3話 村長のお手伝い
丘を下り少し歩くと小麦畑が見えてきた
日が暮れてきているので人は見当たらず、揺らめく小麦の擦れる音が辺りに響く
数時間かけてようやくアルカ村に到着し門の前にたどり着く。幸いまだ門は閉まっていなかったのでそのまま村へと入る
「さて、泊まれる場所がないか聞いてみるか。この時間だしみんな夕飯の準備で家の中にいるのかなぁ・・・っと、いたいた。すいませーん」
「ん?こんな時間にこの村に人が来るなんて珍しいな どうしたんだ坊主」
30~40代位であろう男性がこちらの呼びかけに応じてくれた
「えっと色んな所を巡って旅をしてるものなんですが、今晩泊まる宿を探してまして どこかいい場所ありますか?」
「坊主1人で旅してるのか?大分若そうに見えるんだが・・・あぁそうそうこの村に宿はないんだ。泊まれるとしたら村長の家くらいかな、聞いてみないと分からないが。生憎この村には滅多に人が来ないもんでな、旅人や冒険者を泊めるような場所を作ってないんだ」
「そうなんですね。でもいざという時困りませんか? 魔物とかに襲われた時冒険者を迎えられる施設があったほうが何かと便利かと思いますが」
「うーん、そういった魔物は見かけないしな。坊主もここに来るまで魔物に遭遇したと思うがこの辺りで出るのは一角ウサギくらいなもんさ」
あのウサギの名前一角ウサギで合ってるんだ・・・ 同じ名前つけた僕が言うのもなんだけど安直・・・まぁ分かりやすい名前のほうが認知しやすいか。そんな事を考えながら男の話を聞く
「それにこの村には剣が扱える者が3人程いるからな。危険なんてそうそうありゃしないよ」
「そうでしたか、それは失礼しました。では村長さんのお家に伺おうと思うんですがどちらにありますか?」
「村長の家はあの突き当たり道を右に曲がるとすぐ見えるぞ。この村で一番大きいからすぐわかるはずだ」
「分かりました。ありがとうございます」
そうお礼を言うと男は手を振って去っていく。異世界に来て初めて人と話したけど普通に通じたな
村の前に置かれていた看板の文字もちゃんと読むことが出来た。問題は書く方だな・・・これから少しずつ勉強していかないとな
中年男性が教えてくれた通り突き当たりの道を曲がると他の家より一回りか二回り程大きい家が見えてきた。あれが村長の家なんだろう
家に向かって歩き出し扉の前に立つ。部屋の明かりが点いているので人はいるようだ 扉を叩き少しすると自分より少し年上くらいの黒髪の女性が扉を開けてくれた
「はいはーい今開けます・・・あら、見慣れない顔ね。どちら様?」
「すみません先程この村に着いた旅の者なんですが、宿がなくこちらなら泊めてくれるかもと聞いて伺ったのですが」
「あら〜そうだったのね。空き部屋もあるし家でよければどうぞ使って下さいな。さ、入って入って」
「ありがとうございます。お邪魔します」
よかった! 意外とすんなり受け入れてくれ助かった。とりあえず宿は確保したしあとはこの辺りの情報を聞けるいいな
奥に進むとちょうど食事の最中だったのだろうか、料理が並べられていてそこには中年だが筋肉質な男性とスラッとした女性が座っていた
「ん?サヤ、その少年は?」
「お父さん、この人は旅の方で泊まる場所を探していたんですって。だから家に泊めてあげようと思うんだけど」
「旅人?見たところ少年1人のようだがその若さで1人旅とは珍しいな。家で良ければ泊まってっていってくれ。俺の名前はダン、嫁はライラだ」
「ありがとうございます。僕の名前は・・・リュウヤです」
こちらで名乗る名前を考えていなかった・・・特に思いつかなかったのでこちらでも前世と同じ名前を名乗ることにした
「リュウヤ君か よろしく。母さん、もう一人分料理を追加してくれ」
「はぁい。なにもないところだけどゆっくりしていってねぇ」
「すいません、ご馳走になります。あ、そうだお金・・・」
「ははは、お金なんていらないよ。子供からお金取るほど困ってないから安心しなさい」
「いやでも、泊めてもらうの上に夕飯までご馳走になって支払わないのは・・・そうだ何か手伝えることはないですか?」
「うーんそうだなぁ。あ、じゃあ明日ちょっと手伝ってもらおうかな 内容は明日話すとして一先ず今日はゆっくり休むといい」
「分かりました。お言葉に甘えさせてもらいます」
よかった。なんの対価も支払わないのは気持ち悪いからな 明日の手伝いで宿泊代分はしっかり働かないとな
少ししてライラさんが僕の分の料理を運んできてくれた。ここに来るまでの間口に入れたのは水だけだったのでこの世界の料理を食べるのは初めてだ
目の前に置かれたのはパンにサラダ、たくさんの野菜が入ったスープにメインは・・・これは豚肉かな?しょうが焼きみたいないい匂いがする。どれも美味しそうだ
「おまたせ、それではいただきましょうか」
「ありがとうございます いただきます」
スプーンを取りまずはスープをいただく。優しい味で野菜の甘味が口に広がりホッとする。パンはふわふわ、サラダは新鮮でメインのステーキも口に入れた瞬間肉汁が溢れ、それが食欲を刺激し更に食が進む。異世界での初の食事は大満足と言えるものだった
「いやぁどれも本当に美味しかったです!ご馳走さまでした!」
「ふふ、お粗末さま。お口にあったようで良かったわ」
「うんうん、いい食べっぷりで気持ちよかったぞ。そうだ部屋なんだが二階の階段上がって左端の部屋を使ってくれ」
「分かりました。では今日は休ませていただきます おやすみなさい」
「「「おやすみなさい」」」
言われた場所の部屋に入ると簡易的なベッドと机が置かれていた。装備していた防具を外し荷物と一緒に机の上に置く
身軽になった体でベッドに飛び込む。ベッドはふかふか・・・とまではいかないが疲れた体を休めるには十分だった
「村長さん達みんないい人でよかったな。明日何やるか分からないけどしっかり休んで明日に備えよう」
その日お腹も満たし、ベッドで横になった僕はあっという間に寝てしまった
翌日ぐっすり眠れた僕はグッと背伸びをし、下で村長さん達に挨拶を交わし朝食は昨日の残りのスープと卵を挟んだパンとサラダをいただく。食事の間村長さんに今日手伝う内容を聞く
「今日手伝ってもらうのは一角ウサギの群れを倒してもらいたいんだ。リュウヤ君、1人旅してる位だからある程度戦えるだろう?」
「はい、それ位ならお安いご用です」
「助かるよ。一角ウサギ一体一体は強くないんだが繁殖力が高くてね。今年は特に数が多く作物を荒らしてて私らだけでは手に余って滅多に呼ばない冒険者を呼ぼうかと迷ってたんだ」
「なるほど、分かりました!出来るだけたくさん倒してきます!」
レベル上げにも丁度いいし戦闘慣れするにはもってこいだな。昨日お世話になった分しっかり働くぞ!




