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♯14

 エルフの集落を襲撃して来た、オークの大軍を打ち破った獣王軍は、逃亡したオークを追跡し、一匹残らず仕留めるべく殲滅戦を行い、彼等の追跡能力をもって充分な戦果を上げる事が出来た。


 オークの大群がやってきた方角に偵察に向かった小隊が、そこまでは明瞭に繋がっていた痕跡が、不自然に途切れてしまったエルフの廃村を調査しているときに、村の石造りの祭壇跡からオークが出てきて小隊と鉢合わせし、出てくるオークを皆殺しにした後、熊人が祭壇の石の床を壊して、その下を掘って調べたが、隠れ家の様なものは発見出来ず、それ以降の追跡を断念し、偵察小隊は本隊の元へと帰還してきた。


 その話を聞いたオレは、自分が骨ボスの部屋から獣人国へ飛んだ時、石の床の上に立っていた情況と同じだとピンと来て、獣王にその事を話したので、獣人軍は追跡中に石畳みや石の床の上で痕跡が不自然に途切れたら、その場を完全に破壊するように指示されている。


 壊すのは獣人は得意で、小隊で誰が一番はやく壊すかを競いながら、既に怪しいと目される場所が三ヶ所瓦礫の山に変わっている



 獣人達の士気は極めて高い。


 彼らにとってオークというものは狩られる立場の獲物であり、匂いや痕跡を見つけ出し、森の中を追いかけて見つけ出すのは、獣人の狩猟本能を満足させるのか、みんな喜々としてそれを行っている。


 だけど、オレは少しだけ現状に不安もあった。アドリアさんの小隊と一緒にオーク狩りをしている時に感じたんだけど、集落での大規模な戦闘から逃げ出した敗残兵じゃなくて、新たに送り込まれてきたようなオークの小さな分隊が、街道沿いの森に潜んで待ち伏せをしているのを発見する事が多くなってきたのだ。


 オークが命を奪う、つまり生き物を殺害する度にオークのキングが強くなっていくという話はイリスから聞いた。大規模な戦闘で敗北したオークは、今度は森でのゲリラ戦にシフトしたのだと思う。


 待ち伏せして、強そうな軍隊を避けて民間人とか、小さな集落を狙ってエルフの命を奪い、キングを強くしようと考えているんじゃないかな。


 向かってくる大軍を倒す事は出来ても、散らばってゲリラ戦を展開されたら、その全てを殲滅するのは多分不可能だ。米軍だってベトナムで苦戦した訳だし、こっちはそもそも大量破壊兵器は存在していない。


 まあ、獣王とかアドリアさんとか、大量破壊兵器と言っても間違いないけど、広い地域をカバーする程の数が全然足りない。倒せるけど、どこかで倒されているという情況は、まずいと思う。


 イリスに相談したら、獣王に相談に行くなら一緒に行こうというので、二人して連れ立って仮設の陣地へ向かうと、エルフの戦士達が獣王達と顔を付き合わせて、作戦会議をしている所だった。


「おう、アユムとイリス。丁度良い所に来た。お前達に客人だ」


 相談に来たんだけど招かれて、切り出した木材で組んだ仮設小屋に、ズラッと勢揃いしたエルフの戦士に挨拶をする。


 全員が森に紛れ込むような緑と茶色が基調の装備で、大型の弓と山刀を装備し、頭の装備から網が降りていて眼の周りがみえにくくなっている。エルフは肌の色や髪の色が明るいので、軍人はこういうスタイルなんだろう。


 集落のエルフに比べて、軍人らしいというかとても鍛えている感じの体格の良い者ばかりだ。


「エルフの王都は現在、王宮の大門を挟んで膠着状態になっている。首都の守備隊に周辺から集まった戦士達を加えた三千五百の兵が二度、王宮奪還に仕掛けたが、地の利が敵にあり、残念ながら成功していない。だが、朗報もあるぞ。ドワーフの鋼鉄師団三千が山岳路を越えてモンターニュの街から北に転進して道中オーク共を蹴散らしながら、進んでいる。敵が転移を使って戦いを操作している仕組みもわかった。敵が魔法を邪魔する魔道具を使用しているようだが、これに対抗する道具も完成し、製造が開始されたそうだ。エルフも我々も、そろそろ仕掛ける時だと考えている」

 

