22話 護衛任務
銀翼パーティの後について行くと馬車が置かれている厩舎へとやってきた
行商人等はここに馬車を置き、馬を休めているようだ
そして数ある馬車の中に一際豪華な造りが施されている馬車が準備されていた
「綺麗なお馬さんですねぇ」
厩舎の方を見ると一回り近く体格が大きく、艶やかな毛が丁寧に結われていて他の馬とは違う風格を醸し出していた
十中八九貴族の馬車と馬だろう
ドリスが馬車に近寄っていき僕達に指示を出す
「これが今回護衛の対象となる貴族、ルイーズ・フォン・トリゲン伯爵が乗る馬車だ。それでこっちの残り2台の馬車にはここに置かれている食料品等を積むからまずはそれを手伝ってくれ」
「分かりました」
ドリスの指示通り積荷を馬車に乗せていく
先程のアイシャに対する軽いノリとは打って変わって真面目に取り組んでいる
メリハリはしっかりしているようだ
積荷を全て乗せ終わった頃にエレナさんが戻ってきた
「お待たせ、リュウヤ君とアイシャさん。それと、えーと肩に乗ってるその従魔も同行の許可が下りたわ」
「あっ、この子はガーフって言います」
アイシャが名前を教えると肩から飛び元の姿に戻る
子犬程の大きさだったのが突然巨大な体に変貌して驚く銀翼メンバー
「デカ!ここら辺じゃ見たことない魔物だな」
「この従魔・・・もしかして守護獣ですか?」
「守護獣というと一般的には知られてないが、ビーストテイマー界隈では喉から手が出るほど従魔にしたい知る人ぞ知る種族だと聞いたことがあります。まさかこんなところでお目にかかれるとは」
ドリスはガーフの体躯に驚いていたが、アリベールとノーマンが種族の方で驚いていた
従魔登録時には特に何も言われなかったがガーフは中々希少な種族なようだ
そういえばアイシャの持っていた魔物大全でも以前調べたが、種族名と簡単な説明位しか書かれていなかったのは希少故に情報が少なかったからなのかもしれない
「はいはい、気持ちは分かるけどもうすぐ伯爵様が来るわよ。早く準備しちゃいましょ。アイシャさん、その子また小さくなれる?馬が怯えちゃうといけないから」
「はっはい。ガーフ君おいで」
エレナさんが手を叩いて場の空気を変える
流石リーダーだけあってしっかりと皆を纏めてくれる
こういうところも見習わなくては
ガーフが再び小さくなってアイシャの肩に戻る
厩舎から馬を出して馬車と繋げるハーネスを取り付けていく
全ての準備が終わり待機していると、街の方から口髭を生やした中年の男と一歩後ろに老齢な執事が歩いてこちらに向かってきた
身なりのよい姿からあの人が今回護衛の依頼をしてきた伯爵だというのが分かった
「やぁ銀翼の諸君、出立の支度は済んだかね?」
「トリゲン伯爵様、いつでも出立可能で御座います」
「ご苦労。それで、今回同行するというのは君達かね?」
「お初にお目にかかります、トリゲン伯爵様。今回は私達の同行を許可して頂き感謝致します」
慣れない口調で精一杯の挨拶をする
「はっは、そんなに畏まらんでもいい。お堅いのは貴族同士の間だけで十分だよ。普段どおりで構わない」
「そうですか?助かります」
「君達はその若さでCランクまで上り詰めたらしいじゃないか。ただの甘い汁を吸いに来た冒険者ならお断りだが、君達のその将来性ならお互いウィン・ウィンの関係が築けると思って今回許可を出したんだ」
「光栄です。期待に応えられるようしっかりと護衛します」
「うむ、頼んだよ。では出発するとしようか」
トリゲン伯爵が馬車に乗りいよいよ出発となる
銀翼のパーティは伯爵の馬車の護衛を、僕達はその後ろの物資を載せている馬車の護衛を任されディグリアを出る
アイシャは急遽不調を訴えた御者の代わりを務めている
「そういえば聞き忘れていたんですけど、どこに向かうんですか?」
「まず始めにブランタニアという街に行って3日程滞在した後にリングラルド王国に行くんだ。ディグリアに戻ってくるのは二週間後ってところかな」
僕の質問にノーマンさんが答えてくれた
二週間か。今までで最長の依頼となるが、その間の宿泊費はトリゲン伯爵が持ってくれるらしいのでその分のお金は浮く
その上金払いもいいので伯爵が先程言っていたような甘い汁を吸おうという輩が度々名乗り出てくるらしい
「戻ってくる頃にはガルバンさんに頼んでいた杖完成しちゃってますね」
「そうだね。一言伝えておくべきだったな・・・」
帰ってきたら謝ろうと決め、先へと進む
ブランタニアまではおよそ二日かかるらしい
