7話 精霊の加護を持つ少女
少女を助けてから数時間が経過した
日が大分傾いてきて、日の光が当たらない洞窟の中は既に暗くなっていた
少し早いが夕食の準備をする。少女が目覚めた時に温かいものでもと思いスープを作る
アルカ村で貰った野菜と少女が寝てる間に龍の眼で調べて採取した体力がわずかだが回復する薬草、そして干し肉を鍋に入れ煮込む。洞窟の中にいい香りが広がる
「あとはこの子が目覚めるのを待つか・・・それにしてもまさか異種族の子だったとは」
助けるのに夢中で洞窟に寝かせるまで気づかなかったが少女の頭には犬のような耳があった
そして腰のあたりにはフワフワとした真っ白な尻尾が毛布からはみ出ていた
この世界に来て初めて異種族に出会った!とテンションが上がって興奮したが、事が事なので気持ちを鎮めて少女の看病につく
「それにしても綺麗な子だなぁ。僕と同い年か年下くらいかな?」
整った顔立ちでサラサラな銀の髪に透きとおる肌
褒め言葉でお人形さんみたいだとよく使われたりするがこの少女に相応しいといっても過言ではなかった
兎にも角にもこの子を安全な場所まで送り届けないとな
今頃両親が心配してるだろう 目を覚ましたら話を聞かないと
今後の事をどうするかと考えていたら、少女が目を覚ました
「んっ・・・ここは・・・?」
「目覚ましたかい?どこかまだ痛いところとかない?」
「ひっ・・・!」
目を覚ました少女に声をかけると驚いたようで後ろの壁に飛び退いた
「だ、だれ・・・?」
少女が恐る恐る聞いてくる。相当怯えているようだ やはりよほど怖い目にあったんだろう
「僕はリュウヤっていうんだ。川沿いを歩いていたらキミが倒れていたんでここまで運んできたんだ」
「・・・・・・」
僕の方をジーっと黙って見つめてくる。顔になんかついてるんだろうか?
しばらくして少女が口を開く
「そうでしたか。助けて頂いてありがとうございます」
「そっか、傷もちゃんと治ってるみたいで良かったよ。それで・・・あの・・・そこの服を着てもらえると助かるかな。悪いとは思ったんだけどキミの服濡れてたから・・・」
「えっ?・・・・!!!!!!」
さっき後ろに飛び退いたせいでかけていた毛布がはだけて、一糸まとわぬ姿になっていた。少女は顔を真っ赤にして目の前に落ちてた毛布を素早く取ってくるまる
「ごめん!濡れた服のままだと弱ってた体に悪いし風邪でも引いたらと思って・・・」
「いえ・・・着替えるので後ろ向いててもらえますか」
「僕がいると気になっちゃうだろうからちょっと外の様子でも見てくるよ・・・」
そう言って早々とその場から離れる。流石にあの場に居続けるのは気まずすぎる
洞窟を出て周辺の探索をする。なるべく人が通った跡残さないよう木の上を移動し少女を見つけた場所まで戻る
周辺を見回した感じ追手はまだ来てないようだ。もうすぐ夜になるから捜索も困難になるはずだ 一応あとでもう一度見に来よう
引き返し少女の元へと戻る。洞窟に入ると着替え終わった少女が座って待っていた
「僕の服ちょっと大きくて申し訳ないけど我慢してね」
「いえ十分です。ありがとうございます」
「じゃあご飯にしようか。口に合うといいんだけど」
スープを温め直し革袋からパンを取り出す。器にスープを入れて少女に渡す
「いただきます・・・フゥーフゥー、パクッ・・・美味しい・・・」
「良かった。多めに作ったからすきなだけ食べて」
一口、また一口とゆっくり口に運ぶ。一安心したのも束の間、突然少女が泣き出した
「ウッ・・・ウッ・・・グスッ」
「ど、どうしたの?なにか嫌いなものでもあった?」
「すいません・・・ホッっとしたら涙が・・・」
そうか・・・ここまでずっと張り詰めていた緊張の糸が切れたんだろう。しばらくして少女が泣き止んだので事の経緯を聞くことにした
「どうしてキミが倒れていたか聞いてもいいかな?」
「・・・追われてたんです。人間に捕まって牢馬車に入れられてたんですけど隙を見て逃げました。けど見つかってしまって・・・逃げた先が崖になってて捕まる位ならと飛び込んだんです。その後の記憶はなく気づいたらこの洞窟でリュウヤさんに助けてもらってました」
「どんな奴らだったか覚えてる?」
「馬車に乗ってる男は裕福そうな服を来ていました。あと周りに6人ほど護衛が居たんですけど冒険者ではなく恐らく盗賊だと思います。冒険者ならタグを首から下げてるけどそれがなかったので・・・あと魔法使いが1人いました」
牢馬車に裕福そうな男・・・奴隷商人かなにかか?でその他が盗賊か・・・
人数がこっちより多い上に魔法使いもいるとなると戦闘は避けたほうがいいかもしれないな
相手のステータス次第だけど真正面から見てもし格上だったら逃げ切れないかもしれない
なので偵察時になんとか見つけて気づかれないように視るのがベストだな
「なるほど、ありがとう。それで森を抜けた後の話なんだけど、キミが住んでる場所まで責任もって連れて行くよ。どこら辺かな?」
こんな怖い目にあってきっと早く帰って両親に会いたいに違いない
そう思って聞いたら少女の顔が暗くなってフルフルと震えだし再び泣き始めてしまった
すすり泣きながら少女が話し始めてくれた
「お父さんも・・・お母さんも村の皆も全員・・・殺されました・・・」
「・・・ごめん。辛いこと聞いちゃったね」
「いえ・・・気にしないで下さい」
「キミを追ってる奴らの仕業?」
たった6人でそんな事ができるのなら相当な強さだ
だけどそれならそもそもこの子はここまで逃げて来れなかっただろう。となると他にも仲間がいるのか?
