35話 帰還
市街まで下りてきた僕達は中央広場に繋がる道を歩いていた
周りでは魔物によって壊された建物等の被害が多く見受けられた
皆で協力して修復している姿を見て逞しさを感じた
献花台がある広場に到着するとそこには今もたくさんの人が参列していて、多くの花が供えられていた
僕達も列に並び、用意した花を供えて祈りを捧げた
「お兄ちゃん?」
祈りを終え門の方へと向かおうとしたら女の子に声をかけられた
「やっぱり!あの時のお兄ちゃんだ!」
「えっと君は・・・あぁ!あの時の子か!」
声をかけてきたのは僕が庇った女の子だ
後ろには女の子の両親もいた
どうやら家族皆無事なようで一安心だ
「あなたが娘を助けて下さった方ですか。ありがとうございました。本当になんてお礼をしたら良いか」
親御さんが僕に深々とお辞儀をした
「お礼なんてとんでもないです。当たり前のことをしただけなので」
女の子が寄ってきて僕に屈託のない笑顔を向けてくる
「お兄ちゃん、怖い人から守ってくれてありがとう!」
「もうお父さんお母さんから離れちゃ駄目だよ」
「うん!」
その親子は再びお辞儀をすると仲良く手を繋いで人混みへと消えていった
僕達はそれを見送った後、門へと向かった
僕が病み上がりということもあり、アイシャの提案で馬車を使ってディグリアへ向かった
道中の魔物は大した強さでは無いのでガーフが一蹴し、問題なく進んでいった
その日の夜、夕食を食べ終えて一息ついているとアイシャの顔が物寂しそうな顔をしていたので尋ねてみた
「アイシャ、どうかした?」
「あっ、すいません・・・あの女の子の両親を見ていたらちょっと家族の事を思い出しちゃって」
「そっか・・・アイシャの両親ってどんな感じだったの?」
「とても優しかったですよ。お母さんとよく一緒にご飯を作ったりして・・・それをよくお父さんに褒めてもらって毎日が本当に楽しかったです」
昔を思い出すアイシャの顔は哀愁漂っていた
「あっ!勿論今も凄く楽しいですよ!リュウヤ君とガーフ君が一緒ですし、周りの人達も良い人ばかりですからね」
「これからも楽しい思い出たくさん作ろう。大変な事もあるだろうけど僕はずっと一緒にいるからぢっ!」
肝心なところで噛んでしまった・・・変に決めようとしたらこのザマですよ
慣れないことはするもんじゃないな・・・
「ふふっ♪そうですね。これからもよろしくお願いします♪」
アイシャの顔から笑顔がこぼれる
その笑顔が見れただけで十分だ
これからもアイシャをたくさん笑顔に出来るようにしていきたい
それから数日かけて僕達はようやくディグリアへと帰ってきた
「ようやく帰ってきたねぇ」
「そうですね。皆さん元気にしているでしょうか」
街中を歩いていると周りの人達はやはり王都での騒動の話で持ち切りだった
ディグリアにももう広まっていたんだな
戻ってきたらいの一番に行こうと決めていたガルバンさんの鍛冶場へと向かう
鍛冶場では相変わらず鉄を叩く音が鳴り響いていた
「お久しぶりですガルバンさん」
「おぉ帰ってきたか。王都でかなりの騒動があったらしいな」
「はい、色々ありましたがなんとか帰ってこれました。これお土産です」
記念祭前日に選んで買っておいたお酒をガルバンさんに渡す
「ほぉ、これは美味そうな酒だな。有難く頂くとしよう。それじゃあ今杖を持ってくるから待っててくれ」
ガルバンさんが別室に置いてある杖を取りに行った
アイシャの初となる杖がどんな風に仕上がったのか楽しみだ
「これが俺が作った杖だ」
ガルバンさん持って来た杖はアイシャの背丈半分位の程大きさで持ち手は握りやすく加工されていた
杖の先の部分は三日月の様なデザインで、そこに僕達が取ってきたローズワイバーンの宝玉が使われていた
宝玉は削られ先端が尖った六角柱の形をしていてクリスタルの様だった
どういう原理かは分からないが宝玉は中心で浮いていた
アイシャは杖を手に取り感触を確かめるが、初めて持つ杖に戸惑いを見せる
するとガルバンさんが部屋の奥を指差した
「よかったら裏で試しに使ってみるといい」
ガルバンさんに連れられ裏庭にいくとそこには試し切り用の案山子や的が設置されていた
購入していく人が感触を確かめる為にガルバンさんが用意してくれているらしい
「い、いきます"アイスネイル"!」
的に狙いを定めて杖を前に突き出し魔法を発動する
アイシャが放った魔法は普段より威力が増しているように見え、命中した的が見事に消し飛んだ
「どうだい?」
「凄いです。普段使う魔力の半分しか消費してないのに威力も上がってます!」
「そうかい。そりゃよかった!」
「ありがとうございます。大切に使わせて頂きます」
アイシャはガルバンさんの杖を気に入ったようだ
