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異世界龍人記  作者: Aoi
32/73

31話 魔族の襲撃

突如現れた黒い霧

そこから出現した魔物に襲われ逃げ惑う大勢の人々

僕達は空から移動し暴れている魔物の方へと飛んで行った


「アイシャは怪我している人の治療をお願い!僕は魔物達の足止めをするから!」


「分かりました!ガーフ君もリュウヤ君と一緒に」


「きゅん!」


アイシャに傷を負って倒れている人の治療を任せ、僕とガーフで魔物の対処をする


「ガーフ!僕は逃げ遅れた人達を救助するから出来るだけ魔物達を引き付けてくれ!」


「ガウッ!」


元の姿に戻ったガーフは一目散に魔物の方へと飛んでいき戦闘を始めた


「た、たすけ・・・」


魔物が振り下ろしてきた攻撃を間一髪防ぎ、地べたに倒れ込んでいた女性を助ける


「立って!早く逃げて!」


「はっはい!」


なんとか女性は立ち上がりその場から離れていった


霧の中から出てきた魔物は見たところDランク程度の魔物ばかりで、大した強さではないが数が多い

障壁や龍鎖を駆使してなんとか動きを止め、その間に逃げ遅れた人や怪我を負っている人達を避難させた

しかし霧の目の前にいて魔物に襲われてしまった人達は既に息がなく、救うことは出来なかった


被害を可能な限り抑え、逃げ遅れた最後の人の避難を確認し僕も魔物の討伐に移る


「リュウヤ君!お待たせしました!」


「アイシャ!怪我人は?」


「幸い重傷者はいなかったのでなんとか治すことは出来ました」


「こっちも避難は終わったよ。ガーフが頑張ってくれてるから残りの魔物も倒そう」


「はい!」


避難をさせている間、ガーフが引き付けつつ倒してくれたお陰で魔物の数は半分近く減らされていた

僕とアイシャもそこに加わり、残りの魔物を掃討していく

少し気がかりなのはこれだけの騒ぎになっているにも関わらず僕達以外に衛兵や冒険者が未だにやってこないことだ


最後の一体を倒し、霧から出てきた魔物は全て倒し終わった


「ふぅ・・・なんとか片付いたか」


「リュウヤ君・・・この人達は・・・」


「アイシャ・・・残念だけどもう・・・」


「そんな・・・」


助けられなかった人達を見て目を潤ませるアイシャ

それを見てより胸が痛くなる

出来得る限りのことはやった。それでも助けられなかった人達がいる事に悔しさを感じた


悲しみに打ちひしがれている僕達の元へノーマンさんがやってきた


「お2人共無事でしたか」


「ノーマンさん!」


「この場所はお2人だけで?大分被害は少ないようですね」


「この場所はって・・・もしかして他でも同じような事が起きているんですか?」


よく見るとノーマンさんの装備も傷だらけになっていた


「えぇ、ここに来るまでにも何箇所か魔物の群れと遭遇して戦いました。もしかしたら王都全域で同じ現象が起きているかもしれません」


だからここには誰も来なかったのか・・・

こんな現象が王都全体で起きているとなると被害は相当なものになるだろう


「全兵隊を動員して事に当たっています。王都にいた冒険者達も戦っていると思います」


「そうですか。僕達はこのまま他の場所の援護に行ってきます。ノーマンさんは?」


「私もドリス達がもうすぐやってくるので合流した後各所の援護をします」


「分かりました。気をつけて下さいね」


「えぇ、リュウヤ君達も」


ノーマンさんに別れを告げ、空から他の場所へと移動する

王都を見渡すといたる所で火の手が上がっていてた

地上はどこも逃げ惑う人達で収拾がつかなくなっている


「とにかく魔物を倒していかないと。探知網(ディテクションネット)・・・まずはあっちだ!」


「待って下さいリュウヤ君!」


「どうしたのアイシャ」


「固まって行動していては効率が悪くなると思うんです。なのでここからは別れて行動しませんか」


強い眼差しでこちらに訴えてきた

アイシャの言うことも一理ある

だが探索範囲が広がる分、単独での行動はこちらの危険度も増す

先程の魔物程度なら問題ないがどんな魔物がいるかも分からないし数で押されてしまうかもしれない

それはアイシャも理解しているはずだ

それでも被害を抑える為、自らの危険を冒してでも救いたいのだろう

村の皆や両親を失ったアイシャだからこそ、その想いは人よりも強いのかもしれない


「・・・分かった。僕は右回りで見ていくからアイシャとガーフは左からお願い。無茶だけはしないでね」


今は迷う時間も勿体ない

アイシャを信じて別行動をすることに決めた


「ありがとうございます。リュウヤ君も気をつけて」


「うん。ガーフ、アイシャを頼んだぞ」


「バウッ!」


当然だと言わんばかり吠えるガーフ

いつものやりとりで少し気持ちが楽になる

アイシャに背を向けその場を離れた


僕は探知網に引っかかった相手の場所に向かっていった

魔物が多い場所にはノーマンさんが言っていた兵士の人達が戦っていた

