46話 修行前の休息ー パーティ ー
海でひとしきり遊んだ僕等はびしょ濡れになってしまったので、設置されているシャワールームを借りて汚れを綺麗に落とした
部屋に戻るとフローラさんが僕等の帰りを待っていた
周りには王宮でも顔を合わせた専属のメイドさん達がいつの間にか待機しており、その横には大量の服が用意されている
「今から皆さんにはお着替えをしてもらいまーす♪」
フローラさんの突然の発言にどういう事なのか質問しようとしたが、遮られるように僕の分を渡されたので仕方なく隣の部屋に移動しササッと着替えを済ませ、アイシャ達が着替え終えるの待った
隣からは黄色い声が聞こえてくる
3人はフローラさんのいいおもちゃになっているようだ・・・
「ていうかなんでこの服なんだろう?」
用意された服はタキシードだ
こんな畏まった服装で・・・これから何があるんだろうか?
「リュウヤさんもう出てきて大丈夫ですよぉ♪」
着替えが終わって数十分後、ようやくフローラさんから許可が下りたのでアイシャ達の元に行く
扉を開けると目の前にはバッチリとお洒落をしたシロエとクロエがいた
「リュウヤ!どうだどうだ?」
「似合ってるでしょうか?」
いつもと違う雰囲気でよく見ると薄く化粧もしている
黒と白のドレスがよく似合っていて可愛らしい
「2人ともよく似合っているよ」
「ありがとうございます。こんな綺麗なお洋服初めてで・・・」
「だけどこの服、股の所がスースーして落ち着かないぞ」
着ているドレスの裾を持ち上げて見せてくる
クロエはもう少し女性らしさを学んでくれればその姿がより様になるんだけどなぁ・・・
「クロエちゃん、女の子がそんなはしたない言葉使ってはいけませんよ」
後ろからフローラさんがクロエに注意する
「フローラさん、2人にお化粧までしてくたみたいですけど何処か行くんですか?」
「ふふっ、それはお楽しみです」
フローラさんはニヤニヤしている
僕等に何か隠しているのは間違いないな
そういえばアイシャの姿が見えない。まだ終わってないんだろうか
「アイシャはまだ支度中ですか?」
「ちょっと待って下さいね。アイシャさーん」
仕切っていたカーテンが開けられたその先にはアイシャがいた
シンプルな薄水色のドレスだがとても良く似合っている
長い髪は束ねられていて、化粧を施したことによって普段よりグッと大人びており胸が高鳴った
「アイシャ綺麗だなぁ。お姫様みたいだ」
「本当。よく似合っていますよ」
その姿に見惚れてしまい釘付けになった
気づいた頃には顔が紅潮していたので見せるのが恥ずかしくなって思わず顔を逸らしてしまう
「リュウヤ君。ど、どうでしょうか・・・」
「とても良く似合ってる。アイシャ・・・凄く綺麗だよ」
「そ、そうですか。良かったです・・・えへへ♪」
今度はアイシャが真っ赤になりその顔を手で覆う
けどその手の隙間からは笑みがこぼれていて耳と尻尾が同時に激しく動く
とても喜んでいるのが一目で分かる
こんなキザなセリフを言う日が自分の人生にやってくるなんて夢にも思わなかったなぁ・・・
「それじゃあ準備も整った事ですし行きましょうか。ついてきて下さい」
言われるがままフローラさんのあとをついて行く
少し進んだ所で後ろを歩くクロエが遅れているのが見えた
「こ、この靴凄く歩きづらいぞ・・・」
ドレスに合わせて靴もヒールがあるものを履いている
自然で育ってきたクロエにこういった靴は履く機会がなかっただろうから歩くのに苦戦しているようだ
「だらしないわねクロエ。こういう風に歩けばいいのよ・・・・・へぶっ!」
手本を見せるようにシロエが歩いて見せたが、当然シロエも履き慣れていないので段差も何も無い所で躓いて転んでしまった
「なっはっは!姉さんも人の事言えないじゃないか!ぐえっ!」
転んだシロエを見てクロエが仰け反って笑うが、そのせいでバランスを崩してクロエも勢いよく転ぶ
「大丈夫?ほら、ここは広いからフローラさんについていかないと迷っちゃうよ」
「すみません。ありがとうございます」
「いつつ・・・もうこれ脱ぎたいぞ」
靴を脱ぎたがるクロエをなんとか宥めながらついていくと大きな扉の前までやってきた
メイドの方達が扉を開けるとそこは宴会等を行う会場の様で、テーブルの上にはたくさんの料理が用意されていた
