10話 アイシャの服と装備
多くの人が行き来をしているディグリアの大通り。そこには多くの種族も目にした
牛の頭をした牛頭人、人型となった蜥蜴人や兎人とその他にもたくさんの種族がいて気分が高揚した
「人がいっぱいだなぁ。朝からこんなに賑わってるなんて、逸れないようにしないと」
時刻はもうすぐ9時を回るというところでお腹も空いてきた
そういえばまだ朝食を食べていなかったな
「アイシャ服屋行く前にちょっと遅くなっちゃったけど朝食にしようか」
「そういえばまだ食べていませんでしたね」
この通りはお店がたくさんあってよりどりみどりだ。選んでいるだけで時間が過ぎてしまいそうだ
「アイシャは何が食べたい?」
「そうですねぇ私は・・・クンクン。あちらからいい香りがしてきます」
アイシャの指差す先はパン屋だった。たしかにここからでも焼き立てのパンの香ばしい匂いが漂ってくる
「あそこのパン屋に入ってみようか」
「はい!」
パン屋の扉を開けると中は大混雑していた
他の店はそこそこ人が入っている程度だったのだがここは凄いな。人気店なのだろうか
「す、すごいですね。パン買えるでしょうか」
「アイシャはここで待ってて。なんとかして買ってくるよ」
人混みを掻き分けながら奥へ進んでいく
すると前方に”おまかせセット5点”というのが目についた
サッとそれを取って会計へと進む。銅貨1枚と鉄貨2枚を渡してアイシャの元へと戻る
「なんとか買えたけど選ぶ余裕はなかったよ。5個入ってるからこれを分けよっか」
「ありがとうございます。いただきます」
パン屋の横に設置されていたテーブルで頂く
袋の中にはクロワッサンが2つにホットドッグ、クリームがたっぷり入ったパン、そしてカレーの代わりにビーフシチューを入れて揚げたパンが個別に包装されて入れてあった
「アイシャはどれがいい?好きなの選んでよ」
「いえいえ、リュウヤ君のお金で買ったものなのでリュウヤ君が先に選んで下さい。私は残ったものでいいので」
と言いながらクリームの入ったパンを凝視している
分かりやすい・・・ここで押し問答していても仕方ないので先に選ばせてもらうことにしよう
「じゃあこのホットドッグとクロワッサンを貰うよ。こっちのシチューパンは半分こでいいかな?」
「はい!じゃあ頂きますね。パクッ・・・このクロワッサンサクサクで美味しいですー♪」
アイシャにつられてクロワッサンを口に入れる。確かに美味しい
前世もパン派だったのでよく食べていたがその中でも上位に入る美味しさだ
他のパンも美味しくて口に運ぶ手が止まらずあっという間に平らげた
アイシャは楽しみにしていたクリームのパンを口に運ぶ
「ン〜〜〜〜♪」
余程美味しかったのか、尻尾をフリフリと振っている
最後の一口をしっかり味わいながら満足気な顔をする
「ふぅーどれも美味しかったですー。特にクリームパン♪」
「だね。また来よっか あの人混みに入るのは大変だけどね」
「絶対来ましょう!」
食い気味にアイシャがそう言った
余程クリームパンが気に入ったようだな。良かった
「じゃあそろそろ服屋に行ってみよっか」
テーブルの上を綺麗にし、服屋へと向かう
アイシャに案内されついていくと服屋が見えてきた
店の中に入ると女性物の服がたくさん掛けられていた
「じゃあ僕は外で待ってるから決まったら声かけてね」
「あのぉ、リュウヤ君も一緒に探すの手伝ってくれませんか?」
「え?でも僕こういうのは全然詳しくないし・・・」
「リュウヤ君の意見を聞かせてもらえればいいので、お願いします」
「そう?分かった。力になれるか分からないけど僕で良ければ」
アイシャの後ろについて行って服探しを手伝うことになったが、こういう経験はないので少し緊張するな
しばらくしてアイシャが服を2着持ってきた
「リュウヤ君、こっちとこっちどちらがいいと思いますか?」