 獣王が一旦言葉をきって、オレの顔をじっと見つめる。


「キングを倒しに行くんですね。フラムさんに期待されてるみたいですから、オレやりますよ」


 フラムさんから預かっている腰の剣を触って答えると、獣王はにっこり笑って頷いた。


「これ以上オークと消耗戦を続けるわけにはいかん。本隊は王宮正面から攻撃して陽動する。アユムはフラム達と共に裏から回りこんで、首魁を握りつぶすのだ。現地へは、エルフの情報部が同行する」


「了解です」


「アユム、全てが終わったら獣人国へ来い。お前は獣人国の端っこしかみておらん。見せたい場所が沢山あるんだ」

 

 オレは自分の身体に熱いものが流れ、力がみなぎって来るのを感じていた。


「必ず倒してきます。朗報を期待しててください」


「託したぞ、アユム」


 獣王が近づいてきて、互いに固い握手を交わす。


 いよいよ決着を付けるために、王都に乗り込む時が来た。恐怖も緊張もない、やれる事を全力でやるしかない。頭は冷静なんだけど、身体の方が早く、早くと急き立てている気がする。


 道案内のエルフ五名と共に、アドリア小隊とオレ達は、首都リュミエールが背後に抱く渓谷の上にある町スペランツァへ向かい出発した。





 エルフの隊長アルノーさんは、顔の見えないマスクマンのようなオレをみても、まったく動揺しないので流石だなと思ってたら、アルノーさんもエルランディア王国へ潜入する為に、フラムさん特製の腕輪を持っていて、オレの事もフラムさんから聞いて知っているだけだった。


 良かったら素顔を見せて貰っても宜しいですか?というので、エルフの五人の前で腕輪の効果を切って、竜人の姿を見せたら結構驚いてくれた。


 彼等の言うには、エルフの図書館に精密なイラストがはいった生物図鑑があって、その中に掲載されている竜人とそっくり一致するらしい。


 もちろん、彼らも本物と会うのは初めてだそう。古書の正確さを実際に確認できたと言って喜んでいた。


 アドリアさんに、エルフの軍人を安心させる為にアユムの力を存分に発揮してもらうと宣言されて、オレはずっと索敵担当である。


 確かに自信のある得意分野なので、先頭を走っていくと、おあつらえ向きに街道の左右の森に潜む、オークの小隊を発見した。


「前方五百、街道の左右森の中にオーク、右十五、左十三、右行きます」


「了解、後方半分私に続け」


 アドリアさんと綺麗に二手に分かれて、街道から森の中へ滑る様に潜りこみ、大きく迂回して反対側から襲いかかるアドリアさんに、タイミングをぴったり合わせてオークの背後から急襲する。


 オーク共は、挟撃されてろくに武器を打ち合う事もなく全滅した。騎馬で追い付いてきたエルフが驚嘆の声をあげる。


「馬よりも早く森の中を駆け、追い付いたときには終わっている。正直凄すぎて底がみえませんね」


 アルノー隊長に褒められて、ちょっとオレも鼻が高い。


 オークの死体から回収した地図と黒い球を渡されて、アルノー隊長をはじめエルフの五人は、黒い球を挟んで魔法への干渉具合を確認している。


「それは結構やばい感じなんですか?」


「ああ、アユムさん。これの情報が、フラム殿から全軍に伝えられるまでに、多くのエルフがやられました。我らは樹上で風魔法を使用しています。知らずにこの範囲に入ると、不意に身体が重くなって落ちるのですよ」


「それは、確かに……」


「私の仲間も随分やられました。オークが近くに居る状態で落ちてダメージをうけ、

さらに直後に魔法がうまく発動しない。訳がわからないまま倒された者も多いでしょう」


「もう対策の魔道具は行き渡ったのですか?」


「いえ、王都奪還の作戦に使用するので、我らにはなかなか。ですが、フラム殿から指示されてまして、いま我らは、風魔法で小石を街道の先へ飛ばすようにしています。我ら視力は自負しておりまして、落ちればその先にこれがある訳です。対策が確立してからは、逆手にとって敵の潜む場所がわかる便利な話になりました」

 

 アルノーさんは、穏やかに喋ってるけど、自分の仲間も随分やられたと言ったとき、一瞬遠くを見るような目になり、それ以上は表情には出すまいと、素早く切り替えたような感じがした。


 オークが生ある者を殺す時、彼等の王に捧げる儀式として出来るだけ苦しめて殺すと聞いている。人型をしているけど、殲滅してもまったく気がとがめないね。


「オークキングとか偉そうに名乗ってるやつを、バキバキにへし折って、四つくらいに小さく畳んでやりますから」


 オレが大きな事を言うと、アルノーさんはふふっと笑って笑顔を見せてくれた。

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