1話 龍神との邂逅経て、異世界へ降り立つ
「・・・ん、ここは・・・無事転生できたのかな」
目が覚めると森の中にいた。目の前には池があり穏やかで気持ちのいい風、木々の葉擦れの音が耳触りのいい心地よい場所だった
「気持ちのいい場所だなぁ。ここが異世界じゃなかったらのんびりしたいところだけど・・・まずは自分の体のチェックだな」
そう言いながら立ち上がり、自分の体を隅々まで確認する
「龍人とは言ってたけど見た目は普通の人間と変わらないな。あとは転生前より少し幼くなったか?目線がいつもより低いな。14、5歳ってところかな?」
今度は池に近づき覗き込み自分の顔を確認する。燃えるような赤い髪で端正な顔立ちをしており好青年という感じだった
「おー、自分で言うのもなんだけど大人になるのが楽しみだな。髪の毛の色は龍神の力を受け取った影響なのかな?ちょっと派手な感じするけどまぁ仕方ないか」
一通り確認を終えて再び座り込み、今後の方針を決める
「まずはやっぱり拠点の確保だよなぁ。とりあえずここから一番近い村や町で物資の調達をして装備も整えて・・・って僕、お金持ってないじゃん・・・あれ?これいきなり詰んでない?」
なにをするにしてもお金がないと始まらない。どうしたものかと考えあぐねていると、ふとどこからか声が聞こえてきた
「無事転生も出来てなによりだったの。どうじゃ新しい体の具合は」
「その声と喋り方、イグニ・・・龍神様ですか」
「あぁよいよい。龍神様などと堅苦しいのは我を信仰しているものだけで十分じゃ。イグニアスでよい」
「そうですか、ではイグニアスさんと呼ばせてもらいます。転生前よりずっと良くなっていて感謝してます!」
「それはなにより。おっとそうじゃった、お主にこれを渡すのと伝え忘れた事があってのぉそれで出向いたのじゃった。まずは、ほれ」
そういうと異空間のようなものが出現し、そこから革袋が出てきて地面に放り出される。その他に短剣に胸当てや篭手等、防具一式が出てきた
「その革袋には収納魔法が施されている。馬車一台分位は入れることが出来るぞ そこに食料と水、野営が出来る道具と地図にあとはしばらく生活出来るほどの金を入れておいた。防具は革素材だがこの辺りの魔物ならば問題なかろう。魔物は倒すと魔石に変換されるので街で換金するとよい」
「収納魔法!便利ですねぇ。助かります!お金がなくてどうしようか迷ってたところだったんです。これでとりあえずはなんとかなりそうです。それで伝え忘れた事というのは?」
「うむ、お主のステータスについてじゃ。手を前に出して横に軽く振ってみよ」
言われた通り手をスライドするように横に振ると空中にウィンドウのようなものが現れ、そこに自分のステータスが記載されていた
ナグモ リュウヤ 15歳(男性)
Lv1 種族:龍人
HP:100 MP:20
攻撃力:12 防御力:16 敏捷性:10
魔法攻撃:8 魔法防御:10
スキル:龍爪 、龍の加護
「これが今現在の僕のステータスか。あ、龍の加護の他にスキルがついてる・・・龍爪?」
「龍爪は龍人の初期攻撃スキルじゃな。どれ、ひとつ手ほどきをしてやろう まず意識を集中し、己の奥底にある龍の加護の力を感じるのだ」
お、奥底にある加護の力?よく分からないが目を閉じ意識を集中して、手を胸に当てながら加護の力とやらを探り出す
少しするとルビーの様に赤い宝玉のような物が胸にあるのを感じた。宝玉は煌々としていてとても綺麗だった
「綺麗な赤い玉が見えました。これが龍の加護の源なんですか?」
「そうじゃ それを龍玉という。加護の力を引き出す源となっておる それでその力を己の龍脈へと流し入れるんじゃ。そうじゃな、血管をイメージして血を自分の指先へと流すようなイメージをするのだ」
先程見えた龍玉の力を言われた通りのイメージで指先まで力を流してみる・・・すると龍の腕が自分の腕を纏うように顕現する
拳の先には鋭い爪がありそこから肘の辺りまで龍の硬い鱗に覆われている。これが僕の初めてのスキルか!
「うむ、問題なく出来たようじゃの。それが龍爪だ。どれ試しにそこの木で試してみよ」
そう言われ、前方にある直径1mはあるであろうそこそこ大きい木に狙いを定めて爪を思い切り振り下ろしてみる。すると自分でも驚くほどスパッといき木は半分位抉れてゆっくりと倒れる
「ふむ、初めてならこんなもんかの。他のスキルや魔法も要領は同じゃからその感覚をマスターすればあとは簡単じゃ」
「なるほど、分かりました。ご指導ありがとうございます」
「なに、これくらいは指南しておかないとな。序盤で死なれては流石に面目ないからのぉ・・・さて、用事も済んだことだしあまり長居するのも良くないからそろそろ行くとするかの。もしなにか困った事があったら龍の祠に来るといい
そこで少しの時間じゃが我を呼び出すことが出来る。これは加護を受けているもののみが行えるんじゃ」
「なにからなにまでありがとうございました。もし困ったらその時はお世話になります」
「うむ、ではさらばじゃ」
そういうとイグニアスさんの気配がなくなり再び一人となった。問題であった食料にお金も手に入れることが出来て一安心する
初めて身に着ける防具をなんとか装着し短剣を腰にさす。貰った地図を見てここから一番近い村を調べたところそう遠くない場所にアルカ村というのがあるらしい。ここからさほど離れていないようだし日がちょうど真上にあるから日が沈むまでには着くだろう
アルカ村で色々情報を集め準備が整ったらその先にある街、ディグリアに向かいギルドに加入するとしよう。アルカ村からディグリアまでは少し距離があるようでアルカ村で馬車等の乗り物が見つかればいいのだが、そこはあまり期待しないでおこう
そうと決まれば地図をしまい、革袋の紐を肩にかけ歩を進める。ここから僕の冒険が始まるんだと心躍らせて目的地へと向かう
「さぁ、いざアルカ村へ!」