自分の体に合わせて問いかけてくる
ワンピースか。白か青、どちらも似合いそうだが・・・
「白も良さそうだけど僕的には青、かな」
「分かりました!じゃあ試着してきますね」
試着室に入ったアイシャが着替え終わるの待つ
こういう場に男1人だけというのはやはり気恥ずかしい・・・
少しして試着室のカーテンが開く音がした
白雪のような銀髪に青のワンピースがマッチしていてとても似合っていた
「どうでしょうか?」
「うん、凄く似合ってていいと思うよ」
「そ、そうですか?えへへ、じゃあこれを買わせてもらいます」
尻尾をまたフリフリと振っていた
ちゃんと尻尾がある種族向けの服もあるんだなぁ
その後、ワンピースの他にカーディガンやスカート、パーカー等色々な組み合わせができるように服選びをした
「全部で銀貨5枚になります」
「はい、じゃあこれで」
お勘定を済まして服屋を出る
アイシャは気に入ったものが買えてご機嫌なようだ
「リュウヤ君ありがとうございました。次は装備ですね」
「だね。装備売ってる場所はさっきの大通りで見かけたからそこに行こっか」
最初に着ていたワンピースをそのまま着て街を歩く
機嫌のいいアイシャはワンピースをはためかせるながら店へと向かう
「ここだな。入ろうか」
西部劇に出てくるようなスイングドアを押して入ると、中には様々な武器、防具が並べられていた
「いらっしゃい、兄ちゃん達見ねぇ顔だな」
強面の髭を生やした男が声をかけてきた。どうやらここの店主のようだ
「今日ディグリアに着いたばかりなんです。それでまずこの子の装備を買いに来たんですけど」
「お、お願いします」
「ほぉ、随分べっぴんな嬢ちゃんだな。で、どんなのをご所望だ?」
アイシャは魔法特化だから魔法能力を伸ばせる装備の方がいいだろう
「魔法能力を強化できて防御力もそこそこある防具はありますか?」
「魔法強化だとグリッタースワンのローブはどうだ?魔法攻撃、魔法防御どちらも強化できる」
白と赤を基調にしたローブか。よく見ると微かに輝いていて綺麗だな
肝心の性能を確認する。魔法攻撃+10に魔法防御+10か
「アイシャこれどう?その服の上からでいいから試しに着てみてよ」
「分かりました。よいしょ・・・っと いいですねこれ。ちょっとだけ強くなった気がします!」
うん、今はこれで十分だろう。あとは中に鎖帷子でも装備すればいいかな
その他に自分用として鉄の胸当てと黒のマント、それと疲労が軽減するブーツをアイシャのも含め2つ購入した
鉄の胸当ては防御を+10、黒のマントは魔法防御を+8で僕も防御面を強化した
「えーっと、全部で金貨2枚だな」
「はい、じゃあこれで。あっそうだギルドで冒険者登録をしたいんですがどこにありますか?」
「ギルドはこの大通りを真っ直ぐ進んだところにあるぞ。兄ちゃん達ここで活動するならうちの店贔屓にしてくれよな」
「はい、しばらくはここを拠点にしようと思ってるのでなにかあったらまた来ますね。あっ僕の名前はリュウヤと言います」
「おう、俺の名前はカルロだ。よろしくな」
挨拶を済ませ購入した装備を革袋に入れて店を後にする
強面だったが感じの良さそうな人でよかった
「さぁあとはギルドで登録だね。この通りを真っ直ぐ進んだところと言ってたし早速向かおうか」
「どんなところでしょうね。以前よく行ってた町にもギルドはありましたが入るのは初めてなので」
「そうなんだ。とりあえず登録に必要なお金はあるから行ってみよう」
これだけの人口ならきっと冒険者も多いことだろう。中には僕よりずっと強い人達もいるはずだ
エレナさんが言っていたSランク冒険者パーティにも会えるかもしれない。そう思うと今から楽しみだ
明日も19時に投稿します
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