15話 クワトロサイクロプス戦
「もう少しで見えてくると思います」
クワトロサイクロプスがいると言われている森へと向かう
道中空から林に続く道を見てみると、途中途中斜度がキツくほとんど崖のようになっていた
僕の方はともかくアイシャにはちょっときついだろう。空を飛べるようになって本当によかった
「あっあれがそうかな」
「そうみたいです。中心に一際大きい樹がありますね」
「ほんとだ。とりあえず一旦降りようか」
飛び始めてから20分程移動した場所に森が見えてきたので一旦降りることにした
上から森を見てた時は気にならなかったが下から見るとどの樹もかなりの背丈だった
それらを圧倒するほど大きかった中心の樹はきっと目の前で見たらとんでもない大きさだろう
「ここからどうします?」
「相手がどこにいるか分からないし一先ず中心にあった大樹に行ってみようか」
森の中を進んでいき中心部へ目指す
木々が密集していて日の光があまり当たらない
これでは上から見つけるのは難しかっただろうから下に降りて正解だったな
人が出入りしていないので草も伸びきっている
僕達は草を踏みつけ道を作りながら進んでいく
クワトロサイクロプスはかなりの巨体らしいのですぐ見つけるはずだ
しばらく歩いていくと沢がある場所へとやってきた
「わぁ、のどかな場所ですねぇ」
「上流の方だから水も綺麗だね・・・ん?」
綺麗だった水が徐々に濁っていき、やがて真っ赤になっていった
「これ・・・血ですよね」
「ここより上流の方でなにかあったみたい。クワトロサイクロプスがいるかもしれないから行ってみよう」
血が流れてくる上流の方へと向かう
するとそこには野生の獣を食っているクワトロサイクロプスがいた
「・・・見つけた」
しゃがんでいたので一瞬大岩に見えた。それほど大きかった
青白柱い肌で丸太の様な腕が4本。獣を骨まで食べているのか、のどかだった空間に骨の砕く音が響き渡る
ステータスを覗くとレベルは僕等より低い割にHP2000に物理攻撃力と物理防御が1500と異常に高い
そのかわり魔法防御値が物理の半分以下と低いようだ
スキルは威圧に再生、硬化、魔力撃となっていた
(再生に硬化か。厄介だな)
アイシャに近づき小声で伝える
「アイシャ、どうやら奴は魔法攻撃に弱いみたいだから後ろから近づいて魔法で攻撃して。その後も僕が奴の注意を引き付けるから攻撃をお願い」
「分かりました。では最初に新しく覚えた一番威力の高い魔法を使います。魔力聖水を使いますね」
アイシャが新たに覚えた攻撃魔法は威力が高いが発動に時間がかかるのとMP消費が多い
なので使用後は魔力聖水でMPを回復する必要がある
食事に夢中になっている間に二手に分かれて近づいていく
位置についたアイシャがこちらの合図で魔法を放つ
「獄炎柱!」
アイシャが魔法を発動するとクワトロサイクロプスを囲むように6本の炎の柱が出現する
相手は突然炎が自分の周りに出てきて驚いているようだ
6本の炎柱が接近していきクワトロサイクロプスの逃げ場をなくし、やがて1本の炎柱となって襲ってくる
「グオオオオオオオオオオオオ!」
凄まじい雄叫びをあげながら悶えている。かなり効いているようだ
こちらまで轟々と燃えている炎の熱気が伝わってくる
獄炎柱が消えるとクワトロサイクロプスがのっそりと立ち上がる
2階建ての家を優に超えていて4、5mはあった
そしてアイシャの攻撃で受けた火傷が再生によって回復されていく
だが再生できるのはあくまで体のみで、HPの回復まではできないようだ
「大丈夫!ちゃんと効いてる!手筈通り僕が引き付けるからよろしく!」
「わかりました!お願いします!」
そう答えて、アイシャが先程用意した魔力聖水を飲みMPを回復する
次は僕の番だ。痛みで怒っている相手の前に立つ
「こっちだ!”強制煽動”!」
強制煽動。相手の注意を強制的にこちらへ引き付けるスキル
思惑通りこちらの方を向き、怒りをぶつけてくるクワトロサイクロプス
スキル”威圧”を使ってこちらにプレッシャーをかけてくる
格下相手なら身動きが取れなくなるようだが、レベルが上回っている僕にはピリッと体が少し痺れる程度だ
それを不満に思ったのか4本の腕を振り回してこちらに向かってくる
一撃一撃の風を切る音が凄まじく当たったらひとたまりもなさそうだ
相手の攻撃を掻い潜りながらこちらも龍爪、龍脚で攻撃するが、物理防御が高い上にスキル硬化によって皮膚が固くなり更に攻撃が通りにくくなっており殆どダメージは入らなかった
