19話 名匠ガルバン
3日間休むことにした僕達は、1日目に買い出しと街の観光
2日目は各々が好きなことをして過ごした
僕は昼頃までベッドで寛ぎながら疲れを癒し、午後は嫌がるガーフを無理やり連れて先日の騒動で忘れていた従魔登録を済ませてきた
アイシャは味の研究とレパートリーを増やす為にとグレイスさんのお手伝い兼料理の修行をしていた
そして最終日の3日目、僕達は新しい装備を買う為にカルロさんのお店へと来ていた
「おぉ久しぶりだな、お前さんらもうCランクに上がったんだってなぁ。しかもひと騒動も起こしたとかで噂になってるぞ」
「先日の事がもうここまで広まってるんですか・・・」
「武器防具の店だからな。色んな冒険者が来るから情報なんて筒抜けだ。それで?今日はどんな用件だ?」
「新しい防具とアイシャに武器をと思いまして、何か良さそうなのありますか?」
今回はアイシャの魔法の威力底上げを図る為、武器を持たせることにした
「なるほどな、嬢ちゃんは確か魔道士だったよな」
「はっはい。魔法の威力が増幅出来るような武器を探してまして」
「そうだなぁ、魔道士で能力向上させる武器といえば杖が無難だが・・・生憎今うちの店には新人向けの杖しかなくてな。嬢ちゃんの実力に合う杖が今うちにはないんだ」
新人向けの杖ではアイシャの能力向上には期待出来ないだろう
今回は武器は諦め防具の話に切り替えようとするとカルロさんが話を続けた
「この街一番の鍛冶師、名匠と呼ばれているドワーフのガルバンとこに行ってみたらどうだ?あそこならお目当ての武器が見つかるはずだ」
「名匠ガルバン・・・分かりました、行ってみます。っと防具買うの忘れるところだった」
「いや、防具もそこで買うといい。うちは中堅冒険者までを客層として武器防具を取り揃えてるからな。お前さんらの様なもっと上にいく冒険者はそれに相応しい装備を身につけろ。ま、たった一週間ぽっちじゃ大して役にたてなかったがな」
「いえ、カルロさんには短い間でしたが色々教えてもらいました。今度奢らせて下さい」
カルロさんはやすらぎ亭の常連で、僕達が働いてる時間帯によく来ていた
仕事の合間に冒険者についてや装備のメンテナンスの仕方等、冒険者の知り合いがいない僕達に色々と教えてくれてたとても感謝している
「ハッハッハッ!子供に奢られる程困っちゃいねぇよ!ま、酒が飲める歳にでもなったら付き合ってやるよ」
そう言うと一枚の紙切れをこちらに渡してきた
そこには簡単な地図が書かれていた
「ガルバンとこの鍛冶屋までの地図だ。カルロの紹介でき来たって言えば分かるからよ」
「分かりました、ありがとうございます」
一言お礼を言ってカルロさんの店をあとにし、名匠と呼ばれているガルバンさんの鍛冶屋へと向かう
この街に来て様々な異種族を見てきたがドワーフは見かけた事がなかったのでそういった意味でも会えるのが非常に楽しみだ
「アイシャはドワーフに会ったことはある?」
「ありませんねぇ。ドワーフはここから国境を跨いだベルセリア帝国に位置するロニエスタ鉱山に住んでいると聞いた事があります」
「へぇ、いつか行ってみたいね」
ベルセリア帝国か。また行ってみたい場所が増えたな
「あっあれじゃないですか?」
そんな話をしているといつの間にかガルバンさんの鍛冶屋に到着した
煙突からは煙が上がっていて中からは金槌を打ちつける金属音が鳴り響いている
「お邪魔しまーす……」
中に入ると凄まじい勢いで燃えている竈の熱気がこちらにも伝わってきた
そこには汗だくになりながら鉄を打っている男の姿があった
長く伸ばした無精髭に厳格そうな顔とは打って変わって小柄な体躯だが、日頃金槌を振るっている為か丸太のように太い腕
漫画やアニメで見たドワーフそのものが目の前にいた
「あのぉ、すいません」
声をかけるが反応はない
鉄を打っている音で気づかないのか、先程より声を大きめにして再び声をかける
「あのー」
反応がない。今度はかなり大きめに呼びかける
「あのー!」
「ん?おぉ、悪いがちょっと待ってくれ。これが完成するまでもう少しなんだ」
かなり集中していたようだ
