33話 目を覚ますと
「・・・ん、ここは・・・?」
目を開けるとそこは見慣れない天井だった
確か女の子を庇ってオーレンにやられたところまでは覚えているけど・・・そこからの記憶がない
ベッドから起き上がろうとするが体に力が入らない
なんとか踏ん張って起き上がり周りを見ると、傍らで寝ているアイシャとガーフがいた
2人共無事だったようで安堵する
寝ている姿を眺めているとアイシャが目を覚ました
「んん・・・いけない、寝ちゃったみたい・・・」
「おはようアイシャ」
僕の声を聞いたアイシャは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした
「リュウヤ君・・・良かった!」
涙を浮かばせながらアイシャが抱きついてきた
力の入らない体に飛びつかれベッドへと押し倒される
体に柔らかいものが当たって全神経がそこに集中した
まさか人生初の女の子との抱擁がこんな形で叶うとは・・・
ガーフが起きていたら絶対邪魔してきただろうな
しばらくの間抵抗できず、アイシャに抱きつかれた僕は理性を保つのに精一杯だった
「アイシャ・・・そろそろ・・・」
「あっ!ご、ごめんなさい!」
我に返ったアイシャは顔を紅潮させ素早く僕から離れた
「でも本当に目が覚めて良かったです・・・」
「僕が気を失ってからどれ位経ったの?」
「リュウヤ君目を覚まさず3日間ずっと寝ていたんですよ」
「え!3日も!?魔物は!女の子はどうなった・・・あっ」
体を勢いよく起き上がらせようすると力が入らずベッドへと倒れ込んでしまう
「落ち着いて下さい。魔物は全部倒しましたし傍にいた女の子も無事です」
それから僕と別れてからのアイシャ達の話も含め色々聞かせてもらった
被害人数は兵士も含めると2000人近くにも達したらしい
同時多発的に黒い霧発生したので対応が遅れてしまったようだ
王帝記念祭はこのような事が起きた後なので当然中止となってしまった
「そっか・・・そっちも大変だったんだね。無事で本当によかった。アルさんにもお礼を言わないと」
「アルさんが来なかったらどうなっていたか・・・それでですね」
グゥゥゥゥゥゥゥゥ
アイシャの話の途中で間抜けな腹の音が部屋中に響いた
無論、僕のお腹の音だ
3日も何も口にしていなかったのだから当然なのだが・・・物凄く恥ずかしい
「ふふっ。お粥を作っておいてあるので持ってきますね」
「ご、ごめんお願い・・・」
そう言うと部屋を出ていった
僕はアイシャが戻ってくるまで再び横になった
すると遅れてガーフが目を覚ました
「おはよう、お前も無事みたいで良かったよ」
「きゅうきゅう」
ガーフは寝起きに体を伸ばし「お前もな」と言うような感じで返事をしてきた
なんだか最近少しだがガーフの言っている事が理解出来るようになっている気がする
ガーフも前より体を撫でさせてくれるし少しは心を許してくれているのかな
そんな事をして待っているとアイシャが食事を乗せたトレーを持って戻ってきてくれた
「お待たせしました。ふぅ〜ふぅ〜。はい、どうぞ」
アイシャがお椀から掬ったお粥を僕の口に向けてくる
「いや、アイシャ・・・1人で食べられるよ」
「力が入らない状態で持ったら零してしまうかもしれません。はい、あ〜ん」
「わ、分かったよ。あむ・・・うん、美味しい」
「良かったです♪」
気恥ずかしいがアイシャが作ってくれたお粥を胃を刺激しないよう一口また一口と口に運んでいくと、あっという間に食べ終えてしまったのでおかわりをもらった
結局3杯も食べ、しれっとガーフも食べていたので鍋に入っていたお粥を平らげてしまった
「ふぅ、ごちそう様。美味しかったよ」
「きゅーん♪」
「2人共お粗末様でした。こんなに食べてくれて作った甲斐がありました」
お腹も満たされて一息ついていると、扉がノックされ誰かが入ってきた
「リュウヤさんどうも~♪」
「お体の調子はどうですか?」
「ローラさんにアルさん。それに・・・」
以前ブランタニアで出会ったローラさんにアルさん
そしてローラさんの後ろに隠れるようにして小さな女の子が部屋に入ってきた
年齢はメルと同じ位だろうか、綺麗な薄桃色の髪を揺らせローラさんの後についていっている
「こちらはクリスティナ=オヴェール様です。リュウヤ君の傷を治してくれたんですよ」
「はじめまして・・・クリスティナ=オヴェールと・・・・いいます」
この子が天の加護を持つクリスティナ=オヴェール
名前だけなんとか聞き取れたが、目の前にいなかったら聞こえない程のか細い声で自己紹介をしてきた