「いえ、村を襲ったのはインビジブル・サーペントという大型の魔物です。普段は自分の縄張りでしか生活しない魔物でこちらから近づかなければ襲われないんですが何故か遠く離れてる私達の村にやってきて・・・姿を消して奇襲でみんなを・・・私はちょうどその頃山菜を取りに行ってて居なかったので助かったんですけど先程話した人間達が現れて捕まったんです」
必死に泣くのを我慢しながら自分達を襲った魔物について話してくれた
タイミングよく盗賊達が現れたのが気になるな。そいつらが何かしたのかもしれない
考えても仕方ない。今はこの子をどうするかを決めよう
「そうか。じゃあどうしようか・・・どこかアテはある?」
「ないですね・・・匿ってくれるほど親しい人はいません・・・」
「うーん、じゃあどうしよかぁ・・・」
「あの・・・ついていってもいいですか?」
「あ、うん、それは勿論。責任もって安全な所まで連れて行くよ」
少女がもじもじしながらこちらを見て話を続けた
「いえ、そうではなくて・・・リュウヤさんのお仲間に入れてもらうことはできませんか?」
予想外の言葉が返ってきた。戸惑いながらも言葉を返す
「えっと、どうして仲間に?」
「私にはもう帰る場所なんてないしリュウヤさんは悪い人じゃないのは分かりました・・・それに私と同じですし」
「同じ?同じって何が?」
「リュウヤさんも加護を持ってますよね?」
加護を持っている事を話してないはずの少女が僕を加護持ちと言い当てて驚いた
「もってことはキミも加護を持っているの?」
「はい、私は精霊の加護を受けているんです」
まさか世界に3人しかいない加護持ちの1人にこんなに早く会えるとはな
「まさかこんなところで会うことになるなんて思っても見なかったよ。でもなんで僕が加護を持ってるって分かったの?」
「私の種族は”妖狐”なんですがその中でも私は希少種と言われているらしいです。妖狐は基本金の髪で生まれてきますが希少種は私のように銀の髪なんです。そして希少種は他より魔力を多く持っていて相手のオーラを見ることが出来るんです」
「オーラを見ることがねぇ・・・あ!さっきずっと僕のこと見てたのは」
「はい、リュウヤさんのオーラを見させてもらいました。ある程度の感情を読み取れて悪意は感じられませんでしたし、加護を持ってる私と同じ雰囲気をしていたのでもしかしてと思って」
「うん、その通り。僕は龍人で龍の加護を受けてるんだ」
僕の龍の眼と似た感じなのかな?僕のはステータスを見る事ができてこの子のは相手の感情等を読み取る事ができるのか
「やっぱりそうなんですね。あの・・・荷物持ちでもなんでもしますのでどうかお願いします」
弱々しい声で頭を下げてこちらにお願いしてきた
精霊の加護があるなら一緒に戦っても危険はないかな?
それに身寄りのない今のこの子を放っておくわけにはいかないよな
「分かった!僕なんかで良ければ喜んで。これからよろしくね」
「ありがとうございます!精一杯頑張ります!」
こうしてこの世界での初めての仲間が出来た
しかも精霊の加護持ちで非の打ち所のないケモ耳美少女だ
「そういえばまだ名前聞いてなかったね」
「そうでしたね。私の名前はアイシャと言います」
「よろしくねアイシャさん。それともう仲間なんだから敬語はいらないよ」
「これは癖みたいなものでして・・・変わりにリュウヤ君って呼ばせてもらいますね。私のことは呼び捨てでいいですよ」
「分かったよアイシャ。じゃあ今日は病み上がりだからゆっくり休んで 明日夜明け前にここを出よう」
アイシャは頷くと食事を終えて毛布を被りしばらくして眠りについた
僕も少し休んだらまた偵察に行くとしよう
明日19時頃から投稿しますので読んでいただけると嬉しいです!




