妖精と怪物のおはなし
むかしむかしあるところに、ちいさなちいさな森がありました。
その森には、3にんの妖精が住んでいました。
赤い妖精はいつも怒っていて、悪いことをしたひとに噛みついていました。
青い妖精はとても優しく、悲しんでいるひとに抱きついて元気づけていました。
黄色い妖精はすごく元気で、遊びに来たひととおにごっこをしていました。
ある日、その森に悪い魔女がやってきました。
魔女は森を気に入り、森の木を倒しておうちを建てようとしました。
もちろん妖精たちは黙ってはいません。
大切な森をまもるため、魔女を説得しようとしました。
赤い妖精がいいました。
「まじょさんまじょさん、この森はみんなのものだよ。そんなことしたら、みんなのすむばしょがなくなっちゃうよ。」
しかし、魔女は知らんぷりをしました。
怒った赤い妖精は、魔女のうでに噛みつきました。
だけどそれも知らんぷり。
赤い妖精はぷんぷんと怒りました。
青い妖精がいいました。
「まじょさんまじょさん、おうちがないの?それならとってもかわいそう。」
魔女はまた知らんぷりをしました。
かわいそうになった青い妖精は、魔女の背中に抱きついて元気づけようとしました。
しかし、魔女はなんと青い妖精を掴んで投げ飛ばしてしまったのです。
青い妖精はびっくりして泣いてしまいました。
黄色い妖精がいいました。
「まじょさんまじょさん、もしかしてみんなとおともだちになりたいの?だったらいっしょにあそぼう。おにごっこやろう。」
やっぱりまじょは知らんぷり。
自分がおにになった黄色い妖精は、顔を隠して数をかぞえました。
しかし、魔女は妖精たちをにらみつけ、こういいました。
「あんたたちうるさいねえ。この森をどうしようとわたしの勝手じゃないか。あんまりしつこいと、怖い魔法をかけてやろうか?」
妖精たちは、魔法がどれほど怖いものなのか知っていました。
困った妖精たちは、女神さまのもとへ行き、このことをはなしました。
女神さまは妖精たちにこういいました。
「森をまもりたいなら、あなたたちの手でまもりなさい。そのためのちからは、わたしがわけてあげます。ただし、絶対ににそれ以上のちからを望んではいけませんよ。」
女神さまは妖精たちにちからをわけあたえました。
赤い妖精には戦いのちからを。
青い妖精には護りのちからを。
黄色い妖精には想いのちからを。
ちからを受け取った妖精たちは、さっそく森へ行き魔女を追い払おうとしました。
赤い妖精は、戦いのちからを使って魔女に思いっきり噛みつきました。
青い妖精は、護りのちからを使って森のみんなを護りました。
黄色い妖精は、想いのちからを使って魔女にみんなの思いを伝えようとしました。
しかし、魔女は逃げるどころか怒って妖精たちに魔法をかけてしまいました。
魔法をかけられた妖精たちは、姿が変わってしまいました。
赤い妖精は蛇の姿に。
青い妖精は小鳥の姿に。
黄色い妖精は小犬の姿に。
魔法をかけられた妖精たちを見て魔女は大笑い。
魔女は、さらに魔法をかけようとしました。
それを見て妖精たちは、慌てて逃げ出しました。
妖精たちは逃げていくうち、暗い暗い森の奥へやってきました。
そこには、魔女に魔法をかけられた動物たちがひっそりと暮らしていたのです。
その様子を見た妖精たちは、自分たちが何とかしなくちゃいけないと思い、魔女を倒せるくらい強くなりたいと願いました。
すると、たちまち妖精たちの姿が変わっていきました。
赤い妖精は、大きな牙を持つ大蛇に。
青い妖精は、全てを包み込む翼をもつ怪鳥に。
黄色い妖精は、音より速い狼に。
妖精たちは、今度こそと魔女の元へ行きました。
変わり果てた妖精たちの姿に魔女は仰天し、立ち尽くしてしまいました。
その隙を逃すまいと、赤い妖精は魔女に食らいつき、青い妖精は逃げられぬよう翼で包み込み、黄色い妖精は圧倒的な速さで魔女を翻弄しました。
そうしているうち、遂に魔女は動かなくなりました。
しかし、それでも妖精たちは、脅威は魔女だけではないと考え、どんな者が現れようとも森を護れるよう、更にちからを求めるようになりました。
むかしむかしあるところに、ちいさなちいさな森がありました。
その森には3匹の怪物が住んでいました。
赤い大蛇はいつも怒っていて、悪いことをしたひとに噛みついていました。
青い怪鳥はとても優しく、悲しんでいるひとに抱きついて元気づけていました。
黄色い狼はすごく元気で、遊びに来たひととおにごっこをしていました。
ある日、森にやってきた賢者たちが3匹の怪物を封印し、森に平和が訪れました。
今、その森には3にんの妖精も、3匹の怪物もいません。
これは、むかーしむかしのおはなし。