邪魔するのも悪いので完成するまで中を見させてもらった
辺りを見ると一目見て分かるような高品質な武器や防具が置かれていてた
ここなら確かにアイシャに合う杖が見つかるかもしれない
一時間程待ちようやく作業が終わったのか、ガルバンさんがこちらに声をかけてきた
「待たせたな、半端なところで止めちまう訳にはいかなかったんでな」
「いえ、こちらこそお仕事中失礼しました」
「で、アンタらは何の用できたんだ?」
「僕達はカルロさんの紹介で防具とこちらの彼女に合う杖を求めて来たんですけど」
「なんだ、カルロんとこから来た客かい。こちらに寄越すなんざ珍しいな。お嬢ちゃん、ちょっと失礼するよ」
そう言うとグルグルと周りアイシャの体を隅々まで観察する
「あ、あのぉ……」
「次は兄ちゃんだ」
同じよう隅々まで観察され、それが終わると元の位置へと戻っていく
「ふむ、二人共かなりやるようだな」
「今ので分かるんですか?」
「こちとらこれでも鍛冶一筋70年だからな。どれくらいの実力かは見ればおおよそ分かる。その若さとは裏腹に相当な力があると見た」
長年の経験から鍛えられた洞察力というものだろうか
「それで杖と防具だったな。防具は今装備してる感じのと同じでいいのかい?」
「そうですね。今のより性能のいい物に買い替えようと思いまして。それと杖は魔法威力を強化出来るようなのがあればいいんですけど」
「ちょっと待ってな」
カルロさんが奥の部屋へと入っていく
ガタガタと音を立てながら何かを探してるようだ
数分してカルロさんが手に装備を持って戻ってきた
「これは呪羊の皮と毛で作ったローブだ魔法能力を上げてくれて更に状態異常を無効化してくれる一品だ」
見た目は今のと変わらない白いローブだが性能の差は段違いだ。状態異常無効化もついてるいい品だ
「それでこっちのマントが幽騎士のマントを加工して作ったもので付加効果はないんだがその分物理能力を大幅に向上してくれる。胸当てはミスリルを使ったもので鉄より軽くて丈夫な物だぞ」
こちらのマントも今までの上位互換と呼べる代物だ。ミスリルの胸当ては持ってみると鉄よりずっと軽く、かなり動きやすそうだ
それぞれ渡された装備を試着してみることにした
「うん、いい感じ。アイシャはどう?」
「こちらもいい感じです」
「決まりだな。で、あとは杖なんだが……持ち手の部分は年出来てるんだが魔力を増幅して威力を上げて放つのに必要な宝玉が今ないんだ」
「それはどうすれば手に入るんですか?」
「ローズワイバーンからドロップするんだが、奴ら年中飛んでて滅多に降りてこないんだ。だから中々手に入らなくてな」
ガルバンさんがどうしたものかと考えあぐねている
空が飛べる僕達ならもしかしたらいけるかもしれない
「それ、僕達で取ってきましょうか?」
「出来るのか?」
「一応二人共飛行手段はあるので倒せると思います」
「飛行魔法まで扱えるのか、なら問題はなさそうだな。だがローズワイバーンは強くはないが臆病で一撃で倒さないとすぐに逃げられる。注意しな」
一撃か。アイシャの阻害魔法と僕の攻撃を合わせればいけるだろう
「分かりました。なんとかなると思います」
「今の時期だと恐らく花山にいると思う。飛んで向かっても1日はかかると思う。もし宝玉が取れたら杖の料金はいらねぇからな」
「それは有難いですね。じゃあこれは防具の代金です」
「それはレンタル扱いにしといてやるよ。代金は戻ってきてからでいい」
「本当ですか?何から何までありがとうございます。必ず取ってきますね」
ローズワイバーンを倒す為カルロさんの元をあとにする
「アイシャ、今からでも行けそう?」
「大丈夫です。買い出しはもう済んでるのでいつでも行けます。ガーフ君はどうしますか?」
「この3日間しっかり療養してたから大丈夫じゃないかな。連れていかないと騒ぎそうだし」
「わふん」
謎のドヤ顔をするガーフ
今回は空中戦だから仕事はないだろうな・・・
こうして僕達はアイシャの杖の素材を求めて花山へと向かった
次回は土曜18時に投稿します
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