その代わりにアイシャが魔法でクワトロサイクロプスの背を撃ち着々とダメージを与えていく
強制煽動が切れると再度発動させてこちらに気を引かせ続ける
振り回しているだけでは当たらないと感じたのか、今度は沢の周りにある砂利や人の顔ほどある石を手に取りこちらに向けて投げつけてくる
広範囲に投げられた石礫は流石に避けきる事はできないがダメージはない
が、無数の石礫が視界を妨げる
その一瞬動きが鈍ったところにクワトロサイクロプスが見逃さず接近してきて拳を打ち込んでくる
避けるのも障壁の発動も間に合わない
ダメージを極力減らす為、発動させてる龍爪、龍脚でガードする
「痛った!ダメージは減らせたけど痛ったい!一旦距離を・・・グフッ」
拳の攻撃は確かにガードしたがその後遅れて体内に衝撃が走る
油断した・・・これが魔力撃か
「リュウヤ君!大丈夫ですか!?」
「大丈夫!そのまま続けて!」
口から血を吹き出したので重傷のように見てとれるが、実際はそんなにダメージはない
幸い追撃してこなかったので急いで自分の体にヒールをかけ回復する
その間にクワトロサイクロプスを何やら木々の方に向かっている
逃げるのかと思ったら手頃な木を2本掴んで抜き取った
その木を半分に折り、4本全ての手に持つ
「きゃあっ!」
距離をとっていたアイシャにも当たりそうな程無闇矢鱈に振り回してきた
効果が切れたので3度目の強制煽動を発動する。しかし1、2回目とは違い効果が薄いのか反応が遅かった
何度も同じ相手に使っていると効果が薄れるようだ
4度目はきっと効かないだろう、この効果が切れるまでに決着をつけたい
こちらに向かってくるクワトロサイクロプス
手に持った木を振り回して攻撃してくるがそれを全て避ける
正直こちらとしてはさっきの魔力撃を使った攻撃の方が厄介だった
けどこれだけ振り回されるとこちらも攻撃が出来ない
「動きを封じるしかないか。龍鎖!」
相手の体を締め付け動きを封じる魔法
クワトロサイクロプスの足元から蛇のような龍が出現し脚や腕に絡みついていく
これで動きは止まった。けど長くは続かない
「大してダメージ入らないけど・・・ファイア!」
「グオオオオオオオオオ!」
相手の目に向けて放ったファイアが予想外に効いたのか苦しんでいる
魔物大全には特徴位しか書かれていなかったが、どうやら目が弱点のようだ
「リュウヤ君離れてください!もう一回いきます。獄炎柱!」
アイシャの合図で距離を取る
魔力聖水をもう一本飲んだのか、再度獄炎柱を放つ
龍鎖によって身動きの取れないクワトロサイクロプスに炎柱が襲う
またけたたましい叫び声が響き渡る
炎柱が無くなると再生が追いつかず黒焦げになったクワトロサイクロプスが立ち尽くしている
やがて膝をついて地面に倒れ込み、体が消滅していき魔石となった
「や、やりましたね。魔法をずっと撃ってたのに中々倒れなくて大変でした」
「お疲れ様、今回は攻撃任せっぱなしだったから疲れたよね。ありがとう」
「いえ、リュウヤ君が注意を引き付けてくれていたのでこちらは戦いやすかったです」
「とにかくこれでCランクに昇格だね。休憩したら街に戻ろうか」
「そうですね。時間はあるので夜には着くと思います」
休憩中にステータスを確認すると今回の討伐でお互いレベルが2ずつ上がった
僕の方はステータスが上がっただけだったがアイシャの方は新たに回復魔法”回復域”を習得した
ヒールより上位で範囲内の味方を回復する魔法
今回は使わなかったが他にも色々と新しく魔法を習得している
支援魔法だけでなく強力な攻撃魔法も覚えていって非常に助かっている
こちらも負けずに頑張らなくては!
ナグモ リュウヤ 15歳(男性)
Lv45 種族:龍人
HP:2200 MP:920
攻撃力:310 防御力:305+10 敏捷性:297
魔法攻撃:215 魔法防御:232+8
スキル:龍爪+飛爪斬、龍脚+震脚、龍の眼+探索、龍神の恩寵、強制煽動、飛翔、龍の加護
魔法:ファイア、ヒール、障壁、龍鎖、探知網
アイシャ 14歳(女性)
Lv42 種族:妖狐
HP:1560 MP:1900
攻撃力:155 防御力:210 敏捷性:230
魔法攻撃:302+10 魔法防御:280+10
スキル:霊気感知、精霊の加護
魔法:朧火、アイスネイル、ウォーターボール、ヒール、回復域、ポイズンキュア
能力強化、鈍化、幻影、空間収納、浮遊、氷壁、氷槍、獄炎柱
次回は金曜19時に投稿します
読んでいただけると嬉しいです。よろしくお願いします