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異世界龍人記  作者: Aoi
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38話 呪いを解く為に

「呪い?」


「はい。私達は魔物に不意をつかれ、呪いをかけられてしまいました。低位の解呪魔法では解けない強い呪いです・・・」


魔物に呪いをかけられて仕方なくやっていたのか

自ら望んでやっている訳ではないのなら何とか説得出来ないかと考える


「その呪いを解く事はできないんですか?」


アイシャの問いかけにお姉さんの方が口を開いた


「その前に自己紹介でもしましょうか。私達は双子の姉妹で私はシロエと言います。こちらは妹のクロエです」


「フンッ・・・」


「僕はリュウヤ、僕等は冒険者なんだ。よろしくね」


「アイシャです。よろしくお願いします」


一通り自己紹介を終えるとシロエが呪いの解き方について話し始めた


「呪いを解く方法ですが2つあります。1つは呪いの元を断つこと。これは物だったりもしますが、私達の場合は魔物から受けた呪いなので倒す事が出来れば呪いは解けます」


魔物を倒せば2人の呪いは解けるのか

それが出来ずにいるということはこの姉妹より強い魔物なんだろうか?


「呪いをかけた魔物の名前は?」


(カースド)吸魂鬼(ソウルイーター)という魔物です」


呪吸魂鬼といえば確か強さはBランクでその中でも上位に入るレベルの魔物だったはず

魔物の中には知性がある魔物もいてこの魔物もその一体だ

実力だけで考えるならアイシャとガーフで協力して戦えば勝てる相手だと思う



「その魔物を倒そうとはしなかったの?」


「2人で戦えば勝てると思います。けどこの呪いは相手を強制的に服従させる呪いで、命令に背いたり攻撃をしたりすると魂ごと消されてしまうんです」


それで大人しく従っていたということか

呪吸魂鬼は人の生気や魂を糧としている魔物

あの小瓶を使って2人に生気を集めさせて悠々とそれを食らい続けているのか


シロエが話を続ける


「そしてもう1つの方法ですが、この呪いには期限がありまして呪いが解けるまでの100年間その魔物の命令に従い続ける。それが終われば呪いは解けます。呪いにかかったのは数ヶ月前なので大分先になにりますけどね」


人間より遥かに長命であるエルフなら100年位問題ないだろうが・・・そういう問題じゃないよな

その間にどれだけの被害者が出るか分からないし、そもそも呪いをかけてくるような奴がそれで終わらせてくれるだろうか?

なにか他にいい手は・・・


「あっ、仲間のエルフにお願いして倒してもらう事は出来ないの?」


「あんな奴等に頼るなんて死んでも嫌だね!」


僕の提案に対して今まで黙って聞いていたクロエが突然声を荒らげた

何かまずい事でも言ってしまっただろうか?