僕は劣勢な場所の援護に回り、優勢になったら次の場所へと移動した

途中逃げ延びた怪我人にはポーションを与え、避難誘導をしている兵士の元まで連れて行った


「この辺りにはもう反応はないな。よし、次の・・・・・!!」


次の場所へ向かおうとした瞬間、背筋が凍るような感覚がした

瞬時に後ろへ飛び、身構える


「あら、気づかれたか」


声がする上空へと目を向けると、そこにはコウモリのような羽とヤギのような角を生やした男がいた


「見てるだけのつもりだったんだがなー。お前が助けに入るから思ったより数が伸びなくて迷惑してるんだよ」


「・・・あの黒い霧と魔物はお前が仕組んだことなのか?」


「あぁ、ちまちまと性に合わない罠を仕掛けるのに苦労したぜぇ」


男はヘラヘラとした口調で答える

相手の気持ちを逆撫でするような話し方に心がザワつく


「どうしてこんな事をしたんだ」


「ハハッ、それをペラペラと喋るほど馬鹿じゃねぇよ」


この男はさっき僕が迷惑だと言っていた

時間稼ぎをされると他の場所が危ないかもしれない

かといってこの男を撒くことは出来ないだろう

ステータスを見るに僕と同等かそれ以上だ

倒せるかも怪しいがここでやらないと他で暴れられるかもしれない


僕は戦う事を決め、男目掛けて攻撃を繰り出した


「おっと、いきなり攻撃してくるなんて随分とせっかちなんだな。名前くらい教えてくれたっていいじゃねぇか」


男の言葉に耳を傾けることなく連撃を浴びせる

しかしその攻撃も難なくかわされる


「あぁ、名前を聞く時は自分から名乗るんだったか。俺の名前はオーレンだ」


「お前に名乗る名前なんてない」


「なんだよノリ悪いな。ふぅ、分かったよ。そんならお望み通り戦えばいいんだ・・・・・ろ!」


オーレンの拳が一気に目の前まで迫ってきた

頬を掠めたがギリギリで避け、避けた動きを利用して蹴りを繰り出す

こちらの攻撃もオーレンの顔を掠めたが直撃とはならず、お互い一旦距離を取る


「おー危ねぇ。殺さねぇようにってのは戦いづらくてしょうがねぇ」


「どういう事だ」


「おっと、お喋りが過ぎたな・・・でもそうだな。腕の一本位は落としても問題はねえよなぁ」


「やれるもんならやってみろ」


「威勢がいい奴は好きだ・・・ぜ!」


先程より一段と速い攻撃を飛ばしてくる

避けきれないと判断し、腕を前に出しガードする

オーレンの拳が僕の腕に直撃すると骨の軋むような音がした

速度を上げた連撃に反撃することが出来ず数分の間防戦一方となった

相手が一息ついたところに痺れる腕をなんとか振り上げ反撃するが、こちらの攻撃は避けられて腕を掴まれる

そのまま投げ飛ばされ建物に突っ込んだ


「ったぁ・・・」


「流石龍人(ドラゴノイド)だけあって頑丈だな」


オーレンは猛スピードでこちらに接近してくる

すぐさま瓦礫から立ち上がり外へ飛び出す

顔面を狙ってきた攻撃を受け流し、カウンターを狙った僕の拳が相手の顔に入った

予想外の攻撃をくらって思わず怯むオーレン

ひたすら相手の攻撃を受けていたお陰か、攻撃が見えてきた


(こいつ、さっきまで防ぐので精一杯だった癖に急に動きが変わったな・・・ラビスの言った通りかもな)


「おもしれぇ。もっと楽しませろ」


オーレンは笑みを浮かべながらこちらに攻撃を仕掛けてきた







それから何分経ったか、お互い一歩も譲らない攻防を繰り広げた


僕は重傷までとはいかないが血を流しすぎたせいで足元がふらついていた

しかしその分オーレンにも結構なダメージを負わせる事が出来た

あれだけ傷を負っていれば他の場所を襲撃することもないだろう


「はぁ・・・はぁ・・・」


「ふぅ・・・お終いだ。この辺りで引き上げるとするか。目的も果たせたみたいだしな」


結局目的がなんだったのかは聞く事は出来なかった



オーレンがこの場から立ち去ろうとしたその時、脇道から小さな女の子がこちらにやってきた


「ヒック・・・お母さん・・・ヒクッ・・・お父さん・・・どこー?」


両親とはぐれて探し回っていたようだ

泣きじゃくる女の子を見たオーレンは笑みを浮かべた


「まずい!」


何を考えているのか分かった僕は女の子の元へふらつく足で駆け寄っていく

既にMPも底を尽きているので女の子の前に立ち、盾になるようにして庇う

瞬間、腹部に強烈な痛みが走った

僕の腹はオーレンの腕によって貫かれていた


「ゴフッ・・・!」


腕を引き抜かれると凄まじい量の血が流れた


「やべっ、勢い余ってやっちまった。まぁ致命傷は避けたしすぐには死なねぇだろうから安心しな」


オーレンが何かを喋っているようだったが聞き取れない

霞む視界には奴が飛び去っていく姿だけが映った




読んでいただきありがとうございます

次回更新は水曜日19時です

「よかった」「続きが気になる」など思っていただけたら幸いです

感想、ブックマーク等々気軽にして頂けると大変有り難いです!よろしくお願いします

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