僕もいつか武器が必要になった時はまたガルバンさんを頼ろう
改めてお礼を言い、僕達は次にギルドへと向かった
「こんにちはリリアーナさん」
「リュウヤさんにアイシャさん!お久しぶりです。王都での一件銀翼の方々から聞きました。なんでも大怪我をされて聖女様の治療を受けたとか。大丈夫でしたか?」
「いやぁ、結構危なかったですけどティ・・・聖女様のお陰でなんとか助かりました」
先に帰っていた銀翼の皆から話は聞いているみたいだ
フローラさんの事は知らないだろうから話題に出すのは控えておこう
「それで銀翼の皆さんを見ませんでしたか?ここに行けば会えるかなと思ったんですけど・・・」
「それがちょうど昨日新たな依頼を受けて出ていかれてしまったそうなんです。長期の依頼らしくていつ帰ってくるかはちょっと分かりませんね」
なんと・・・入れ違いになってしまったか・・・
あれからお礼も言えずに別れてしまったから会って話したかったんだけどな
「そうなんですか・・・実は僕達も今度ベルセリア帝国の方へ行く予定が出来まして長い期間離れるかもしれないのでその前に挨拶したかったんですが・・・仕方ないですね」
「あら、帝国の方に行かれるんですか。帰って来たばかりなのに大変ですね。ちなみにどちらまで?」
「帝都へ向かう予定です」
「帝都ですか!ではもし良ければおつかいを頼まれてはくれませんか?」
「おつかいですか?いいですけど・・・」
「ありがとうございます。ちょっと待っていて下さい」
リリアーナさんが隣の部屋へと入っていき、戻って来た時には手に手紙を持っていた
「お待たせしました。こちらの手紙を帝都のギルドで働いている妹に渡して欲しいんですけど」
「リリアーナさん妹さんいたんですね」
「はい、妹はミレーナと言うんですが遠い地で1人頑張ってるんです。だからこうして定期的に手紙のやりとりをしてるんです」
「仲がいいんですね。分かりました!この手紙は責任持って妹さんにお届けします」
元々ギルドには顔を出す予定だったので丁度いいだろう
「お願いします」
リリアーナさんから妹さんの手紙を受け取ってギルドを出た
いい時間になったのでやすらぎ亭へ昼食を食べに足を運んだ
扉を開けるとそこには忙しそうに仕事をしているメルの姿があった
「いらっしゃ・・・あ!リュウヤさんにアイシャさん!お久しぶりです!」
「お久しぶりですメルちゃん♪」
「やぁメル。随分と賑わってるね」
やすらぎ亭は夜の酒場がメインで昼の客足は比較的少なめだったのだが、かなり盛況なようだ
「実はお母さんがお昼限定のメニューを出し始めたんですが、それがたちまち人気になって今はお昼も凄く忙しいんです。あっとすいません!またあとでお話しましょう!」
そう言うとメルはお客さんの元へと料理を運んでいった
「リュウヤくんにアイシャちゃんおかえりなさ〜い」
厨房からグレイスが顔を出してきた
額には厨房の熱気で汗が浮かび上がっている
「グレイスさん!メルから聞きました。凄い盛況ですね」
「そうなの~アイシャちゃんと一緒にお料理してた時に思いついてね。試しに出してみたらこの通り大忙し」
「良ければ僕達もお手伝いしましょうか?いいよねアイシャ?」
「勿論です!」
「それは助かるわぁ。あとでお礼にご飯作るわね」
制服を引っ張り出して僕がウェイターでアイシャは厨房を任された
ガーフは子供達のマスコット係で揉みくちゃにされていた
そうしてお客さんを次々と捌いていき、なんとかランチタイムを切り抜けた
病み上がりの僕には丁度いい運動になった
「いやぁ2人ともありがとう~。新しいバイトの子が明日からだったから手伝ってくれて本当に助かったわぁ。お腹空いたでしょう。たくさん食べてね」
「色々あったんですよね。食べながら聞かせて下さい!」
グレイスさんが用意してくれた料理を食べながらこれまでの話を親身になって聞いてくれた
「そう、大変だったのね」
「はい、そこで知り合った方の紹介で修行の為に帝国の方へ行こうと思いまして。長期間ディグリアを離れると思うので挨拶に来たんです」
それを聞いたメルは浮かない顔をして喋りかけてきた
「また行っちゃうんですね・・・帰ってきますよね?」
「大丈夫ですよメルちゃん。修行が終わったらちゃんと帰ってきます」
「帰ってきたらまたお話聞かせて下さいね。絶対ですよ!」
メルと約束を交わし、その後は会話を楽しみながらグレイスさんの料理を堪能した
読んでいただきありがとうございます
次回更新は金曜日19時です
「よかった」「続きが気になる」など思っていただけたら幸いです
感想、ブックマーク等々気軽にして頂けると大変有り難いです!よろしくお願いします




