45話 修行前の休息ー海岸にてー
オルフェウスさんとの手合わせで瞬殺された僕は、言われた通り10分程経過したら動けるようになった
「大丈夫ですかリュウヤ君」
「いやぁ一瞬でやられちゃった。何されたかも分からなくて気づいたら空を見上げてたよ」
「私も何が起こったのかさっぱりでした。凄いですね」
外側から見ていたアイシャにも僕がどのようにして倒されたか分からなかったようだ
魔法やスキルはあの時使用禁止されていたから恐らく体術の一種なんだろう
その場から立ち上がり周囲を見渡すがオルフェウスさんは既に訓練場から姿を消していた
僕は起き上がりアルさんに問いかける
「オルフェウスさんはどこへ行ったんですか?」
「師匠は兵士訓練の方へと行かれました。元々そちらの予定があったので今日は顔合わせだけしてもらおうと思っていたのですが・・・師匠は言い出すと聞かない方なので止められないのです。申し訳ありません」
「いえ、この身で実感出来て良かったです。オルフェウスさんならきっと僕達を強くしてくれると確信しました」
「今日は移動もあって疲れたでしょう。お部屋を用意してあるのでご案内します」
どうやら僕等の部屋まで用意してくれているらしい
アルさんに案内されまた宮殿の方まで戻り来客用の部屋へとやってきた
「こちらが皆さんのお部屋になります。シロエさんとクロエさんのベッドも後ほどご用意しますね」
アルさんが案内してくれた部屋は僕等が使う分には十分すぎる広さでだった
宮殿の外観もそうだったが部屋の中もしっかり拘っていて、調度品1つとっても素人目でも分かるような高級な物が使われている
そして上には豪華なシャンデリアが吊り下げられており、所々に宝石が使われていて煌々としている
しかし皆が注目していたのは拘られたインテリア等ではなく、外から見える景観であった
バルコニーの方へ移動するとそこからは広大な海が見えた
「リュウヤ君!あれが海ですか!凄いですね!」
「うん、凄く綺麗だね」
「あれが海・・・本当に先が見えませんね。あの先には何があるんでしょう」
「私は早く泳ぎたいぞー!」
白い砂浜に透き通っていて下の方まで見えそうなコバルトブルーの海
ここまで綺麗な海を僕も実際に見た事が無かったので思わず見入ってしまう
青く澄んだ海は見ているだけで穏やかな気持ちになっていく
「アルさん、こんないい部屋僕達が使ってしまっていいんでしょうか?」
「勿論です。こちらはフローラ様が皆様にとご用意したものですので」
フローラさんが用意してくれたのか
会う事が出来たらお礼を言わなくちゃいけないな
そんな事を考えていたらこちらに近づいてくる人の気配がした
「アイシャさーん!会いたかったわー!」
「わっぷ!フ、フローラさん!お久しぶりです」
久々の再会に喜ぶフローラさんはアイシャに勢いよく抱きつく
そしてすかさず後ろに手を回し尻尾をまさぐり始めた
「ふにゃっ!?」
「あぁ・・・この手触り。何度触ってもたまらないわぁ・・・」
「そ、そこは・・・駄目で・・・んっ・・・」
2週間程しか経ってないがフローラさんのモフり欲は我慢の限界だったみたいで、それを発散するかの様に撫で回している
一通り満足するまで撫でるとようやくシロエとクロエの存在に気づいたようだ
アイシャは自分の尻尾を抱えピクピクしている・・・
「ふぅ・・・あら、その子達は?」
「お2人は道中でリュウヤさんのお仲間になった方達だそうです」
「シロエです。よろしくお願いします」
「クロエだ。よろしく・・・わわっ!」
クロエの挨拶が終わる前にフローラさんが今度は2人に抱きついた
「か、可愛い~!尻尾はないけどぷにぷになお肌。この耳の形はエルフね。お顔がそっくりという事は姉妹かしら?こんな可愛い子達なら大歓迎よ!」
「な、なんだ!この女は!」
「苦しい・・・」
2人が抱擁から逃れようとするが思いの外フローラさんの力が強く逃してはくれなかった
