51話 エルトピア迷宮攻略④
3階層へと続く扉の前で取り残されたアイシャ、クロエ、ガーフが立ち尽くしていた
リュウヤ、シロエが落ちた穴は落下後、すぐ閉じられてしまい助けることが叶わなかった
こういう事態を想定していなかったので食料の大半はアイシャの"空間収納"に入れてある状態だ
1日、2日は大丈夫だろうが2人がどこに落ちていったかも分からない。早く探しに行かなくては
「姉さんとリュウヤが・・・」
クロエがいつになく沈んだ表情で塞ぎ込んでしまっている
(クロエちゃん・・・駄目だ!私がしっかりしないと!)
落ち込んでいる場合ではないとアイシャは自分を鼓舞し、クロエも励まそうとする
「クロエちゃん大丈夫ですよ!きっと2人は今頃私達を探していると思います。だから私達も探しに行きましょう!」
「でも、どうやって・・・」
「ワウッ!」
クロエの問いかけにガーフが反応する
「ガーフ君、どうしました?」
すると地面に鼻を近づけ匂いを嗅ぎ始めた
もしかして2人の匂いを嗅いでいるのだろうか
「バウッバウッ!」
「2人の場所が分かるんですか?」
アイシャの問いかけにガーフは頷く
私達には2人を探し出す手立てはない
ガーフを信じて背中に乗り、クロエの手を引き前に座らせる
「お願いします!」
「バウッ!」
ガーフは3階層に続く道を勢いよく駆け始めた
途中魔物と遭遇してもそれ等を全て無視して最短距離を走っていく
2人の匂いを辿っているお陰か、別れ道があっても全く迷いを見せない
「これならきっとすぐ見つけられますよクロエちゃん」
「うん・・・」
未だにクロエの元気が戻らない
どうにか元気づけられないか・・・
考えているとクロエが先に口を開いた
「私と姉さんはさ、どんな時も一緒だったんだ。寝る時も水浴びの時もずっと2人で・・・私が虐められてる時だって割って入ってきてさ。姉さんは私程嫌われてなかったから上手くやり過ごせば自分は怪我を負う事もないのにな」
「クロエちゃん・・・」
いつになく饒舌に淡々と自分の過去を話すクロエ
その姿からは普段の強気で明るい姿は感じられなかった
クロエが続ける
「だからこんな離れ離れになる事なんて初めてで・・・もし姉さんがいなくなったら私は1人ぼっちになってしまうんじゃないかって考えてしまって・・・それが怖くて・・・」
(その気持ち分かります。私も大好きな人がいなくなったらと考えると・・・でも・・・)
「ていっ!」
アイシャがクロエの頭を小突く
予期せぬ行動に驚くクロエ
「あいたっ!な、何をするんだアイシャ」
「シロエちゃんはクロエちゃんを1人になんかしませんよ。それは私達も同じです」
「アイシャ・・・」
「クロエちゃんは私達の大切な仲間です。まだ頼りないかもしれないですけどクロエちゃんを1人ぼっちにすることなんて絶対しませんから」
小突いた場所を今度は優しく撫でる
本当は抱き締めてあげたいところだがガーフに乗ってる今はこれが精一杯だ
クロエの瞳が潤む
涙を見せまいと前を向いて服で拭い、その後にいつもの笑顔を見せてくれた
「ごめんな。弱気になってた!もう大丈夫だ!さぁ姉さん達の元へ急ぐのだ!」
やれやれといった顔でクロエを見るガーフ
良かった。いつものクロエに戻ったようだ
やはりその元気一杯な笑顔が一番似合う
3人はリュウヤ、シロエを捜し出すべく迷宮を駆け抜けていく
長いこと一本道を歩いた。上がったり下がったりを繰り返してようやく開けた場所へとやってきた僕とシロエは現在地図を確認している
どうやら僕等は一気に5階層まで落ちてきてしまったようで、ここは安全地帯のようだ
「これからどうしましょうか」
「アイシャ達が落とし穴に嵌ってなかったらきっと上の階層にいると思うから上に登って行った方がいいかも。それが皆と合流できる一番高い可能性だと思う」
「そうですね。探す手段がない以上それが一番だと思います」
そういう訳で僕等は上の階層目指し再び歩き出した
開けた場所からまた一本道が続いたが、今度は数分で抜けられた
「ここは・・・森?それに明るい」
一本道を抜けた先の眼下には広大な森が姿を現した
閉鎖的な空間にいたのもあるかもしれないが、ここは今までの階層の中で一番広いかもしれない
しかしこんな迷宮の深くでまさかこんな光景を見ることができるとは思ってもいなかった
するとシロエが何か見つけたようで袖を引いてくる
「リュウヤさん、上」
シロエが指差す方を見るとそこには目を背けたくなるほど眩しい巨大な結晶があった
よく見ると同じような大きさの結晶がいくつもある
なるほど。真ん中の光る結晶の光が反射してこれだけ明るい空間を生み出しているのか
森の様子を遠覗を使って確認する
当然だがこの森にも魔物は沢山潜んでいるようだ
「ん?あれは・・・あった!扉だ!」
遠覗でもなんとか確認できる位遠くにあるが見つけられたのは僥倖だ
ただあれが下へと続く扉の可能性もある
他に扉はないか見渡すがそれらしき物は確認できな買ったので一先ずあそこを目指すことにした
シロエを背負って再び"飛翔"で崖を降りていく