「私達に仲間なんていません。なのでこの問題は2人で解決しなくてはいけないんです」


やっぱり訳ありっぽい感じだな

2人で解決というが、今挙げられた方法しか選択肢がないのなら村の人達への被害はなくならない


それならと僕は2人に話を持ちかけた


「そうか・・・なら僕達がその魔物を倒しに行ってこようか。どうアイシャ?」


「私も賛成です」


「僕達は村の被害を止めいんだ。呪吸魂鬼を倒せば君達も助けられるし村の被害もなくなる。一石二鳥じゃない?」


「それでお前達になんの得があるんだ。私は騙されないぞ。恩を着せて私達にやらしい事でもしようとしてるんだろ」


「いやしないわ!・・・損得でというより僕達が助けたいから助けたいんだ。駄目かな?」


クロエはなかなか僕等の言葉に耳を傾けてくれないが、シロエの方はしばらく考えた後僕の方を見て答えた


「・・・分かりました。案内します」


シロエはこちらの提案を飲んでくれた

それに対してクロエが物申す


「本気か姉さん?」


「ええ、この人達は私達が村の人を襲わないと分かるまで諦めてくれないでしょうしね」


「でももしあの魔物に手引きしたのがバレたら・・・」


「直接的なものではないなら大丈夫なはずよ。それに・・・私はこんな事早くやめてクロエと一緒に自由に生きていきたいもの」


「姉さん・・・分かったよ」


シロエの説得によりクロエも渋々ではあったが了承してくれた


「私達は案内までですので、その後はお願いしますね」


「分かった。絶対になんとかするよ」



呪吸魂鬼がいる場所へ案内してもらう前に、僕達は先に村へ戻った筈のガーフを迎えに向かった

クロエは以前、僕等を警戒している感じだったのでシロエに話を聞かせてもらうことにした


「クロエはシロエ以外凄い嫌ってる感じだけどシロエはそうでもないんだね」


「すみません、クロエは仕方ないんです。許してあげて下さい」


「いやまぁそれはいいんだけどね・・・聞いてもいいかな?」


「なんですか?」


「さっき僕が仲間を頼れないか聞いた時クロエが凄い剣幕だったけど、他のエルフとなにかあったの?」


「あぁ・・・面白くない話ですけど聞きますか?」


シロエにそう言われ、僕が無言で頷くとポツリポツリと話し始めた


「私達は忌み子なんです。私がハーフエルフでクロエがダークエルフ・・・両親は純粋なエルフですが低い確率で私達の様な子供が生まれるんです。双子でなんてそれこそ奇跡みたいな確率ですね」


「ハーフエルフとダークエルフってそんなに嫌われるものなの?」


「ハーフエルフは普通のエルフより魔力が多く生まれる代わりに1つの属性しか魔法が使えないんです。エルフであるならばあらゆる魔法を扱えて当然、というのが私達種族の常識なんです。そんな私はエルフの名を汚すだけの出来損ないなんです」


この世界のエルフは思っていたイメージとは大分違うようだ

種族間の価値観はそれぞれ違うだろうから僕が口を挟めることではないが・・・


「私はまだマシな方です。ダークエルフであるクロエはもっと酷いものでした。大昔からダークエルフと遺恨があったせいでクロエは村のエルフから理不尽な暴力を振るわれていました」


「あいつ等は私がダークエルフというだけで何をしてもいいと思ってるからな」


生まれてきてからずっと周りから酷い目に遭わされていたのか・・・他人を信じようとしなくなるのも納得だ


その後もシロエから色々と昔の事を聞かせてもらった

両親が周りからの視線や度重なる嫌がらせに耐えきれず、物心がついた頃には2人を置いて他の村に逃げていったこと

それから80年間ずっと嫌がらせ等に耐えてきたらしい

想像するだけで辛い気持ちになる。きっと2人だったからここまでやってこれたんだろう

そんな苦痛の日々からようやく抜け出した矢先に呪吸魂鬼の呪いを受けてしまい今に至るという事だ

最初は興味本位で話を聞いてみただけだったが、今は村と共にこの姉妹も助けたいという強く想うようになった


僕の後ろで話を聞いていたアイシャは涙を浮かべ、突然隣にいたクロエに抱きついた


「お、おい!なんだ!離せ!」


「今まで辛かったですよね・・・私達が魔物を絶対倒すので安心して下さい」


「なに知ったような口を・・・」


「私は・・・村の皆と家族を魔物に殺されてしまいました。その上盗賊に捕まり奴隷にされかけて必死に逃げましたが、その時は生きるのが辛くなる程絶望していました」


アイシャが淡々と自分のこれまでを話していく

辛いだろうが話さずにはいられないんだろう

抵抗していたクロエはそれを黙って聞いている


「でもそんな時リュウヤ君に助けてもらい、一緒に過ごしていくうちに沢山良い人達に巡り会えることが出来ました・・・だから2人にもいつか必ず幸せな時間がやってきます。こなくちゃ駄目なんです」


「わ、分かった。分かったから離してくれ」


勢いに圧されクロエが降参する形でようやくアイシャが離れる

クロエは暫く黙って俯いた後、アイシャに背を向けて呟いた


「アイシャだったか・・・その、他の話も聞かせてもくれるか・・・」


「・・・!も、勿論です!」


アイシャの言葉が響いたのか、僅かだがクロエが心を開いてくれたみたいだ

張り詰めていた空気も少しだけ和らぎ、僕達はガーフが待っている村へと戻っていった



読んでいただきありがとうございます

次回更新は金曜日19時です

「よかった」「続きが気になる」など思っていただけたら幸いです

感想やレビュー、ブックマーク等々気軽にして頂けると大変有り難いです!よろしくお願いします

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