そこに仕方ないとばかりにアルさんが割って入る
「フローラ様、それくらいにして差し上げてください。お2人が苦しそうですよ」
「あら、ごめんなさい。とても可愛いからつい」
アルさんが止めに入りようやくフローラさんが2人を離す
これから2人もアイシャの様に可愛がられてしまう未来が容易に想像できた
ようやく落ち着いたところで僕はフローラさんに頭を下げてお礼を言った
「フローラさん。今回は僕達にこんな立派部屋を用意してくれてありがとうございました」
「いいんですよぉ。ご希望でしたらもっと広いお部屋も用意できますよ。なんでしたら皆揃って私の部屋に・・・」
「いいえ。それは遠慮しておきます。この部屋を有り難く使わせて頂きます」
僕はフローラさんの誘いを間髪入れずに断る
フローラさんの部屋になったらきっと3人が大変な目に遭ってしまう
「そういえばフローラ様、ここにいるということは本日の業務は済まされたんですよね?」
「勿論よ!アイシャさん達が来たという報告を聞かされたのでそれはもう死にものぐるいで終わらせてきたわよ」
どうだ、と言わんばかりに胸を張ってアルさんに言い切る
そんなフローラさんを見てアルさんは溜息をつく
「はぁ・・・何時もそうして下さると大変有難いのですがね・・・」
「それは無理ね!」
またしても言い切るフローラさん
こうして見ているとこの人に女王が務まっているのか心配に思えてくるな・・・無論いい人なのは間違いないんだろうけど
フローラさんがこちらに向き直り口を開いた
「皆さんこの後の予定はないんですよね?でしたらお散歩でもしませんか。あちらの砂浜まで」
「おー!行きたいぞー!」
「リュウヤ君、私も目の前で海を見てみたいです」
「そうだね。折角だし行こっか」
フローラさんの提案で僕等は海岸付近まで散歩することになりついていくことに
アルさんは業務に戻らなくてはいけないとのことだったので散歩兼護衛も含まれることとなった
宮殿から海岸に続く通路があるらしく、階段を下った先にある扉を開けると海岸に出てきた
「ここは一部の人しか入れないプライベートビーチなんです。私のお気に入り♪」
確かに周辺は崖に覆われていてここなら人の目を気にせず羽を伸ばすことが出来るだろう
上から見る景色も良かったが海岸から見る海は一層透き通って見えた
波の音が心地よく心が安らいでいく
「おー!海だー!でっかいぞー!」
「あ、待ちなさいクロエ!服が濡れちゃうでしょ」
目の前海を見てテンションが上がったのか。海に突撃するクロエ
注意しながらもクロエに続くシロエ
季節は5月半ば。まだ海に入るには少し早いがそんな事を気にもずはしゃぎ回っている
服をあんなに濡らして帰りどうするんだ・・・
そんなクロエを見て隣でソワソワしているアイシャ
どうやら彼女も海に行きたいようだ
「アイシャも行ってくれば?足を入れるくらいだったら濡れないでしょ」
「そ、そうですかね。じゃあ少しだけ・・・リュウヤ君は行かないんですか?」
「僕はガーフとここで眺めてるよ」
ガーフもお風呂とかは好んで入るが海の潮気が得意ではないようで砂浜の方で寛いでいた
「・・・・えいっ!」
「うわっ、ちょ、アイシャ?」
腕を掴まれ海へと引き込まれる
靴を脱いで素足の状態だったので冷たい海水が体に染みる
「折角来たんですから一緒に楽しみましょう!」
そう言うとクロエ達がいる方まで引っ張っていく
ここまで来たらと3人に釣られて僕も目一杯遊ぶことにした
個人的には海で遊ぶより楽しく遊んでいるアイシャ達を眺めていたいところだったが・・・3人の楽しそうな顔を見ているとこういうのも悪くないなと思う
「青春ねぇ♪」
そう呟きながら海で遊ぶ姿を悠々と眺めるフローラさん
僕等は日が沈むまで初めての海を堪能した
読んでいただきありがとうございます
次回更新は月曜日19時です
皆さん良いお年を!来年も「異世界龍人記」をどうかよろしくお願いします