下に到着し周りを見ると草木が鬱蒼と茂っていた
普段ならば鬱陶しいところだが、今は身を隠すのにもってこいだ
集団で動いている魔物は避けつつ、単独行動している魔物を銃の練習台にして扉へと進んでいくことにした
探知網を使用しながら注意して進む
すると少し進んだところで一体の魔物を確認した
以前も戦ったことのあるラッシュボアだ
こちらにはまだ気づいていないようだし、あれ位ならシロエの練習台にちょうどいいだろう
「シロエ、右斜め前方に単独で行動してる魔物がいる。狙える?」
「や、やってみます」
そう言うとシロエは音もなく木の上に登って魔物を狙いやすい場所へと移動する
流石ずっと森で暮らしていただけあって見事な身のこなしだ
慎重に狙いを定め、引き金を引いた
シロエが撃った銃弾はラッシュボアの眉間に見事に命中した
しかし撃ち抜く事までは叶わず、怯んだだけで大したダメージは入らなかったようだ
対するラッシュボアは何が起こったのか分からず混乱して暴れている
暴れている様子を見たシロエは狙いを変えて、2射目3射目を胴体に当てていく
5射目に差し掛かったところでラッシュボアは逃走を図ろうとしたので頃合いかと見切りをつけて僕が最後に一撃を入れて止めをさした
「お疲れ。初の実戦にしては良かったんじゃない?全弾命中してたし」
「そうですね。精度は申し分ないですがやっぱり威力が心許ないので改良の余地がありますね」
「分かった。僕も何か思いついたら教えるよ」
それからも単独で行動している魔物を見つけては練習台にし、その度に改善点を挙げて銃を改良していった
魔力の流す量を変えて撃ち出す威力を上げたり、銃身や口径を弄ったりと色々な事を試した
ほぼゼロからの知識で作り出すのは中々大変だが徐々に良くなっていくのを見るのは楽しかった
そして新たな安全地帯を見つけた僕等はそこで仮眠をとることにした
ここの安全地帯は木の上にあり、以前ここに来た人が作ったのか簡易的なツリーハウスが建てられていた
そこを借りてアイテム袋から食事と寝袋を取り出して並べる
「今日一日で大分良くなったんじゃない?この分なら明日には完成しそうだね」
「そうですね・・・」
どこか上の空で思い悩んでいるように見えるシロエ。大体の予想はつく
「クロエの事が心配?」
「はい・・・クロエは小さい頃から凄く明るい子なんですが、私が離れてしまうと途端に弱気になって塞ぎ込んでしまうんです。だから私がついていないと・・・クロエにはいつも笑っていてほしいんです」
「クロエの事が大好きなんだね」
「たった1人の妹ですから」
僕もそうだ。アイシャにはいつも笑っていてほしい
以前からそれは変わらないが、今となってはその想いはより強くなっている
そこには勿論シロエ、クロエ、ガーフ。皆が入っている
早く合流出来るといいな
2、3時間程仮眠をし、僕等は再び扉を目指し歩き始めた
その間もまたシロエの練習に付き合い、ようやく納得のいく銃が完成した
始め数発撃っても倒せず逃しかけたラッシュボアを、今では一発で仕留めることが出来る程だ
「出来ました!完成です!」
「おめでとうシロエ」
銃も色々弄り最初の原型は最早無くなっていたが精度、威力共にこの形が現時点で一番いい
そして弾の方にも細工をしている
精度を保てる限界まで先端を鋭くし、その弾にクロエの武器にも使われている"鋭利化"の魔法を付与
そしてそれを僕のアイテム袋にしまう
付与効果は時間経過で切れてしまうが、このアイテム袋に入れておけば付与をかけた直後の状態で維持される事が分かったので、僕のアイテム袋はシロエに渡す事に決めた
これなら戦闘中にいちいち付与する手間を省く事が出来るしMPの温存も出来て一石二鳥だ
「ありがとうございます。これで私も戦えます。リュウヤさんのお陰です」
「僕は提案しただけでここまでのものになったのはシロエが頑張ったからだよ」
「いえ、リュウヤさんの言葉がなかったら今もまだ悩んでいたと思います。それでお願いがあるんですが・・・」
「ん?何?」
「名前をつけてくれませんか?2人で作り上げたこの武器に名前をつけてあげたいんです」
(武器の名前かぁ、難しいなぁ。うーん・・・)
シロエが持つ銃を見直す
あれから他の鉱石も色々混ぜたりしたからか、鋼の色をしていた銃は光沢のある黒へと変色していた
上にある結晶の光がキラキラと反射していて、まるで夜景を見ているようだった
そんな銃を見て1つの名前を思いついた
「白夜なんてどうかな?」
今見て感じたものとシロエが使うからという安易なひらめきだがどうだろうか・・・
「白夜・・・いいですね。この武器の名前は白夜にします」
こうして2人で完成させた銃に白夜と命名した
まぁ本来の意味とは違うが気に入って貰えたのだから気にすることではない
こうして新たな攻撃手段を得た僕等はあと一息まで来ている扉を目指し再び歩き出した
読んでいただきありがとうございます
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