色を纏い、空中でくるくると楽しそうである。


 魔法に不慣れなリース殿下の学友も、若さゆえのチャレンジ精神と好奇心で、自分と似た色のご令嬢を見つけダンスを申し込む。


 あちこちで、淡い色を纏ったペアが、空中で軽やかに踊り始めた。


 見ていると、色の差が大きいと踊り出しても足が床に着いたままだ。色が似ているほど、高く浮かぶらしい。

 空気中に発散される人体の水分か何かが色づくような魔法だろうか。体内の成分を色で表している?色が近いと浮力が増幅する原理が知りたい・・・日常で使わないような魔法を組合せて使っているのか。

 スワン先生の魔法を見る機会は滅多にないが、ルセルにない自由な発想が興味深い。


 ルセルは踊る人々を思わず眺めていたが、広間の一番離れた対面の空中に立っていたリース王子が、常と変わらぬ足取りで空中を歩き始めたことに気付いた。

 その足の向かう先は、自分だ。ルセルに向かって真っ直ぐ歩いて来る。


 それもそのはず、ルセルの目の前で足を止めたリース王子と、王子の前に立つルセルは、どう見ても同じ色だ。薄く明るい空の色だ。こんなに、ぴったり重なる色は、他にはない。


 スワン先生が故意に色を合わせたのか?いや、そうではないだろう。

 自分とリース王子の色はこれほどに近い。多分、だからこそ、リース王子の側は居心地が良かったのだ・・・ルセルは、そう納得した。

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