君の助手にはなれないけれど
私は彼女が大好きだ。
行く当てがなく、困り果てていた私を拾って、温かい寝床と美味しいご飯を与えてくれた。そして、私に優しく接してくれるのだ。彼女と一緒にいるだけで幸せで、気持ちが柔らかくなる。
彼女は命の恩人だ。彼女がいなかったら、今の私はなかっただろう。
そんな彼女は、毎日とても忙しそうにしていた。朝から晩まで部屋に籠もって、机に向かっている。必要なことなのは解るが、少し根を詰めすぎているような気がして、心配だった。
ある日、彼女の背中を見て私は思った。彼女の力になりたい、手助けをしたいと。
だから、私は彼女の傍について、自分にできることを探した。
……探した、のだが……コップを倒してお茶を零してしまったり、大切なメモを床に落として、その上隙間に入れてしまったり……やること成すこと上手くいかなくて、遂には部屋の外に追い出されてしまった。
私にできることはないのだろうか。閉め切られた扉を見上げて、しゅんと項垂れる。
私は彼女に助けてもらったのに、彼女を助けることはできないのだ。それはとても悲しくて、無力な自分に嫌気が差した。
「あれ、ずっとそんなところにいたの?」
暫くして部屋から出てきた彼女が驚いた顔をする。しかしすぐに笑顔を浮かべて、私の身体を抱き上げた。
「お仕事の邪魔はしちゃ駄目だよ。でも、貴女がいないとやっぱり淋しいな。部屋に入れてあげるから、大人しくしていてくれる?」
彼女の言葉を聞いて、私は目を見開いた。
それはきっと、私に与えてくれた大切な役割。助手らしいことはできないけれど、私はずっと彼女の傍にいようと決めた。
嬉しくなって、私は彼女に頭を擦り寄せて口を開いた。
「にゃあ」