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♯18

 ドワーフの指揮官との作戦会議は意外とスムースに終わり、オレ達は一足先に城砦都市バーリンへ戻ってきた。


 あの巨大ウーズが、真っ直ぐバーリンへ来ないで、どこか違う方向へ転進する可能性を尋ねたところ、人が大勢いる方へ、いる方へと向かって来る筈なので、時間稼ぎをしている部隊に連れられるように、間違いなくやってくるそうだ。


 城の城壁では、据え付けられた大型投石器の試射と、巨大ウーズにぶつける為の油の入った樽の準備が進められている。


 油というのは結構な高級品らしくて、ドワーフ王国の首都をもってしても、一度に大量に準備する事は難しく、かといってあの巨大ウーズを足止め出来る時間は限られており、他領から運搬してくるのはとうてい間に合わない。


 会議が紛糾する中、どちらかというとイリスのおまけで参加していたオレが、ついうっかり「ドワーフの皆さんって、強いお酒を飲まれるんでしたっけ?」と聞いたものだから、会議室には悲鳴があがり、ウィスキーを燃やす気か! と泣き出すドワーフもいる中、ドゥーリン王の裁定により、ウィスキー工場の樽も城壁の上に並ぶ事となった。


 もしかして、オレの評判地に落ちたかもしれない。




 急ピッチで準備が進む中、遂にあいつが城壁の上から見える所までやってきた。


 配下の小さなウーズの大群は、巨大ウーズに踏み潰されないように、今は全てその後ろに大人しく従って付いてきている。


 小型、中型がまったく前に出てこなくなったので、大型の進行を邪魔する工作は、想定より楽に出来たそうだ。


「敵、大型がまもなく投石器の射程内に入ります」


 城壁に並ぶ投石器にはりつくドワーフ達に緊張がはしる。


 こういう機械操作はドワーフの十八番だ。獣人軍は見守るしかない。高い城壁の外に広がる平地には至る所に射撃手の目標となる、距離をしめす目印が描かれている。試射も行った結果だ。これで外れるはずは無い。


「目標、まもなく攻撃予定地点に到達」


 ズルズルと、伸び縮みしながら進んで来た巨大ウーズの動きが、城壁前の火の付いたバリケードの前で止まった。


「撃てえ」


 ドワーフ王ドゥーリンの号令が飛び、城壁の上から一斉に樽が舞い上がり、巨大ウーズの頭上に降り注ぐ。ウーズの上に樽が当たって壊れ、オイルとウィスキーが上にべっとりと拡がっていく。


 次の瞬間、フラム率いる五人の魔導師の手から放たれた火球が次々と着弾し、巨大ウーズの頭上にグアッと火焔があがり一気に燃え広がった。


 ウーズに発声器官は無いが、痙攣しながら身悶えしながら苦しむ様は、まるで悲鳴をあげているように見える。


 四角い身体を、左右に捻るようにして燃える上部を振り、必死に火を消そうともがく巨体には、上部の彼方此方に大穴があき、透き通った身体の中でも、可燃性の液体が燃え続け、穴を深くしていく様が見て取れた。


「やったか?」

「第二射用意急げ」


 城壁上の皆が息を止めて見守る中、巨大ウーズが苦しみながら、必死に退却をはじめる。


「逃がすな」

「トドメをさせ」

「各砲台は準備完了次第、撃て」


 投石機が唸りをあげて、第二射を放ち、着弾に合わせて魔道師が確実にそれを燃え上がらせていく。着弾地点がずれそうになった樽も、フランが風魔法で後押しして、まるで誘導弾のように軌道を修正して命中して行く。


 山のような体積だった巨大ウーズは、その体積を半分に減らし、必死に城壁から離れていく。


 その動きは徐々に遅くなり、勝負あったかと思われた瞬間、巨大ウーズの後ろに付き従っていた型、中型のウーズが、まるで大型に襲い掛かるかのように、互いを乗り越えながら、次々と大型に群がってきた。


「共食いか?」


「死にそうな大型を食ってやがる……」


 将兵達が絶句して見守る中、オレの目には違う光景が写っていた。


「違う、喰ってるんじゃなくて喰われてるんだ。攻撃しろ復活するぞ」


 オレの叫びが聞こえるか、聞こえないかのうちに、大型のまだ燃え続けている身体が徐々に膨らみ始め、萎んでいた体積がじわじわと復活して行く。


「撃て、復活を阻止せよ」


 ドワーフとエルフが共同で行った必死の追撃をかわして、巨大ウーズはその体積を戻しながら、投石機の射程外まで逃げのびてしまい、作戦は完全なる失敗に終わった。



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