護衛とはいえ、この辺りではまだ魔物は出ないし常に気を張っていると疲れてしまうので楽にしてていいとドリスにも助言をもらったのでのんびり行くとしよう
ディグリアから続いてる道をしばらく行くと森の前まで来た。アイシャと出会ったあの森だ
この森を通らないルートもあるが遠回りになってしまうのでここを通るしかない
アイシャの様子を窺い問いかける
「アイシャ大丈夫?」
「大丈夫です。盗賊はいませんし・・・それにもうあの時とは違いますから」
こちらの問いかけに問題ないと答えるアイシャ
そう、盗賊は既に捕らえ投獄されているんだ
・・・だからといってあの恐怖が無かった事にはならない
ましてやその現場に入っていくとなると色々思い出す事もあるだろう
アイシャにそっと近寄り手を握る
「大丈夫。何かあっても必ず守るから」
「・・・・・・ありがとうございます」
こんな事位しか今は出来ないが少しでもアイシャの為になってほしい
「キュン!」
ガーフが頭に乗っかり頭をクシャクシャに弄り、僕とアイシャとの間に割って入ってくる
アイシャを取られると思うとすぐこの行動をしてくる。最早恒例になりつつある
「この・・・お前はいっつも!」
「ふふふ♪駄目ですよガーフ君」
見慣れた光景に思わず笑みが零れるアイシャ
今回ばかりはナイスフォローだガーフ
「行くわよー。ついてきてね」
馬車を止めてしまっていた僕達にエレナさんが呼びかけてくる
「すいません!今行きます!行こっか」
「はい!」
時間はもうすぐ正午に差しかかる時間帯で森の中は以前とは違い、木漏れ日が差し込んでいた
「ここからは魔物が出てくる可能性がグンと上がるわ。出発前に言った通り今日は私達が魔物を相手するからそっちは馬車をお願いね」
「分かりました」
探知網を発動しつつ周囲を警戒しながら進んでいく
川沿いをしばらく進み、森の奥へと続く道に入っていくと探知網に反応があった
「みなさん右から敵が来ます!数は三体です!」
「右?・・・!戦闘態勢!」
一拍遅れてエレナさんが気配を察知し指示を出す
僕達の前に現れたのは武闘猿だ
独特の構えでトリッキーな動きをしてくる猿の魔物
他の森でも出る魔物で散々倒した魔物だ
だが今回は銀翼のメンバーに戦闘を任せているので、僕達は伯爵の乗っている馬車の護衛に集中する
「プロテクション!腕力上昇!」
すぐさまエレナさんが他の三人に強化魔法をかける
剣士のドリス、タンク役を担うノーマンさんに弓と両手ダガー持ちのアリベールさんが武闘猿に突っ込んでいく
「強制扇動!」
ノーマンさんが三体中二体の注意を引く
その間にドリスとアリベールさんが残った一体を挟み撃ちにして攻撃していく
「スワンプ!」
エレナさんの魔法で武闘猿の足下が沼化して相手の動きを鈍らせる
「剛撃!」
「弱点突き!」
ドリスとアリベールさんが放った攻撃に耐えられず一体目が倒れる
これで残り二体だ
「ノーマン離れて!かまいたち!」
注意を引きつけ二体の攻撃を一人で請け負っていたノーマンさんを後退させ、エレナさんが発動した風魔法かまいたちが武闘猿を囲み無数の風の刃で相手を切り刻む
この攻撃に耐えられず残りの二体も倒れ伏し、安全が確保できた
「ふぅ、お疲れ様。リュウヤ君ありがとう」
「いえ、僕が言わなくても皆さんならすぐ気づいて対応してました」
「そんなことないわ。お陰で素早く対処することが出来たわ。もしまた気づいたらよろしくね」
「分かりました」
護衛任務での初戦闘で少し役に立つ事が出来た
銀翼の戦闘もしっかりとした連携で熟れていて流石Cランク冒険者の先輩だ
この調子なら問題なく進めるだろう
それから何度か魔物は出たがその度に銀翼が倒していき、特に問題が起こることもなく僕達は進む事ができた
しかし、もうすぐ森を抜けるという位置まで来たところで問題が起きた
「森の出口付近に反応がありますね。数は・・・・・・20です」
「20!?・・・それだけの数が集まってるとなると魔物ではないな。同業者か?」
「いえ、この魔法は敵意がある人にしか反応しません。つまり・・・」
「盗賊の類の可能性が高いか。どうする?」
「そうね、狙いが本当に私達なら奇襲を仕掛けてくる筈だわ。なら逆に奇襲を仕掛けてあげましょ」
前回盗賊に行った奇襲を今回もやることになるなんてな
こうして盗賊に奇襲をかけるべく、作戦会議が開かれた
投稿遅れてしまい申し訳ありません
※11月12日変更
次話金曜20時投稿予定でしたが19時に変更させていただきます
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