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♯13

 隊列が停止して、馬からひらりと降りた獣王と他二名が、門の前に出てきたドワーフの戦士の前に進む。旗持ちの兵が背後に従ってるので、あれがドワーフ王ドゥーリンで間違いない。イメージ通りのヒゲ面だ。


 クレイグとドゥーリンが歩み寄り、ガシッと握手して、楽しそうに言葉を交わしてる。完全に久しぶりに会った親しい友人の光景だ。二人は連れだって数人の共を連れただけで城内へ入っていった。


 猫人の文官達が、ドワーフの文官達と手分けして、整列して待機していたオレ達を誘導してくれて、あらかじめ用意されていた、石造り三階建ての立派なホテルに案内してくれる。建物の外観がお城の石垣みたいなのは、違和感なかったんだけど、大きな玄関を潜る時に、壁の厚さに驚いて、室内の壁も綺麗にカットされた石が剥き出しだったのは、こういう壁を見慣れてないオレには新鮮だった。


 無骨なんだけど、石壁がチョークみたいに真っ白なので、なかなか味がある。


 この立派なホテルで、互いの王と参謀が、現状と今後の予定を摺り合わせている間、遠方から来た獣人兵の皆をもてなすつもりらしい。


 此処のホテルは、一階がレストランになっていて、しかも名の売れた店だとイリスが言っていた。そしてドワーフの世話係りが、今日はホテル丸ごと貸切になってますので、お部屋もレストランもご自由にお使いください。と言ったものだから、イリスははしゃいで「アユム、一番高いのを食べに行こう」といってオレの肩をばしばし叩いていた。


 そして今、オレとイリスは、あてがわれたベッドが四つも入ってる部屋で、二人で並んでベッドに腰掛けている。


 もちろん、ロマンチックなものなどではなく、何故か広いはずの部屋が狭くなったように感じる獣王クレイグと、ドワーフ王ドゥーリンが目の前にいて、ドワーフ王がオレを間近で舐めるように見ているのだ。


 あ、あの、王様二人で気軽に出歩き過ぎだと思うんですけど。


「アユムと言うのか。外見は凶暴な竜人だか、中身は違うのだな。我等に力を貸してくれると聞いているが、その気持ちにかわりはないか?」


 ヒゲ面の奥で、オレの心の中を見抜くような鋭い目が光っている。


「はい、オレはけして勇敢ではないと思うのですが、この身体のせいか今とてもやる気です。むしろやらせてください」


 王の視線を受け止めてはっきり答えると、王は嬉しそうに微笑んでくれた。


「中身はまだ大人になっていない少年だと聞いているが、真っ直ぐな良い目だ、なあクレイグ」


「ドゥーリン、アユムはオレから綺麗に一本とったぞ。獣人国では大人を真剣勝負で下したらもう子供ではない」


「なにっ、お前を下したか! これは失礼した、許せアユム」


 王に頭を下げられて、凄く困ってしまって、いえいえと此方も深々と頭を下げてしまった。ドゥーリンがオレの反応にニヤニヤ笑いながら部屋の外に合図をすると、入り口から少しエスニックな雰囲気の白い衣装をきた少女が入ってきた。


 歳の頃は、小学校の高学年から中学生といった感じだろうか。獣王と比べると、とても小さく見える。


「はじめましてアユムさん。私はドワーフ王国の祭司長、サーラと申します。御見知りおき下さい」


 おっどろいた、王の娘さんかな? とか思ったらこの人がミレイアさんと同じ巫女か。


「あ、はじめまして、アユムといいます」

 


「アユムよ、祭司長のサーラ殿は、我ら獣人軍に同行して、お前と行動を共にしたいと仰ってる。それが良いという予感がするそうだ。大切なお方だ、しっかりお守りしてくれ」


 獣王が真剣な顔で言う、オレの両肩に回した手にも力がぐっとこもる。


「はい、必ずやお守りいたします」


 オレも全力で頷いて答える。


「イリス、お前は巫女頭ミレイアの守護筆頭。今からはその任を改め、サーラ殿の守護を命ずる。頼んだぞ」


「はっ、仰せのままに」


 イリスって、村の若いやつのリーダーみたいな感じじゃなくて、ミレイアさんの警護だったんだ。ミレイアさんって国の重鎮で、その要人警護部隊の隊長。うん、強くて当然だわ。


「みなさんの足手まといにならないように、頑張りますので、どうかよろしくお願いします」


 ちびっこ祭司長のサーラ嬢が、ぺこりと頭を下げる。種族が違うから外見と相違があるかもしれないけど、多分実年齢も見た目通りだと思う。巫女の仕事って何歳くらいから始まってるんだろう? と、他人事ながら気になってしまう。


「アユムさんが、女神様の御意思を受けて、この地に来てくださった事に感謝します。アユムさんは、何か女神様のお言葉を耳にされていますか?」


「いいえ、気が付いたら此方に来てたという感じで、それ以外は特に無いんです。何だかあまり役に立たなくてごめんなさい」


「いえいえ、とんでもありません。本当は私が聞き取らなくてはいけない事なんです。まだこの任に就いて日が浅いものですから、私が未熟なせいで、皆さんに御迷惑をお掛けしてばかりで」


 サーラ嬢は、やっぱりというか、まだ若くて就任して間も無いんだ。以前の巫女さんが、亡くなったりしたら代替わりとかするのかな? もしそうだとしたら空白期間が出来てしまうよね。


「具体的な、その、予言が無い場合は、どのような作戦でいくのですか?」


「こういう時はな、アユム。思いつくことを色々述べてみて、その中に祭司長殿が何か感じるものがないかと探るのだ。記憶でも忘れていた話を何かのきっかけがあれば思い出すだろう? 閃きが得難い時は、周囲が手助けするのも大切なのだ」


 獣王の言う事に皆は頷いて、次々と国内の町や村の名前や、山脈、川の名前を挙げていく。オレは漠然としてるけど、方角はどうかな? と言って見たんだけど、残念ながらあまり感じるものは無かったようだ。最後は獣王の「ドワーフの領土は自然の洞窟が数え切れないほどあるが、掘り尽くして廃棄された鉱山もおおいだろう、オレはそんなのが気になるぞ」と何気なく言った一言に、サーラが突然ピクンと反応して、「鉱山、坑道、確かにひっかかる感じがします」と言ったので、一同は互いの顔を見合わせ強く頷いた。


 作戦会議と言うか、インスピレーションと野生の本能だな。闇の王とかいうのも、こんなのが相手だと、たまったもんじゃないと思うよ。

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