「皆さんを歓迎する催しをささやかではありますけど急遽お願いして開かせてもらいました」
「こ、これがささやかですか・・・」
フローラさんからすればそうなのかもしれないが平民の僕等からしたら結構な規模だぞ・・・
会場にいる人達も場所が場所なので当然ではあるが身分の高そうな人達だ
これが僕等の為に開かれたものだと聞いてしまうと少し萎縮してしまう
「安心して下さい。私の親しい方だけを招待しましたし、多少の無礼は笑って許してくれますからそこまで畏まらなくても大丈夫ですよ」
「は、はぁ・・・」
とは言ってもどうしても気を遣ってしまうのは仕方のない事だろう
席に座って一度落ち着こうとすると、1人の女性がこちらに気づいて近づいてくるのが見え、そしてこちらに声をかけてきた
「お義姉様。この度はご招待頂き感謝致しますわ」
「メアリー。こちらこそ急な招待にも関わらず来てくれてありがとう」
艷やかな長い黒髪をなびかせてやってきたメアリーという女性はフローラさんと親しげに話している
どう言葉に表せばいいか、他の人とは違う気品を感じた
「あの、フローラさん。そちらの方は?」
「こちらはメアリー・アルブレヒト殿下。私の夫、陛下の妹君ですよ」
「お初にお目にかかりますわ。皆様の事はお義姉様からよくお話で聞かせて頂いております」
なんと目の前にいるのはこの国の王の妹だという
僕はぎこちない所作で精一杯の敬意を払おうと膝をつこうとするが、それを殿下が止める
「その様に畏まらなくてもよろしいですよ。リュウヤさん、ですよね。ここは非公式の場なので気を楽にして下さい」
「しかし・・・」
「お連れの方も楽しんで下さっているようですしどうかリュウヤさんも楽しんで下さいませ」
「リュウヤー!ここの料理どれも凄く美味いぞー!」
クロエがいつの間にか料理が並べられているテーブルに座って1人食事にありついていた
この場でも普段と変わらない姿を見せるクロエを見て少し肩の力が抜けたのを感じた
メアリー殿下の方へと向き直りお辞儀をする
「感謝致します殿下。ご厚意に甘えさせて頂きます」
「はい。あ、それとそちらはアイシャさんですよね?」
「は、はい」
「あなたとはお話がしたかったんですの。お食事が済んだ後にでもゆっくり・・・と」
そう言うメアリー殿下はアイシャの尻尾に目をやる
この目と同じ目をする人を知っている。殿下の隣りにいるフローラさんがアイシャの尻尾を狙っている時の目だ
え?親しい人達ってそういう関係でって意味?
アイシャ・・・無事に帰ってきてくれ
クロエの事は一先ずシロエに任せ、僕とアイシャはここに招待されてやってきた方達に挨拶をして回った
メアリー殿下はあぁ言ってくれたが、見ず知らずの僕等を歓迎するという名目で来てくれた人達に対して挨拶もなしというのは失礼というものだろう
始めの方は緊張はしたもののフローラさんの親しい方達というだけあって皆優しく応じてくれたので途中からは気持ちを楽にして接する事ができた
フローラさんがどういう風に話したか分からないが、僕等の周りには人だかりができて遠回しに縁談を持ちかけてくる人もちらほらといた
トリゲン伯爵もそうだがこの世界の貴族の人達は僕が思っているよりずっと平民との垣根が低い気がする
話で聞いた限りでは貴族主義の人もいるようだが・・・人の出会いには恵まれているのか、未だにそういう人は見かけない
しかし貴族になると面倒事が増えるのも確かだろう。アイシャもそういうしがらみは好むところではない
縁談の話はやんわりと断り、一通り挨拶をし終えた僕等はシロエ達の元に戻り一緒に食事を楽しんだ
クロエの豪快な食べっぷりに周囲の人達が驚いていたのは言うまでもない
そして食事を終えた後はアイシャがフローラさんとメアリー殿下に連れられ、暫くして帰ってきた2人は満足げな顔をしていたがアイシャは疲れきっていた
こうして僕等の歓迎会は滞りなく?終わりを迎え、部屋に戻り明日からの修行に備えて眠りについた
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次回更新は水曜日19時です
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