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♯5

 翌日、オレは志願兵団本部へ出頭し、新しく交付された認識票を貰って、郊外にある兵団宿舎へと向かった。認識票は、毎月の給与を本部で受け取る時にも必要になり、再発行には時間と金が必要な大事な装備である。


 オレを案内してくれた本部の人は、事務方だけど階級が偉いらしく、廊下ですれ違う兵達が敬礼で迎えてくれる。よく観察して、階級証の違いはなんとか覚えた。こいつをしっかり覚えないと、上官を無視して、部下に敬礼しかねない。オレはクラスがいきなり上なので、五十人の小隊を預かる事になる。


 アドリア小隊で、指揮の真似事は練習している。でも、所詮付け焼刃なので心配だったけど、副官が用意されていて、細かい事は任せておけば大丈夫なよう配慮されていた。


 ヴォルフガング将軍は、有名な指揮官らしく、彼が自分の指揮下にオレの小隊を入れると明言したので、俺の名前にも箔がついたようだ。


「彼がタチバナの副官になるレオナルドです。レオ、タチバナは傭兵として腕を買われた人物だ。個の戦闘能力は素晴らしいと思うので、集団の指揮はお前がサポートするのだ。わかるな」


「はい。了解しました」


 訓練場に整列していた小隊のかなから、指名されて出てきたレオと呼ばれる男は、ショートカットで小柄ながらも、動きに隙が無い。オレの前にずらっと並んでる五十名の中では、性能が良さそうだ。


 オレを案内してくれた本部の男は、あまりオレの飛び級に納得がいってないのか、尊大な態度だったけど、オレは新顔だから当分は仕方ない。彼はレオに後を任せて直ぐに戻っていった。


「隊長、私の事はレオか軍曹とお呼びください。近々出動の様ですが、本日はまだ待機命令になっております。平時でしたらこれより訓練に入りますが、如何なさいますか」


 アドリアに念を押されたのは、自分の命を預けるんだから、タマ無しの腰抜け野郎のいう事なんて誰も聞きたがらない。


 素人のオレに向いてる方法は、進む時は常に先頭に立てという解りやすいアドバイスだ。それなら当然そのつもりだし、難しい事ではない。


「腕前を見せて貰う。全員だ」

「隊長、方法はどうしますか?隊長に見て貰いながら勝ち抜きとか……」

「全員オレが相手する。さあ、始めよう」


 アドリア小隊と同じく、五人ひと組みにして、敵に五人がかりで当てるつもりでいた。正直、人族では一対一だとばたばた倒されて敵が強くなってしまう。


 副長のレオを始め、全員がとまどっている様なので、はっきりと指名して行く事にした。


「君と、君、君、あと君と君、五人前に出なさい」


 呼ばれた者達が何事が始まるのかと、顔を見合わせながら前に出る。


「君達はいまから一つのチームだ。互いに連携してオークを倒すと想定してくれ。残念ながら一人ではオークに敗れる。なすすべもなく殺されるだろう。連携して誰も死なない様に堪える事が出来れば勝機がみえる。いいね?」


 五人は意味がわかってしっかり頷いた。


「オレがオークの役だ。殺せるように頑張るんだ」

「あ、あの、隊長。まだ武器は?」

「みな腰に下がっているだろう」

「それは、訓練用の剣じゃないですけど……」

「それで大丈夫だよ。最初やりにくいと思うけど、みんな慣れよう」

 

 ほぼ全員が、この隊長あたまおかしいのかな?という表情になってるけど、まずはやってみせるところから。


 「総員、抜刀!。他の全員も、真剣が飛んでくる可能性があるから、目を離すなよ」


 五人がようやく剣を抜き、もー仕方ないなといった風で、不用意に近づいてくる。ただ囲めばよいってものじゃない。


 ガーン! と重たい金属音が立て続けに訓練場に鳴り響き、五人の剣が一瞬で地面に落ちる。


「最初は勝手がわからないから仕方ない。しっかり本気になるんだ。みな剣を拾って」


 何が起こったのか誰もわからなかっただろう。オレが移動したのもよく解っていない。


「さあ、二本目いくぞ。始め!」


 今度は全員がしっかり身体に力も入り、隙無く構えている。だが連携が取れていないので、一人一人がばらばらだ。これでは順次撃破されてしまう。全員の剣を一撃で落として、呆然としている五人に告げる。


「一対一になっちゃ駄目だ。剣を拾って。三本目始め!」


 既に全員が本気になっていて、ちゃんと連携も取る様になって来た。観戦しているほかの隊員も、目をしっかり見開いて、全部みてとろうとしている。気がよそにいってる者が、一人も居ないのは優秀だと思う。四回目、五回目とやらせてみて、一旦五人を下げる。


「みんな要領はわかってきたね。一旦休んで五人で作戦を立てて練習、最後にもう一度やるから良い所をみせるんだ。次の五人を選ぶ、整列!」


 五人組みが十組、五十本勝負をして、更に二本づつ二十本。


 五人で話し合いをさせてから、また立ち会うと、誰がリーダー的な働きをしたのかが良くわかる。


 上手く回ってる五人は班長を定めて、そのまま練習させ、どうも噛みあわない五人はシャッフルして、班長を決めていく。満足の行く感じで組み分けが終了したあたりで、良い時間となった。


「今日はこれ位でいいだろう。最初に比べて随分動きが良くなったチームが三つだな。何か質問はあるか?」


「あの、隊長、隊長はエルフの所でオークとやって来たんですよね? オークってどれくらい強かったですか?」

「もちろん個人差は大きいけど、平均的な話をすれば、皆が一対一だったら、百回やって九十回負けるだろう。二対一なら勝率六割はいける。目標は二対一なら負けないようになって欲しい」


 みんなが静まり返っている。みんな普通の人間だし、敵は化け物だからね。現実は結構厳しい。でも敵の親玉さえ倒せればカタは付く。それまで生き残ってくれればいいんだ。


「知っての通り。闇の王さえ倒せば弱体化して完全勝利だ。心配するな」

「隊長、闇の王を倒してください!」


 くそ真面目な顔をしてレオが言う。


「そのつもりで此処に来たんだ。期待しててくれ」


 オレが自分の胸を叩いてにっこり笑うと、五十人の表情がとても良くなったので、顔合わせとしては悪くなかったと思う。




御話は完結してるんですが、文章になっていない(脚本みたいな書き方になってる)ので、直してUPするのが意外と時間が掛かって難儀します。予定より随分遅れてしまいましたが、細々と最後まで続きます。

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