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♯10

 通常ベーゼは、自らのダンジョン内で配下を産み出し、それらが互いに喰い合い、個の構成要素が濃くなる事で強くなって行く。その際、喰い合いで数が減るので、強い個体が育ち、力が高まる為には相当の時間がかかる事になる。さらに、ダンジョンから配下が漏れだすように外へ出てしまう事があるのだが、ダンジョンを出た個体の身体は酷く弱体化し、脅威にはなりえない。


 だが、その主がベーゼの上位個体、闇の王であった場合は話が違ってくる。その配下は受肉と呼ばれるダンジョン外でも能力が落ちずに活動できる身体を有し、外でも活発に活動できるようになるのである。


 今から五百年前、ドワーフの王国に無数にある山脈の一つで、ドワーフの巫女頭に感知される事なく、その勢力を拡大した闇の王の軍勢が溢れだし、数を増やしながら逃げ遅れた周辺の村々を飲み込み、ドワーフの城塞都市バーリンの城外へと押し寄せてきた。

 

 ベーゼは互いを喰い合う事で強くなっていくが、地上に溢れ、地上の生命を喰らうと、その進化のスピードは大きく上昇する。すなわち、地上に溢れたいわゆる『スタンピート』は、早期に終息させないと、世界が滅びるのだ。


 闇の王の軍勢と地上で消耗戦をする事は、形勢を逆転出来ない所まで、追いこんでしまう事にもなり兼ねない。ある程度規模が大きくなってしまった『スタンピート』を終わらせる最後の手段は、上位個体である闇の王を直接叩くこと。


 闇の王が倒れると、配下の受肉化がとけ、地上に出ていたベーゼは一気に弱体化する。


 ドワーフの存亡の危機に際して、巫女のお告げにより事態を察し、軍勢を整えて準備していた獣人族は、獣王を先頭に、ドワーフの城塞都市バーリンを支援すべく、全軍で移動を開始する。


 獣人は個の能力が非常に高く、他の種族を圧倒する。


 四種族の平均的な能力を比較すると、もっとも虚弱となるのは人族になるが、獣人は、最低でも人族の三倍程度の身体能力を有し、その精鋭部隊ともなると、戦闘能力は想像を絶するものになる。


 その彼らが、闘えぬものと子供達を全て後方へ避難させ、自らの首都を空にして、突撃してきたので、闇の王の軍勢は、城砦都市と獣人軍に挟撃され、落城寸前だったバーリンは息を吹き返す事が出来た。


 闘いは三日三晩、途切れることなく続き、ドワーフ、獣人軍の優勢に傾いて終息するかと思われた時、突如戦場に現れた、闇の王本体の攻撃によって、戦局が逆転してしまう。


 この時の闇の王は、ギガンテスと呼ばれる巨人タイプであり、城塞都市の外壁の高さに匹敵する巨大なもので、動きこそ遅いが、魔法によって作り出した巨大な炎の剣を手にして暴れた為、さしもの獣人達も、闇の王に近づく事が出来なかった。


 負傷者多数、疲労困憊、もはやこれまでか……と思われたバーリンに、エルフの転移魔法によって救援に現れる。人族の王ゼウクシスと、エルフの王エミリアン率いる魔道兵。そして、空を駆ける魔道師と呼ばれるマクシミリアン。


 いくら最高戦力とは言え、二種族を代表する王族自らの参戦に、消耗しきった戦線は息をふき返す。


 ドワーフと獣人の部隊が決死の陽動を仕掛け、ひと突きでベーゼを消滅させると言われるエルフの秘宝、二本の光剣を預かったゼクシウスとマクシミリアンの二人が、ドワーフの投石器を使って敵の頭上を跳び越え、闇の王に二本の光剣を突き刺し、闇の王は灰となって消滅した。


 闇の王の消滅によって、共闘していたベーゼ達は、共食いをはじめたうえに、地上での受肉がとけ大きく弱体化。四界の生存をかけて闘ったスタンピート、後の世に『カ・ア・アイ』と呼ばれる大戦は、こうして終息した。


 

 土壇場で間に合った救援には、人族の王とエルフの魔道師が、大きく貢献している。エルフの魔導師マクシミリアンと、人族の王ゼウクシスは以前から親交があり、マクシミリアンが動かぬエルフに出陣を促すために、人族の王と共にエルフの王に直談判したのである。


 ドワーフと獣人の連合軍が、敗色濃厚と判断したエルフの王エミリアンは、戦場としては不利な城砦都市前の平原で戦うことを良しとせず、地理的に有利なエルフの樹海へ引き込んで戦う事を想定していた。


 軍を出す事をしぶるエミリアンに、マクシミリアンとゼウクシスは、「エルフに犠牲を強いるつもりはない。我らが勝利した時に、祝いの席にエルフの葡萄酒が欲しい。もし、我等が敗れた時には、花を手向けて貰えればありがたい」と訴え、此処でいかに引きとめようとも、二人の死地へ向かう覚悟が揺るがぬ事を悟ったエミリアンは、王冠を息子に託し、親衛隊と共に自ら参戦を決める事になる。


 息子に「父上自らが出る必要はございません」と引き止められるが、「まだマクシミリアンの小僧より、私の魔法の方が強いという事を証明してくる」と言いはなち、ドワーフへの援軍を進言していた、エルフの祭司長が微笑んだという。


 戦勝の宴には、膨大なコストがかかる転移石によって、エルフの里から葡萄酒と多くの料理が運び込まれた。


 闘いの後、ゼウクシスがエルフの秘宝、光剣を返却しようとしたところ、「剣にくせがついてしまったから、もはや王が使うしかなかろう」とエミリアンに断られ、それ以後、光剣はエルランディア王国の国宝となったそうだ。


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