「すいません、倒れてからの記憶がなくて・・・助けてくれてありがとうございます」
「いえ・・・元気になってよかったです」
「ごめんなさいね。ティナちゃん人見知りで特に男の人が苦手で話す時声が小さくなっちゃうんです。あっ、ティナちゃんていうのは愛称です♪」
「は、はぁ。そうなんですか。でもまだ子供なのに聖女を務めているなんて凄いですね」
もっと歳上の人を想像していたので自分より若いとは思っていなかった
「あら、こう見えてティナちゃんはとっくに成人している二十歳の女性なんですよ」
「えっ!?す、すいません子供なんて失礼な事を・・・」
「いえ・・・よく間違われるので・・・」
自分より歳上と聞いた後でも歳下にしか見えない・・・これが合法ロリか・・・
「それでどうしてここにクリスティナ様が?ずっと王宮の中にいると聞いていたんですが」
「ええっと、実はですねリュウヤ君・・・ここは王宮の中なんです」
「え?」
「それとですね・・・こちらのローラさんは実はこの国の第一王女様で帝国の女王様でもあるフローラ様だったんです」
「・・・え?」
「改めまして、フローラでーす♪」
アイシャの口からいきなりとんでもないカミングアウトをされ頭の中が混乱する
話によるとクリスティナ様が超広域回復という魔法で王都全域の負傷者を治したが、重傷を負っていた僕には効き目が薄く、ローラ・・・フローラ様の計らいで王宮へと運ばれ直接クリスティナ様の治療を受けたらしい
フローラ様がブランタニアにいたのは帝国領からこの王都に向かう最中で、あそこでは物資の補給をしていたらしい
そこでアイシャと出会い偽名を名乗ったと・・・
今思い返すと確かにトリゲン伯爵の馬車より豪勢な作り
そして周りには過剰と思える程の護衛がいたが、一国の女王なら全て納得がいく
そしてここは王宮の一室でフローラ様の客人という扱いで使わせて貰っているとのことらしい
「何から何までありがとうございます。フローラさ・・・様」
「様付けはいりませんよぉ。気軽にフローラと呼んでください」
「いえ、そういう訳には・・・」
「私が良いと言ったら良いんです」
「わ、分かりましたフローラ・・・さん」
フローラさん満足気な顔をすると、後ろに控えていたアルさんがやれやれと首を振る
「フローラ様、そろそろ本題に」
「そうでした。ティナちゃんがお話があるから来たんですよね」
フローラさんが話を振ると、クリスティナ様がおずおずと前に出てきて話し始めた
「あの・・・リュウヤさんの傷を治している最中、魔族の痕跡を見つけたんです。リュウヤさんが戦っていたのは魔族だったのですか」
「魔族・・・なのかは分かりませんが、赤い顔をしていてコウモリのような羽に羊の角みたいなのが生えてました。あと名前はオーレンと名乗っていて今回の騒動を起こしたのも奴の仕業です」
僕が見た特徴をそのまま伝えるとアルさんが口を開いた
「オーレンという名は聞いた事ありませんが、リュウヤさんが見た特徴からすると十中八九魔族でしょうね。何故このような騒動を起こしたかは不明ですが・・・」
「それを聞き出すことは出来ませんでした。でも相手にも傷を負わせたのでまたすぐ襲ってくるという事はないと思います」
「そうですか。なんにせよ今後は警備を最大限に引き上げる必要がありますね」
「お父様も既に色々策を講じている様ですし、今後帝国が襲われる可能性もありますからよく話し合わないといけませんね」
それからは市街の状況を聞かせてもらった
中央には献花台が置かれており、今は壊れた建物の修復に勤しんでいるようだ
僕も体調が戻ったら花を持っていこう
「ではそろそろ失礼させて頂きますね。体調が良くなるまでゆっくりしていってください」
「あの・・・傷は治しましたがかなり血を流していましたのでふらつく事があると思います。なので安静にしていて下さいね」
「分かりました。本当にありがとうございました」
部屋を出ていく3人を見て僕は最後尾で出ていくアルさんに言い忘れた事を思い出し呼び止める
「あ、アルさん」
「なんでしょうか?」
「アイシャを助けてくれて本当にありがとうございました」
「いえ、大した事はしていませんよ」
「それで不躾なお願いだとは思いますが・・・僕に稽古をつけてくれませんか?」
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次回更新は月曜日19時です
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